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【感想】Netflixドラマ『ペーパー・ハウス』パート5 vol.1

『ペーパー・ハウス』は2017年からNetflixで配信されているスペインのドラマ。

正確にはパート1とパート2はNetflix製作ではなく、スペインのテレビ局のアンテナ3で放送されたものをNetflixが買い取り再編集して配信。
パート3以降はNetflixが製作ということらしい。
まぁいずれにせよ日本で見る分にはNetflix独占配信である。

Netflixで全世界に配信されると瞬く間に高評価を獲得し、2018年の国際エミー賞で最優秀ドラマ賞を見事獲得。
2020年には『ペーパー・ハウス:人気の秘密に迫る』という舞台裏に迫ったドキュメンタリー番組まで作られている。

2018年には非英語コンテンツで最も視聴された作品だったという名実ともにNetflixのドル箱コンテンツの1つ。

ストーリーとしてはパート1とパート2が一括り。
パート3以降は続編という位置付けで新たなストーリーが描かれている。
(パート3から見始めても大丈夫という意味ではありません。念のため)

作品ジャンルとしては王道も王道のケイパー、つまりチーム強盗もの。
事前に綿密な犯罪計画を立て、いざ実行に移すも予定外の出来事が起こり破綻した計画を修正しながら「どうなっちゃうの!?成功するの?失敗するの?」とハラハラドキドキするタイプの作品。
古今東西このジャンルは実に多数の作品がある。

近年はトム・クルーズのアクション映画化が顕著だけど『スパイ大作戦』はまさにこのジャンルの王道に近い。

あとは最近だと(と書きながら3年前だと気付いて時の流れの速さに愕然)日本でもスマッシュヒットしたタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』はカンニングを題材にした傑作ケイパー映画だった。

『ペーパー・ハウス』は何か斬新なことをやっているというよりはこのケイパーというジャンルを非常に丁寧にやっている。
なので「この手の作品は昔からある」という指摘は『カメラを止めるな!』に対して「こういう構造や伏線回収で魅せる作品って別に今までもあったよ?」と言うのと同じくらい的外れである。

それを高レベルできちんとやっているから傑作なのだ。

教授というキャラクターが立てた計画に沿ってある場所(ここもネタバレになるので伏せておきます)に“強盗”を仕掛けるのだが、仲間割れや警察サイドの予想外の動きなどによって計画の破綻と修正を繰り返すアレックス・ピナの脚本が本当に巧い。
教授も二手三手先を読み、さらに失敗に備えたバックアップ用プランも準備しているのだが、ストーリーが進むに連れてその教授の想定をも上回ることがどんどん起きていく。
ただ、パート5まで来るとここのインフレが過ぎて「もはや事前の計画もバックアップ用プランもへったくれも無いアドリブ特攻」みたいになってしまっている感は否めない(後述)

ちなみに本作のクリエイターであるアレックス・ピナはNetflixで他にも作品を発表している。

『ホワイトライン』は打ち切りの憂き目に遭うも『スカイ・ロッホ』は好評でシーズン継続が決まったそう。
てか今年の3月と7月に配信されていたのか。まだ見れてないなー

Netflix製作になったパート3以降は予算も増えたのかヘリコプターで空撮をぶちかますなど撮影が大幅にパワーアップしているのも見所の1つ。
パート3第1話で色んな角度からの空撮ショットを繋いだ編集を見たとき「予算増えたんだなぁ」と思ったのを覚えているw

そんな大ヒット作が遂にパート5を以って完結。
その前編にあたるvol.1が2021/9/3(金)に配信スタート。
ちなみに正真正銘完結編のvol.2は12/3(金)に配信予定。

つまり、本シリーズは完結目前ではあるものの3ヶ月の猶予が設けられている状態です。
まだ間に合うので未見の人は今すぐこの記事を閉じてパート1から見始めましょう。
ちなみに私も長らくマイリストに積んでいたのを今年5月から見始めたので3ヶ月でもきっと行けるはずです。

以下、ネタバレを含みます。

ラストでシエラが教授のアジトに来て銃を突き付けるというクリフハンガーで終わったパート4。
最終章は教授を人質に取られた強盗団vs.シエラかと思っていたら、アルトゥーロの反乱やパート4のラスボスだったガンディアの上を行くキャラクターとして海外で極秘任務を歴任してきた特殊軍チームなど変数を増やしていくまさかの展開。
(ただ、この特殊チームが一見キャラ立ってそうなんだけどパート4のガンディアの狂気に比べると何か物足りない気もしてしまう)
同時に登場人物の死という形で風呂敷も畳まれていく。
パート4でガンディアがナイロビをあっさり殺したことでパート5は「もう誰が死んでも・殺されてもおかしくない」という緊張感が常に張り詰めている。
アルトゥーロやまさかトーキョーまで死ぬとは…

ツイートにも書いたが、パート4のガンディア戦で戦闘インフレが進みまくった結果シリーズの醍醐味であった綿密な作戦はほとんど無くなり常に銃撃戦が展開されているゲリラ戦争モノに。
「犠牲者を出さない」という強盗芸術精神はどこへやらという感じにはなってしまっているw
個人的にはパート4まで見てきて「いよいよ最終決戦だ!」というテンションで見ているので受け入れられるが、人によっては「何か別の作品みたいになっちゃったなー」と感じる人もいるかもしれない。
ここは賛否が分かれそう。

また、パート4でのナイロビの死を受けてパート5では親子のモチーフが複数登場している(特に第3・4話)
妊婦という設定がそこまで活かされていなかったシエラは出産し、既にこの世にいないベルリンの息子とのエピソードも描かれる。
そこはかとなく漂う生と死の香り。
これが第5話のトーキョーの死に繋がってくる。

総じてvol.1はまだvol.2の前振りという印象を受けた。
軍隊という新たな脅威の種まきは完了。
突入はいつになるのか?
最終的に生き残るのは誰なのか?
シエラは教授サイドに寝返ったのか?
強盗計画はどういった結末を迎えるのか?
タマヨは不正を隠蔽して逃げ切れるのか?w

遂に全てが完結するパート5 vol.2は12/3(金)に配信予定。

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