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【感想】Netflixアニメ『ラブ、デス&ロボット』シーズン3

『ラブ、デス&ロボット』は2019年からNetflixで配信されているアニメシリーズ。

自分の中でもvol.2と呼んだりシーズン3と呼んだり表記が揺れてるなw

各話15分前後(10分未満の作品もある)のオムニバス短編集。
製作総指揮を『デッドプール』のティム・ミラーと『ソーシャル・ネットワーク』はじめ傑作映画を撮り続ける巨匠デヴィッド・フィンチャーが務めていることでも話題。

本シリーズは成人向け作品となっており、ダークな世界観とシニカルなストーリーが醍醐味。
(グロ描写も結構あるのでそういうのが苦手な方は注意)
エピソード毎に絵のテイストもストーリーの語り口も全然違っているのが面白い。
エミー賞やアニー賞といった賞レースでもノミネート・受賞多数。
(特にエミー賞は通算12ノミネートの内11受賞という強さ)

ちなみに1981年公開の『ヘビー・メタル』のリブートという位置付けだそうだが、それを知らなくても楽しめると思う。

現に僕は『ヘビー・メタル』は観ていない。

そんなシリーズのシーズン3が先日配信された。
前述の通りオムニバス短編集なので、どのエピソードから観てもいいし、何ならシーズン3からでも問題ない。
※1つだけシーズン1の作品の続編があるので、それは先に前作を見ておくと良いかも。

ロボット・トリオ:出口戦略

(C) Netflix, Inc.

シーズン1の『ロボット・トリオ』の続編。
引き続き人類が絶滅した後の地球を旅している3人組ならぬ3体組のロボット。
語り口はシニカルなコメディ。
エゴに溺れる人類の愚かさを皮肉ってるわけだが、現実世界のウクライナ情勢を見ると笑うに笑えない。
と同時にシーズン3全体のテーマを提示していたようにも全話を見終わった今では思える。

そしてラストのオチwww
あんな風に実名を使ったらいずれツイッターから反撃されそうなw

最悪な航海

(C) Netflix, Inc.

過去2シーズンは製作総指揮に専念していたデヴィッド・フィンチャーが遂にアニメ監督デビュー。
しかも脚本は『セブン』のアンドリュー・ケヴィン・ウォーカー!

『エイリアン』シリーズを思わせる気持ち悪さ全開の怪物に、そこから何とか生き残ろうとする船乗りたちの醜い争い。
たった20分間(それでもシリーズ最長)で「一番恐ろしいのは人間だ」を描き切るスマートな手腕に脱帽。

ツイートにも書いた通り絵は非常に実写的。
(撮影アングルが実写映画っぽいのかな?)
正直このシリーズの中に入ると特別優れているとは感じられなかった。
それでも人間同士が戦うシーンや怪物から逃げるシーンのサスペンス溢れる編集はお見事。

ラストも余韻の残る胸糞w
あのまま生還して何食わぬ顔で(むしろ唯一の生存者として扱われながら)暮らしたってことよなぁ…

死者の声

(C) Netflix, Inc.

日本のポリゴン・ピクチュアズがアニメーション制作を手がけたエピソード。

宇宙が舞台のスペースオペラ的SFなのかと思ったら、サイケデリックな映像でどんどんトリップしていく展開。
シーズン3で最も予想を裏切られた。
目まぐるしく変化して見てる内にこっちもクラクラしてくる映像が最高。

小さな黙示録

(C) Netflix, Inc.

原題は"Night of the Mini Dead"
「ミニ」がミソ。
もうね、最高!面白すぎwww
ゾンビ作品にまだ新たな見せ方が残っていたとは。
あれどうやって撮った(作った)んだろう?
どうも制作スタジオのBUCKという企業はアニメーション制作スタジオですらなくデザイン会社というか広告を作ってるらしいが…謎。

たった5分の超短編だけど終始ニッコニコ。
とはいえ結末は人類の愚かさ。

絶対絶命舞台

(C) Netflix, Inc.

『カンフー・パンダ2』『カンフー・パンダ3』の監督で知られ、本シリーズにはシーズン2から監修(って『シン・ウルトラマン』の庵野秀明みたいだが)として関わっているジェニファー・ユー・ネルソンが監督を務めたエピソード。

正直個人的には「グロやシニカルに傾き気味のシーズン全体のバランスを取ったのかな?」という感じで本シリーズの並びに加わるとあまり印象に残らず。
コメディタッチで楽しいんですけどね。
さっき出会ったばかりの自走式小型戦車に感情移入して泣く隊員とかw

確かに今シーズンはダークな話が多いから全9話の折り返し地点にこれを挟む構成は間違ってないと思う。
さすがシリーズ構成もとい総監修。
まぁCIAが作った殺戮マシーンが暴走して皆殺しにされる話だから人類の愚かさを描いてることには変わりないんだけどw

(C) Netflix, Inc.

地味に結構グロくて苦手だったなこれ…
あからさまなゴア描写は少ないんだけど。
監督・脚本はティム・ミラー。

こちらも絵は実写的なリアル路線。
CGはスゴい。
ある地球外生命体を下等生物と侮って利用しようとした愚かな人類のお話。

メイソンとネズミ

(C) Netflix, Inc.

いつも駆除してきたネズミがある日突然武装して反撃してきた!
こっちも最先端の駆除マシーンで反撃だ!

いやはや良いバカさ加減ですねぇw
ネズミとヒトの仁義なき戦い。
ガトリング砲を装備した駆除マシーンが1匹のネズミに膨大な銃弾を撃ち込むのヤバいwww
(てかなぜいちいち頭部を切断して集めてるんだw武士じゃないんだからw)
あまりの残虐さに駆除を依頼したメイソンが徐々に引いていき…というお話。

ただ、ストーリーは完全に戦争のメタファー。
腹の底から笑いながら観たかった。

地下に眠りしもの

(C) Netflix, Inc.

これまた『エイリアン』シリーズのようなテイスト。
アニメーション制作はソニー・ピクチャーズ・イメージワークス。

ごめんなさい。あまり印象に残らず…
普通にクオリティの高いCG絵のSF作品と感じてしまった。
FPSとかゲームの文脈を押さえてるとまた違った見え方をしてくるのかな?

彼女の声

(C) Netflix, Inc.

シーズン1で観客の度肝を抜いた『目撃者』
あのスタッフが再集結して作ったエピソード。

いやはや今回も異常な映像美…
徹底したリアル路線でありながら不気味の谷を完全に越えている。
さらに今回は音(聴覚)を使った演出も。
タイトルにもあるように声がストーリー上の鍵となるのだが、同時に「この映像美を見よ」という宣言にも感じられるほど。

水のCG表現すごかった。

総評(?)

独断と偏見で個人的ベスト3を選ぶなら

  • 小さな黙示録

  • メイソンとネズミ

  • 彼女の声

やはり本シリーズは他のアニメ作品では見られないぶっ飛んだ映像が好み。
※僕は『最悪の航海』『巣』『地下に眠りしもの』のようなリアル路線のCG絵が少々苦手というのは補足しておきます。
(『彼女の声』ぐらい突き抜けるとまた感じ方が変わってくるので、あくまで主観であり個人の感覚)

シーズン3を振り返ると「人類の愚かさ」がテーマだったような?
自身のエゴのために争ったり他の生物を支配・利用しようとしたりして結果的に酷い目に遭う話が多かった気がします。
どうしても現実世界のウクライナ情勢を想起してしまうわけですが、これだけのCGアニメ作品の制作期間を考えると当然その前から企画は進んでいたはず。
偶然にも(そして悲しいかな皮肉にも)現実世界が『ラブ、デス&ロボット』に追い付いてしまったということなのかなと。

もしシーズン4があるとしたら、その時はシニカルをシニカルとして楽しめる日が戻ってきていてほしい。

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