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【感想】フジ月9ドラマ『海のはじまり』第1話

脚本家・生方美久の新作
前作『いちばんすきな花』には不参加だった『silent』のチーフ演出・風間太樹監督を呼び戻している辺りに村瀬プロデューサーおよびフジテレビの本気度が伺えるような?

葬式に行った先で親を亡くした子供と出会って引き取るというプロット
(ただし、初回時点では引き取るかはまだ決めておらず、恐らく引き取るのかどうか?も物語の中心的テーマになると思われる)

今パッと思い付くだけでも

  • うさぎドロップ

  • 海街diary

  • 違国日記

といった作品の導入とやや似ているような?

いずれも漫画原作ですね。
特に『うさぎドロップ』は「祖父の隠し子=そもそも存在すら知らなかった子供を引き取ることになる」という点で結構似ていると感じた。
夏(目黒蓮)に関しては“そして父になる”までの成長譚が描かれるのだと思う。

その上で、本作で重きが置かれるのは主人公の恋人である弥生(有村架純)ではないだろうか。
家族になる過程を描くだけならもう飽和気味の作品の焼き直しにしかならなそうな気がするし。

いわゆる「坂元裕二っぽい」と言われるような、SNSにみんなが投稿したくなる台詞回しは封印とまでは行かないまでも抑えめ?
前作『いちばんすきな花』では割とそっちに振り切っていたように記憶しているのでやや驚き。

もちろん冒頭から水平線という境界(2つに分ける)のモチーフを出しておいての

  • 分かれ道

  • 化粧品の香料の選定

  • 山か海か?

  • どのサークルに入部するか?

といった選択のモチーフを並べていく構成は坂元裕二っぽさ、特に『カルテット』の第2話を彷彿とさせたり。

もちろん夏の「うん」と「ううん」の間の返事という選べない性格も布石に。

生方美久もインタビュー取材でこう答えている。

1話に限らず、「選ぶ」「選択」「選択肢」といったワードには注目していただきたいです。

https://gingerweb.jp/timeless/person/article/20240627-interview-16

スピッツとイヤホンは『silent』視聴者への目配せ的ファンサービスなのかな?
個人的には作り手の「スピッツが好き」という気持ちを作品に乗せられても困るし、そうでないにしても過剰に作品外の文脈を持ち込まれるのも何だかなというテンションではある。
セルフパロディってほど笑える感じでもなかったし。

そんなわけで(?)初回時点では本作が一体何を描こうとしているかの全貌はまだまだ見えてこないといったところ。
この段階でテーマに言及するのも時期尚早かなということで、ちょっと演出面(主に撮影)に脱線していこうと思う。

まず基本的に自分はこのチームの(と言いつつ『いちばんすきな花』に風間太樹監督は参加していないわけで「チームの作風」と呼んでいいものか若干怪しいのだけど)背景を極端にぼかして俳優にフォーカスした映像はあまり好きではない。
画面に奥行きを感じづらいから。
なので映像美には特に惹かれなかったのだけど、第1話は構図がなかなか面白かった。

冒頭、海(泉谷星奈)と水季(古川琴音)は砂浜を画面の右から左に向かって歩いていく。
水季が画面の端に到達しそうになったところで一瞬ブラックアウト。
すると反射鉄©️アメトーークな映像に切り替わりカメラの視点移動方向は左から右へ。
こういう風に画面の動きでハッとさせてくれる編集は実に良い。
この掴みで自分はグッと惹き込まれました。

で、そこから右向き・左向きを意識して鑑賞していたら第1話は横顔(横向き)のアングルがとても多い。
ちょうど5月に公開された映画『青春18×2 君へと続く道』で撮影(カメラマン)を務めた今村圭佑がインタビューでこう語っていた。

2人が向き合っていることを表現したかったので、全編において、36歳のジミーは左を向き、18歳のジミーは右を向いています。

冒頭、日本にいる36歳のジミーが左を向いて立っているところで場面が台湾にいる18歳のジミーに切り替わります。台湾でのジミーは寝ていたので、カメラを倒して右を向いて立っているように見せ、2人が向き合っているのを分かりやすく表現したのです。これは脚本の段階から考えていました。

https://screenonline.jp/_ct/17697173/p2

『海のはじまり』はここまでは徹底してはいないようだが、過去・現在という時制や「夏が何と対峙しているのか?」を映像的・視覚的に表現しようと試みていると感じた。
(もちろんこれは別に『海のはじまり』に限った話ではなく、いわゆる映画文法というやつである)

もう一つ個人的に「お!」と思ったのは夏が葬儀から帰宅して弥生に涙ながらに話すシーンでのピントのずらし方。
目黒蓮の演技も素晴らしかったが、ここでカメラは

  1. ベッドに座る夏の後ろ姿にピントが合って画面奥に立つ弥生はピンぼけ

  2. 2人が横に並んで座ると弥生の顔にピントが合って手前の夏はピンぼけ

  3. 逆からの視点にカットバックすると今度は夏の顔にピントが合って手前の弥生は再びピンぼけ

となっていて2人同時にピントは合わない。
この場面では夏は弥生に海の存在を伏せており「2人は誠実に対話しているようでいて、実は気持ちの奥底では文字通りピントがずれている」というのを映像的に表現しているようで素晴らしかった。

ひとまず第2話も視聴継続予定

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