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【感想】カンテレ月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』最終話

いやはや最後の最後まで素晴らしかった。

第9話も第10話もクリフハンガーで終わり「ミヤビはどうなっちまうんだ!?」と思わせながら、それはあっさり片付ける構成。
一命は取り留めた所からスタート。
生死や記憶喪失をめぐるハラハラドキドキのサスペンスをやりたいわけではないという宣言にも受け取れる。
描きたいのはあくまでドラマであってシチュエーションではないのだと。
(ここでの「ドラマ」はテレビドラマというフォーマットの意味ではなく作劇の方の意味の「ドラマ」です)

そこから食という生のモチーフ、もしくは日常のモチーフをじっくり描くのがまた良い。
そういえば本作のツッコミどころ(?)として「忙しい医療従事者にしては毎晩あんなにのんびり居酒屋でみんなで食事できるもんなのか?」というのがあったけど、綾野先生(岡山天音)の

ここの皆さんは本当美味いもの食べすぎじゃない?

で溜飲を下げるw
(ちなみに個人的にはそもそもフィクションだし、単に描きたいものがそこじゃないってだけだと思う)

本作は食事シーンがたくさんあるのが素晴らしいんだよな。
食べることは生きることだ。
そうして今日が明日に繋がっていく。
「お腹が空く」という台詞があんなに尊く聴こえるなんて。
まぁそんな小難しい話は抜きにしても、あの肉をタレに絡めながら焼く映像の魅力よw

そしてカーテンが揺れるカットを挟むと静寂と光が織りなす本作でも屈指の美しいシークエンスへ。
ちなみに本作の映像はカメラのレンズもフレームレートも映画仕様。

https://www.ktv.jp/unmet/productionteamsdiary/03/ より引用

この辺りは若葉竜也の意向もあるようで。

カンテレ月10枠の作品は撮影にしっかり力を入れてくれるから嬉しい。

フィックスで均整のとれたショットで魅せた2人のシーンから一転、CMを挟んで翌朝からは手持ちカメラ。
カットごとにブレ具合に差はあれど常にカメラは揺れている。

この“転調”は思わず唸った。
手術シーンは視聴者目線だと「そりゃ助かるだろう」と思ってる(願ってる)わけだが、動き回るカメラワークのおかげでしっかり見せ場になっている。
下手すればただストーリーを先に進めるだけの退屈な“工程”になりかねないのだけど、そんな心配は本作には杞憂。
日記を読むシーンで三瓶(若葉竜也)とミヤビ(杉咲花)の間に見る・見られるの反転が起きているのも実に映画的。

手術シーンは文字通り群像劇のクライマックスとなるチーム戦なのだけど、そこから三瓶とミヤビの2人の物語に収斂していく終盤の作劇はデイミアン・チャゼルを彷彿。
2人の周囲の登場人物はまるで背景のようにどんどん後退していく。

特に『ファースト・マン』とは結構近い印象を受けた。
手術中に“宇宙”に行く演出もあるし、主観ショットの挟み方とかも。
ずっと群像劇で描いてきたところを最後の最後で2人だけの物語になる少し不思議なバランスも面白い。

そして第1話では三瓶先生のキャラクターを一発で視聴者に理解させるコミカルな描写だったグミのくだりを180°反転させる会話を挟んでラストカットへ。
エピローグも長々やらずに幕引き。
ダレることない見事な〆

私の今期No.1ドラマは本作です。

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