インバウンドの罠
観光の仕事をしていると、これは誰に向けた情報発信なのか、企画なのか、と違和感を感じたり、インバウンドという言葉や施策で、外国人をひとまとめにしていていいのか、と考えることがあります。
そもそもインバウンド(観光)という定義には、対義としてアウトバウンド(観光)が存在するのですが、日本国内における旅行市場を考える際は、日本人による国内観光と外国人によるインバウンドを対にして話しがちです。
インバウンド市場が黎明期だった頃は、接遇や接客などに文化や言語の壁があったため受入環境の整備が必要であり、受入側も心理的なハードルも高く対日本人観光客と比較してそのような捉え方をしていたと思います。
一方、発信する観光地や観光コンテンツについても外国人に受けのいいオーソドックスな日本を見せ、満足度を上げていくのが大きな流れとなっていました。だからゴールデンルートなんていう言葉も存在していました。
そこから10年弱が経ち、今や都市部では外国人を見つけることが珍しくなくなりました。そしてこんなところにまでいるの?なんてことも多々あります。
その背景には、かつて国が重点市場に据えていたいくつかの国・地域から来る観光客においては、初めて訪日する人よりもリピーターが上回るようになってきたからです。それにより、求めるコンテンツも、もっとディープで、日本人しか行かないようなところにも足を運ぶようになりました。
そしてスマートフォンの普及や各テクノロジーの進化、情報の流通などから、受入側もドンドン流れが加速していき外国人観光客恐怖症やお断りなんていう店も“一部を除いて”無くなってきたと思います。
このような現状において、ターゲティングについてより細分化することははあるにしても、日本人による国内観光と外国人によるインバウンドに単純に大別する意味は無くなったきたのではないでしょうか。
もっと言うなれば、施策によっては初めて訪日の外国人と、日本人+リピーターの外国人という分け方もあるような気がしています。
日本人は島国のため国境、言語などで区別したり、予算配分や前年踏襲などの仕来りから思考が停止しがちですが、少し引いてどのようなターゲティング・セグメントが必要か考える時が来たのではないかと思っています。
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