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「天城山からの手紙 36話」

写真家 土屋 正英

夏も間近なこの時季から、大量の虫が天城を占拠する。道を歩く先すべてが虫で覆われていると考えれば想像もしやすいかもしれない。そんな理由で、夏の季節は虫に天城を譲り、今回からしばらく、順不同にエピソードを優先して掲載していきたい。初めて天城をテーマにしようとした時、正直なにを思い撮影をしなければいけないのか私は全く分からなかった。目の前に現れるブナにはいつも圧倒され、そんな中、俗にいう綺麗な写真やすごい写真を自分の欲の為に・・いつも嫌気と疑問が付きまとった。はたしてどうしたらいんだろうか?と考える日々の中で私は一つの答えを出した。その答えは、”まだ早い”だった。真っすぐに生きる森の力と向き合うには自分はまだ幼稚だったのだと。それからは、いつかブナが撮っていいよと言うまでは撮らないと決め、その日から私は天城の森へ半年で60回というペースで山に入った。常に森と距離を置き、歩いては考えを繰り返し、一歩引いた写真を撮っていく。しばらくしたころだろうか?明らかに違うと感じる時が来たのだ。なかなか信じがたい話だろうが、私には確かに感じた空気があった。同じように歩いていてもどこからかひそひそと話し声が聞こえ、森に向かい入れて貰ったように・・見渡せばそこには何時ものブナ達がいたのだ。ほら、撮りなよと言わんばかりに。そして、今回掲載のブナの前に立った時、私に迷いは無く堂々と向き合いシャッターを押せたのだった。

掲載写真 題名:「溢れ出す力」
撮影地:手引頭
カメラ:Canon EOS 5D Mark III EF24-105mm f/4 IS USM
撮影データ:焦点距離45mm F13 SS 2sec ISO400 WB太陽光 モードAV
日付:2014年5月12日AM5:06

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