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「天城山からの手紙 46話」

天城山のイメージは、何時も霧に包まれ暗い森だと思われることも多い。しかし、なかなかその様な条件に遭遇するのは難しい。この日は、雨に降られるのを覚悟で向かったのだが、いざ現場に到着すると雨も降ることなく、暗闇の向こう側には、期待通りの綺麗な霧がかかっていた。対外は夜明けと共に、すーっと霧は消え去り、日常へと戻ってしまう。きっと、今日もそんなだろうと、景色が残っているうちに撮影を急いだ。日が昇ると、霧の空間は、次第に黄色や青と照明が変わった様に変化していく。目の前が温かい黄色に包まれたと思ったら、5秒もしないうちに真っ白に、そして青の世界へと走馬燈の様に繰り返し変わり、森の劇場は開演した。気づけば日の出から2時間も経ったのだが、未だに幻想の空間は終わっていない。こんな条件に出会えることは、一年に数回あるかどうかで、もう帰りたくても帰れない。向こう側で光が変われば、急な斜面を走り抜け、またあっち側でとまた走り、どんどん体力も奪われる。息も絶え絶えになるのだけど、何とも心地よくて堪らない。そろそろ休もうかと腰を下し熱い息を吐けば、吐き出された白い息は霧と混ざり消えて行く。そんな中、顔を上げて奥を見つめると、そこには1人の姫が居た。その姫は、踊り、微笑みかけ、私を癒した。しばらくして、息も整い立ち上がると、まだ可憐に舞う姿は優しく、癒しの空間は広がっている。最後に私は、舞いのお礼に一枚シャッターを押して、別れたのだった。

掲載写真 題名:「癒しの舞」
撮影地:八丁池付近
カメラ:Canon EOS 5D Mark IV EF24-105mm f/4L IS II USM
撮影データ:焦点距離50mm F10 SS 1/80sec ISO400 WB太陽光 モードAV
日付:2017年9月29日 AM8:11


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