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伸びる選手が持っている「コーチを有効に活用する能力」

テニスの錦織選手を育てたことで有名な、盛田ファンドの創設者である盛田正明さんと元女子テニス世界ランキング4位だった伊達公子さんとの興味深い対談を、少し前ですが新聞の記事で読みました。
タイトルは『「正解」よりも考える力養う』(※)です。
※日本経済新聞 盛田正明氏×伊達公子さん テニスを語る㊦

■選手の成長につながるカギとは?

「コートではいろんなことを考えては決断の連続。技術があってボールを強く、うまく打てるだけで活躍できる場所ではない」と伊達さんは言います。特に世界レベルで戦うとなると、より「考える力」が求められるのだと思います。

さらに伊達さんは、「日本の教育は正解を求めがち。正解がどうこうでなく、自分で考え、行動させる大切さを周囲の大人が理解しないと」といったこともここで言っており、そのことと関連させて選手とコーチとの関係についても触れています。

どうも日本では、テニスのコーチというと、どうしてもフォームをしっかりと教え込むといった、コーチの持つ「正解」を選手がどのようにやり遂げられるかが成果とされ、評価される風潮があるようです。
いいコーチにつくことが選手の成長のカギを握っている、というのは、それはそれで間違いのない事実だとも思われます。

とはいえ、どんなスポーツでもそうでしょうが、やはり自分で考え、行動できるようになることが基本であることもまた間違いないことだと思うのです。
これが選手の成長のための二つ目のカギになります。

■自分の頭で考えることがベースになる

では、この一見相反するように見える二つの成長のカギは、どのようにすることで共存できるのでしょうか。
それに関しては、最近の例でいくつかの参考になるケースを思い出します。

一つは、少し前に陸上の男子100メートルで日本新を出した山縣選手のケースです。
彼はコーチをつけず、一人で走りに向き合うことで知られていたのですが、ケガなどで少しブランクがあった後、今季から専属コーチを持つことになったのです。その結果、今まで切れるようで切れなかった10秒の壁を破り、日本新を出すことにつながっていったのです。

同じようなことがゴルフの松山選手にもありました。
彼も専属コーチがいないことで知られていましたが、ここ数年少し伸びが止まったように見えていた後、昨年からか、専属コーチをつけました。その結果がマスターズ優勝です。

この二人には共通しているところがあると思います。
専属コーチをつけたとはいっても、コーチの言うとおりにプレーをしているわけではない、というところです。コーチをつけるまでは、長年自分の頭で考え、プレーを改善し続けてきた、というベースが二人にはあるはずだからです。

■選手にとって有効なコーチの存在を考える

しかし、自分の頭で考えているだけでは、やはり限界がある。それもまた目をそらしてはいけない大切な事実です。客観的に自分を見つめ直す必要性がちょうど二人にはあったのだと思います。

そういう意味では、専属コーチとは言っても、答えを押し付けるようなタイプのコーチではなく、客観的なデータをもとにじっくり話し合いをしてくれるようなコーチであったのではないか、と思うのです。

それはそうですよね。山縣選手にしても松山選手にしても、彼ら以上の実績を持ち、かつ正解をも持ったコーチなどいるはずもないわけです。コーチに必要なのは「正しい答え」を持っていることではなく、選手の考えを引き出し、選手自身が無意識のうちに陥ってしまっている制約条件を取り払う手伝いなのだと思うのです。

この考え方は、なにも山縣選手だとか松山選手のようなビッグスターだけにあてはまる話ではなく、どんな選手とコーチの関係にも通じる話だと思います。

そして、スポーツの世界だけにとどまらず、世の中の会社が、会社におけるコーチとも言えるコンサルタントを有効活用できるかどうか、の話にも置き換えることができるように思います。コンサルタントに頼りっきりになるのではなく、コンサルタントを有効活用し得る能力を身に着ける。このあたりが会社を飛躍させるカギになるように思うのです。


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