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現地現物を大切にする「挑戦文化」の価値観

戦後日本の急速な復興に、大きなエネルギーが必要であったことは想像に難くありません。そのエネルギーの源となってきたのが、戦後の日本企業の代表格であるトヨタにおける現地現物のものの見方であり姿勢でした。

抽象的にタテマエを論ずるだけではものごとは動きません。実際にモノを見て、触って、動かしていく、という事実・実態を何よりも優先する仕事の仕方と価値観がそこにはあったのです。ハングリー精神にも裏付けされた強大なエネルギーを持っている日本人らしい逞しさを持った人々の、このような動きや思考方法を総称して「挑戦文化」と名付けています。

この挑戦文化を支えている価値観のうちで一番に大切にしているのが、先に述べた「事実・実態を何よりも優先する」ということです。同時にそれと同じくらい大切にしているのが、「できるかできないか」ということを、めざすものを持つときの基準に決してしないことです。

トヨタでは、改善テーマを決めるとき、「できるかできないか」には関係なく決めるのです。そのことが必要だと考えるなら、どんなに難しそうであっても、普通に考えるとできるとは思えないことでも、そんなことには捉われずにめざそうとするのです。

さらに、事実・実態を本当に大切にしようと思えば、ものごとの本質に迫る必要があります。そのためには、「何のために」といった意味や価値、目的を追求する姿勢を大切にする、という価値観を持っていることが必要なのです。

挑戦文化は、めざすものに向かうことが前提条件です。ですから、ものごとを評価するときは、それがめざすことの実現に役立っているか否かで評価する、という価値観を持っています。
たとえば、自分の上司との関係でいうと、自分が何かをめざしているとき、上司がもっとこうであれば、もしくはこう動いてくれればよりよく協力し合えるだろう、ということは大切な評価軸です。

こうした、めざすものに近づくために仲間の一人としてもっとこう動いてほしい、という評価のあり方は「当事者的な評価」です。
自分の理想とする上司像から現実の上司の言動を引き算して、ああだこうだと批判するのとはわけが違います。単なる引き算の評価なら、それは「傍観者・評論家の評価」でしかないからです。当事者か、評論家なのか、は挑戦文化独特の評価軸なのです。

挑戦文化が「事実・実態を大切にする」ということは、「形式よりも中身をつねに重視する」ということでもあります。たとえば、ものごとを決めるときも、合議という形式に重きを置いたりはしないのです。
つまり、実態を一番よく知っていて、責任を最後までまっとうしてものごとを推進していく姿勢を持った人間が、責任をもって決める、ということを重視するのです。

実態をよく知らない本社スタッフがいろいろ言ってきても、それを無視してでも、正しいと考えることを貫き通そうという価値観を持つのが挑戦文化なのです。
「挑戦文化の価値観」は、このように「調整文化の価値観」とは真逆の性格を持っている、ということです。

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