高い壁にぶち当たった今、僕はまだ夢に向かって挑戦し続けられるか。
これから書くのは一夜にして全てを失った1人のサッカー選手の話です。
このnoteを書こうか、結構迷いました。
でも、こんな僕を応援してくださっている方々、これから海外へ挑戦しようとしているサッカー選手のために僕の身に何が起こったか、僕がそこでどう感じたか、そこから何を学んだかを書き記したいと思います。
そして、この悔しい思いを自分で忘れないためにも備忘録として残しておこうと思います。
とても恥ずかしく情けない話ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
つい昨日のこと。
現在所属しているオーストラリア3部のサッカークラブのオーナーが唐突に家にやって来て僕にこう告げた。
自分の目の前で何が起こっているのか、自分はこの人に何を言われているのかがすぐには理解できず、文字通り頭が真っ白になった。
詳しくはあまり覚えていないが、気付いたら必死に反論していた。
こんなことも言っていたと思う。
今思えば自分に少しでも興味を持ってくれたチームに対して、なんという無礼な態度だったか。
でも、とにかく必死だったんだろう。
何故かまだ流暢ではない英語がスラスラと出てきたのを覚えている。
こんなにスラスラと自分の思いを英語で話せたのは初めてだ。
こんなに一字一句オージー訛りの英語を聞き取れたのも初めてだった。
人間というのは本能的に自分が本当に伝えたいこと、伝えなくてはいけないことを伝えるとき、聞かないといけないことを聞くとき、瞬間的に何か力が働くようにできている「動物」なんだろう。
この時の僕に何を言っても無駄だった。
必死に色々なことを伝えた。
恥ずかしいことに慈悲にもすがった。
自分のせいにしたくなくて、自分の実力のせいにしたくなくて、色々な理由を探していた。
とても失礼で、最低な男だった。
自分が被害者だと思い込みたかった。
絶対にそうではないのに。
ただ自分の実力が無いだけ、ただ自分がチームから必要とされていないだけ、というシンプルな事実を受け入れたくなかった。
相手は一つのサッカークラブ、一つの組織をまとめるトップの人間として誠心誠意僕に対してチームが出した結論を伝えに来てくれていた。
誰もこんな役を引き受けたくはないのに、色々な仕事で忙しい時間の合間に僕に事実を伝えに来てくれていた。
それとは対照的に、不誠実にも僕はその場で思いつける言い訳と相手への文句を並べ続けた。
こんな会話があり、一通り話が終わった。
特に話し合いに進展はなく、僕がクビになるという事実が置き去りにされたまま会話は終わってオーナーは去っていった。
ただ呆然として我を失った。
この数分で起きたことが本当に信じられなかった。
本当に何をすれば良いか分からなかったので、とにかくまず母親に電話した。
気持ちが落ち着かないながらも一通り事の次第を伝え終わり、アドバイスや温かい言葉を貰ったあと、ちょうど母親が弟と一緒にいたらしく弟に電話が替わった。
電話が終わったら、悔しさと情けなさで涙が出てきた。
兄としてのプライドもクソもない。
その後もとりあえず父親や日本にいたときに所属し、とてもお世話になったクラブの方に報告をした。
その日はちょうどチームの練習だったので、行こうか迷ったがとりあえず練習に行った。
同じクラブでプレーして同じ家に住んでいる戦友の日本人選手にだけこの事実を伝え、他の選手には僕が今シーズンこのチームでプレーをしないことを言わなかった。
いや、言えなかった。
いつものように明るい笑い声の中練習が始まった。
いつものように皆も僕も時には冗談を言い合いながら、笑いながら、でも真剣にプレーした。
いつものようにサッカーは楽しかった。
僕とオーナーと監督以外にこの事実を知っているたった一人の日本人選手は怪我をしていて別メニュー。
監督もちょうどその日に用事があって練習に来ていなかった。
なので、僕がもうこのチームでプレーしないことを知っている人はピッチに誰もいない中でプレーした。
いつものように僕に冗談を言っている奴もいたし、いつものように僕に反則スレスレの荒っぽいタックルをしてくる奴もいたし、いつものように僕に怒ってくる奴もいた。
僕はもうこのチームでサッカーはしないのに。
言葉で表すのが難しいが何か特別感のような、背徳感のような、後ろめたさのような気持ちがそこにはあった。
たった二ヶ月だがプレーし、徐々に愛着が湧いてきたこのピッチでもうプレーすることはないのかという寂しさもあった。
練習が終わりみんなと別れた後、僕がこのチームから追い出される原因となった外国人枠の四人の選手と一緒の車に乗って同じ家に帰った。
これからこのチームの外国人枠でプレーする選手四人と、これからこのチームを去る僕はチームが提供してくれた同じ家に住んでいるからだ。
帰り道で買ったわずか400円のドミノピザを、一つの食卓を囲んでみんなで食べながら僕たちはいつものように楽しくふざけ合っていた。
そんな中、僕は急に真剣な面持ちに変えてこう話を切り出した。
こんな感じのことを伝えた。
心のどこかで同情を求めていた自分にとって、四人の反応は意外だった。
僕がこのクラブでプレーできない原因となる四人が僕の目の前にいた。
ただの良い奴らだった。
俺より全然経験があり、俺より優しくて心の広い奴らだった。
俺と同じくはるばる自分の国からオーストラリアに来ているサッカー選手だった。
俺と同じく外国人枠を争うサッカー選手だった。
俺と同じくただサッカーが本気で好きな奴らだった。
何よりただ、俺よりサッカーが上手かった。
その夜も、次の日も友人やお世話になった人に電話やLINEをさせてもらって、色々な話を聞いてもらい、色々なアドバイスを頂いた。
これまで誰にも話をしたことがない話を打ち明けてくれる人もいたし、いつもと同じように僕に新しい気づきをくれる人もいた。
くだらない話で僕を笑わせてくれる人もいたし、泣きながら話を聞いてくれる人もいた。
全ての話を覚えているし、わざわざ時間を取って頂いて本当に感謝しています。
話を聞いてくださった全ての方々。
本当に、本当にありがとうございました。
*
ここからは、僕が学んだことを書いていきます。
一つ目。
正直これに尽きます。
僕がクビになった理由は100%これです。
そして、実力が足りない理由は正しい努力を100%でしなかったからです。
逆にありがたいなと思います。
なぜなら、実力で評価してくれるから。
僕より理不尽な理由でクビになる人はサッカーに限らず会社などでもたくさんいると思います。
というか、僕はそもそも理不尽な理由でクビになっていませんし。
例えば会社のリストラなんて、よく分かりませんがほとんどが社内政治や派閥の関係、生理的に無理だとか、可愛い可愛くないとか実力とは関係ないものかなと思います。
だから、逆に実力で評価してくれる世界でありがたいと思うべきです。
僕はサッカーの実力に加えて正直、運やコミュニケーション力、語学力、人脈も大事だと思っていました。
それは間違ってはいません。
でも実力が全てなのです。
矛盾したことを言っているかもしれませんが、そういう世界なのです。
少しサッカーから発展したことを言うと、どこまでいっても組織に属する個人は組織(組織のトップ)と主従関係にあります。
なのでどこでも、誰にでも圧倒的に必要とされる実力を身に付けておかないと組織で生きていくことができなくなる可能性があるとも感じました。
二つ目。
僕がクビになったのは英語のネイティブではない日本人だからというの理由があるかもしれません。
エージェントを通さずに自分で連絡したからという理由があるかもしれません。
そこに関しては僕は知りませんし、知りたくもないです。
しかし、これがもし起こるとしても全て実力で圧倒的に上回ることができない場合のみです。
どこまでいってもサッカーの世界は自分の実力が全てなのです。
最後に、自分の今の正直な気持ちを書きたいと思います。
まず、そもそもこんな文章を昨日の今日で書けている自分に誇らしさの反面悔しさ、みっともなさを感じています(笑)
将来については、まだ自分の中でも気持ちに整理がついておらず、これから何をどのように頑張るか決めかねている状態です。
でも、マジで悔しくて情けないという自分の気持ちは本心です。
なので、またサッカーを、チーム探しを頑張ろうと思います。
シーズン直前で移籍期間ももう直ぐ閉まるので外国人枠が空いているチームがあるかは分かりませんが、可能性がある限り挑戦し続けたいと思います。
プレーするサッカークラブも、家も、車も、給料も、仕事も、チームメイトも、全て失いましたがまた0から頑張ろうと思います。
応援していただける方は、応援よろしくお願い致します!
拙い文章を最後までお読み頂きありがとうございました。