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週休3日制を導入してみた。〜第2回 検討事項・懸念事項編〜

はじめに

商標登録サービス「 Toreru 」の代表の宮崎です。
「週休3日制を導入してみた。」シリーズの第2回です。(第1回「導入理由編」はこちら
前回では週休3日制の導入理由は「従業員が少しでも幸せになってもらえれば嬉しい」ということをお伝えしました。
今回は、週休3日制を導入する上で、洗い出した検討事項、懸念事項とその対策についてご紹介します。

検討事項

  • 営業日を減らして一斉休みにするか、営業日を維持してシフト制にするか

  • 何曜日を休みにするか

  • 週休3日制をやめる条件はどうするか

  • 週休3日制の効果測定はどうするか

懸念事項

  • 働く時間が20%も減少するので、売上も20%減少するのではないか

  • 少ない時間でオペレーションは回るのか

  • 顧客対応できない日があるので顧客満足度が下がるのではないか

  • 営業日が減ることによって競争力が落ちるのではないか

  • 法的、文化的に一旦週休3日制を始めるとやめられないのではないか

  • 年間休日が40日以上増えるので、年間5日の有休消化義務を達成するのが難しくならないか

  • 祝日がある週は営業日が少なくなるのでオペレーションが回らないのではないか


検討事項

【検討事項1】営業日を減らして一斉休みにするか、営業日を維持してシフト制にするか

一斉休みvsシフト制
一斉休みかシフト制か(週休3日制)
一斉休みとシフト制の比較表

ざっくり言うと、シフト制は売上の維持がしやすい代わりに、オペレーションが複雑になり従業員のストレスが上がる可能性があります。また、このオペレーションの複雑さにより週休3日制を断念した会社もありました。 今回は、従業員の幸せを目的とするため、オペレーションの複雑性を回避するためには「一斉休み」が適していると判断しました。

【検討事項2】何曜日を休みにするか

水曜日or金曜日?

週休3日制の休みは、土日とあと何曜日を休みにすれば良いでしょうか?
事前のリサーチでは、国内では600株式会社さんなど水曜日休みを採用しており、海外の4 DAY WEEK GLOBALなどでは金曜日休みを採用していました。
Toreru では「商標登録」という業務の性質上、「将来的に役所が週休3日制を導入した場合に採用されるのはどちらか」を重視しました。
これまでの休みの歴史を見ていくと、週休1日制では日曜休み、週休2日制のときに土日休みでしたので、この流れでは金曜日休みになりそうだなと予測して、金曜日休みにしました。
何曜日を休みにした方が良いかは企業の事情によって相当異なりそうです。

【検討事項3】週休3日制をやめる条件はどうするか

週休3日制を導入したものの、想定以上に悪影響が出た場合に、その週休3日制をやめる必要性が出てきます。
その条件はどのようなものが考えられるでしょうか?
まずは、事業に悪影響がある場合(赤字になる)や、顧客体験が悪くなった時などが即座にあげられました。もう一つ意外なものがあがりました。それは、「有給休暇を年間5日取れない場合」というものです。
最近、有給休暇を年間5日取らせることが会社の義務となりました。
仮に週休3日制で大幅に休暇が増えても有休を年間5日取らせないと、会社としては従業員を休ませていないとして処罰されます。
そういった場合を防ぐためにも、週休3日制をやめる条件として「有給休暇を年間5日取れない場合」を入れる必要がありました。
そして、週休3日制やめる条件は下記のようになりました。

週休3日制をやめる条件

  • 赤字が常態化している場合

  • CX(顧客体験)が低下した場合

  • 有給休暇を年間5日取ることが難しいと判断した場合

  • 有給休暇の取得状況により業務に支障が出たと判断した場合

  • その他週休3日が妥当ではないと判断した場合

【検討事項4】週休3日制の効果測定はどうするか

週休3日制の効果測定は、週休3日制を導入する企業にとって非常に重要ですが、何を指標にすればよいか悩ましい問題です。
事前のリサーチでは、幸福度やストレスレベルなどをアンケートに取ったり、生産性を計測する場合があることがわかりました。
幸福度を直接アンケートで聞くのは、なんとなく日本人には馴染まないと思い、下記の質問をすることにしました。
「週休3日制の継続を希望しますか?」
継続を希望するということは、週休2日制の時より望ましい状態になっているという仮説です。
また、生産性については、
「勤務日が5日から4日に減ることで、業務に問題は生じますか?」
という質問により把握することにしました。
事業が継続できるかどうかは、売上により把握することにしました。
大企業や採用を積極的に行なっている企業であれば、採用の応募数や離職率などの効果測定も非常に有効だと感じます。


懸念事項

【懸念事項1】働く時間が20%も減少するので、売上も20%減少するのではないか

週休3日制でまず懸念したのは、働く時間が減少すれば、そのまま売上も減るのではないかということです。
これは、当たり前の論理に聞こえるのではないのでしょうか。
特に Toreru の商標登録サービスは1件あたりいくらというビジネスモデルなので、働く時間がそのまま売上にもつながりそうです。
しかし、働く時間が減ったとしても売上が減らない場合が3パターンあります。

  1. 余裕のある体制で仕事をしている

  2. 定額料金制のビジネスモデル

  3. 自動化が進んでおり、売上が増えてもそこまで働く時間が増えない

特に2、3は働く時間と売上が連動していないビジネスモデルなので週休3日制にとても向いています。
また、仮に働く時間が減ることで売上に影響がある場合であっても、いくつか対策があります。

  1. 会議などの無駄な時間を省く

  2. オペレーションの一部を自動化する

  3. 単価を上げる

どれも中々難しいところはありますが、これらを上手く組み合わせれば、働く時間が減ったとしてもむしろ売上を上げることさえできます。
Toreru の場合は、「会議などの無駄な時間を省く」「オペレーションの一部を自動化する」をしました。

【懸念事項2】少ない時間でオペレーションは回るのか

週休3日制は、5日でしていた仕事を4日でこなすことになるので、きちんとオペレーションが回るのかが懸念されます。
この懸念点を考えることで、週休3日制に移行するメリットの一つが現れます。それは、強制的に生産性の評価・改善がされるというものです。
例えば、

  • 無駄な会議はないか?

  • 省略しても結果に影響はない作業はないか?

  • 自動化できるのものはないか?

など、普段ではあまり問いかけない質問を自分たちに投げかけることができます。
その結果、会議を少なくしたりやオペレーションの見直しが促進されます。
逆に、このオペレーションの見直しをしないと週休3日制に移行することはかなり難しくなってきます。

【懸念事項3】顧客対応できない日があるので顧客満足度が下がるのではないか

週休3日制の導入により営業日が減ることで顧客対応できない日が増えます。 Toreru の場合は、新たに金曜日を休みにしたので、その分、顧客対応ができずに顧客満足度が下がる可能性がありました。
この懸念点は完全には解決できませんでしたが、顧客に週休3日制であることを伝えることで感情的に緩和する方法を取りました。

  • ホームページやGoogleマイビジネスなどに週休3日制であることを記載する

  • メール署名欄やお問合せフォームなどに週休3日制であることを記載する

  • プレスリリースなどで週休3日制の意義や目的を発信する

顧客満足度が下がることに対する根本対策は、差別化したサービスを構築して、営業日数が少なくとも選ばれるサービスを作ることです。
逆に営業日数が理由で選ばれないとしたら、そのサービスはコモディティ化しているといえるのかもしれません。その場合は、差別化したサービスを構築した後に週休3日制に移行することが良いと思います。

【懸念事項4】営業日が減ることによって競争力が落ちるのではないか

週休3日制の導入によって営業日が減ることで、競争力が落ちるのではないかという懸念があります。
定型的なオペレーション作業は効率化できたとしても、例えばシステム開発、コンテンツ作成、デザイン作成などのクリエイティブな作業の効率化は中々難しいです。そのため、競争力が落ちる可能性があります。
一方で、週休3日制を導入することで、従業員のワークライフバランスが改善されたり、従業員の定着率が上がることもあります。定着率の向上は、結果的に競争力の向上にも繋がります。
週休3日制は競争力が上がる影響と下がる影響の両方があるので、どちらの効果が大きくなるかは現時点ではまだわかりません。
ただし、下記のような性質がある企業は週休3日制により競争力が向上する可能性が高いです。

  1. 従業員の定着率が低い

  2. 従業員の採用が難しい

  3. 従業員の教育に時間がかかる

  4. 創造性によってアウトプットが変わる業務

Toreru の場合は、特に「従業員の教育に時間がかかる」「創造性によってアウトプットが変わる業務」という特徴がありますので、週休3日制は競争力にポジティブな影響があると感じています。

【懸念事項5】法的、文化的に一旦週休3日制を始めるとやめられないのではないか

週休3日制を一旦始めると、法的な理由と、文化的な理由からやめられなくなる懸念があります。
法的な理由としては、例えば、就業規則等に週休3日制を盛り込んでしまうと、週休2日制に戻す場合、「労働条件の不利益変更」になる可能性があります。
文化的な理由としては、週休3日制が新しい文化として定着していると、週休2日制に戻した場合に、今までの生活ができなくなり従業員が困ってしまうことが予想されます。
この対策としては、下記が考えられます。

  • トライアル期間を設ける

  • 週休3日制をやめる条件を設定して周知する

  • 週休3日制の休みは特別休暇として設定して、通常の休日・祝日とは明確に分ける

  • 採用時点で、週休3日制はなくなる可能性があることをあらかじめ伝える

この懸念事項は、週休3日制の懸念事項の中で最も大きなものです。
会社が倒産する理由が「週休3日制をやめられなかった」ということもあり得るため、万が一に備えて慎重に対策を進めることが必要です。

【懸念事項6】年間休日が40日以上増えるので、年間5日の有休消化義務を達成するのが難しくならないか

週休3日制の導入により、年間休日が40日以上増えるため、年間5日の有給休暇消化義務を達成することが難しくなる懸念があります。
有給休暇消化義務を達成するためには、以下のような対策が考えられます。

  1. 週休3日制をやめる条件に、有休消化を盛り込む

  2. お盆休みなどを廃止し、有休推奨日を作る

  3. 有休消化率をモニタリングして、有休を5日消化していない人に声掛けをする

基本的にはモニタリング、声掛け、周知を徹底するという週休2日制の時とは変わらない方法が良いと思います。

【懸念事項7】祝日がある週は営業日が少なくなるのでオペレーションが回らないのではないか

週休3日制において、祝日がある週は営業日が減ることからオペレーションが回らないのではないかという懸念があります。
実際に5日で行なっていた作業を3日で行うのはかなり厳しいので、祝日のある週は金曜日の特別休暇はなしとしました。
これによって、祝日がある週であっても営業日を確保することができ、オペレーションの支障が少なくなります。

まとめ

検討事項、懸念事項の対策もできたので、
次回の記事では、これらをもとに週休3日制の事前準備をご紹介します!


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