朝日新聞に「巨大怪奇地底井戸!!城跡に幻の宗教施設の謎を追え!!」みたいな記事が載った件について

朝日新聞に変な記事が載る


少し前に朝日新聞が本当かよ?と思うような記事を掲載していました。

熊本県人吉市の人吉城跡敷地内に「謎の地下室」の遺構があるのはご存じでしょうか? この地下室は何のための施設だったのか――。遺構の謎に迫るシンポジウムが24日、同市内で開かれる。

 遺構が発見されたのは約25年前。当時からこの謎に取り組んできた郷土史家らが、東京大の市川裕・名誉教授(ユダヤ教専攻)や岡美穂子・准教授(日本キリスト教布教史専攻)、山形大の松尾剛次・名誉教授(日本宗教史専攻)を招き、見解を聞く。

 郷土史家らがこれまで市川名誉教授らから得てきた情報によると、人吉城跡の地下遺構は「大きさや構造からユダヤ教の身を清める沐浴施設ミクヴェといっていい」という。

 なぜ、ユダヤ教なのか。

 岡准教授らの研究によると、戦国時代から江戸時代初期にかけて九州などにいたキリスト教宣教師や南蛮貿易商人の中には、欧州でキリスト教に強制改宗された「改宗ユダヤ人」(コンベルソ)がかなりいたという。地下室遺構については古文書などの記録が見つかっていないので推測になるが、そうした人たちの手による施設ではないかという。

 郷土史家の益田啓三さん(73)は「謎の遺構が有名になれば、研究者や観光客が増えて地域が盛り上がる」と期待する。

 シンポは24日午後1時半~4時、人吉市カルチャーパレス小ホール。参加費無料。200人。問い合わせは大平さん(090・5472・0204)。(村上伸一)

ムーか川口浩探検隊かみたいなタイトルですが内容も奇妙です。キリシタンならわかりますがユダヤ教ですか。

調べてみた


しかし本当にミクヴェなんでしょうか?ツイッターを検索すると詳しそうな人がいました。
このツイートをみるとこのネタは2019年6月19日にも記事になっていたんですね。

ミクヴェは水面から水底まで7段なければならないようです。朝日新聞の写真だと濁っててみえないですが、検索すると透き通った写真がありました。あれ?水面下2段

段数たりなくないですか?

※ただしミクヴェのウィキペディアで調べると段数の記述がありませんでした。
ヘブライ語のミクヴェ


しかも、この井戸の復元なんちゃって臭がします。
この井戸があった場所に今は博物感が立っていて、館内に発掘当初の写真があるんですが、


https://ameblo.jp/cabowabo0515/image-12453298076-14388596628.html

もともとの段数が更に少ない上に水槽が深すぎて上り下りしにくい構造なのがわかります。これは沐浴できないのではありませんか?

古代のミクヴェ。底まで歩いて降りれるようになっている。

先生方も振り回されてるだけ

更に調べるとなるほどというツイートが

そして最初の記事のシンポジウムに出られて、記事にお名前のある 東大 岡 美穂子准教授(南蛮貿易に関する研究)のブログでは

ともかく、私自身は「真正ユダヤ教徒のためのミクヴェの可能性は低い」という結論です(シンクレティズムとしてはあるかもしれません。でもユダヤ教がシンクレティズムになった時点で、もうユダヤ教ではない。そこのところは緩いキリスト教とは異なる)。新聞社が2社ほど来てましたが、「長崎で日本人はユダヤ教徒に出会っていた」だけが切り取られないことを切に所望します。

https://mdesousa.exblog.jp/30128329/

先生方もご苦労様です。
記事の「郷土史家の益田啓三さん(73)」はどうも靴屋さんのようで、靴屋の思い込みに周りが振り回されてるんですね

※ちなみにこの話を調べていてお城の地下室に井戸があるのは珍しいという記述をいくつかみたのですが、ちょっと調べるだけでも名古屋城松江城にあったことがわかります。

各地で起こるこのような騒動、そして人吉

詳しい人に聞いたところこのような話は各地で起きているそうです。
こういうオカルトを始めだす郷土史家はだいたい地元の名士で地元では権力を持っており、町おこしとしてもやりたがるらしいですね。
例えば人吉市はこのミクヴェ以外にもおかしな事をやってるそうです。
ハーバー・ビジネスオンラインより(サービス終了なのでウエブアーカイブから)

地元の人から「最近は、こんな町おこしがあるんですよ」と、少し困った顔で教えられた。
人吉市をはじめとする球磨地域の自治体が共同で運営する観光目的のオフィシャルブランド「人吉・球磨 風水・祈りの浄化町」である。
中略
この地を語るにあたってのキーワードとしては大きく2つ、風水と三日月の気(エネルギー)です。
相良家は気が溜まるこの盆地において、天(三日月)からの気を中心部である三日月城に集中させるように城下町の設計を進めていったのです。
===

 相良家が一定の方針をもって城下町を設計したことは間違いないが、気を集中させるようにしたとか、風水に基づいているというとはどういうことなのか。人吉球磨観光地域づくり協議会の担当者に取材したところ、そうしたことを記した文献はないとした上で、こう語るのだ。

「寺の配置とか状況証拠はありますし。誰が言い出したかわからないけれど、言い伝えはあります」 確かに上記サイトでも相良家39代当主・相良知重が「風水思想に基づいて配置されているとは代々聞いておりました」というコメントを寄せている。しかし、人吉の人に聞くとみんなこういうのだ。「そんな言い伝えは、聞いたことありませんよ」

ハーバー・ビジネスオンラインより

うーん。そうですか。文献なし、言い伝えなしで人吉は風水の街づくりの歴史があると言い張るということですか。人吉市の歴史はおよそ現実とかけ離れたところにあるようですね。

まとめ

地元に何か観光の目玉がほしいという切実な思いはわかりますが、偽の歴史をでっち上げるという詐欺はよくないと思いますよ。
 それに偽の歴史を真実と押し付けられることは歴史が歪むことであり、それは現代の社会システムをも歪ませるものです。例えば日ユ同祖論とかのオカルトに力を与えてしまう。
 朝日新聞はたしか報道機関のはずです。まるでこれはサンゴKYのようなマッチポンプではないか。
このようなものを報道することでデマに加担するのは信用に傷がつきますよ。もし信用がまだあればですが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?