見出し画像

海外アーティスト 送迎ドライバー&アテンドの心得

私は今までageHaや野外パーティーでの仕事を通して、たくさんの海外アーティストを日本に招待し、自分自身でドライバーも担当してきた。

自分自身でドライバーをすることで、道中にアーティストと話をする時間が持てるのが有意義だし、アーティストの状態を把握し、本番のステージに向けて必要なものが理解できる。

だから、極力人に任せず自分自身でアーティストを迎えに行き、アテンドも自分でやるようにしてきた。英語は得意ではないのだけれど、そんな自分にとっては貴重な勉強の機会でもあった。

そんなわけで、自分が送迎ドライバー&アテンドをする際に準備していたことをまとめ、共有智として公開しようと思う。

初めてドライバーを務めようとする人たち。あるいは、これからオーガナイザーとして海外アーティストを招聘してみたいと思っている人達の助けになれば嬉しい。

基本的な準備

■アイテナリーの作成と確認

アイテナリーとは、スケジュールなどが記された日程表のこと。
・フライトの便名・到着時間
・ホテルの名前と連絡先
・ドライバー、アテンダーの名前と連絡先
なども記載し、内容に間違い、問題がないか? 事前にアーティストおよびエージェントと相互確認しておくべき書類である。

参考として一般的なアイテナリーの雛形のフォーマットを置いておく。
これを各自カスタマイズして使ってもらえたら良いと思う。

こんな感じの書類です。

オーガナイザーは絶対にこれを準備しておくべきだが、現実にはそれをやりきりない状況も発生するだろう。そんなときはオーガナイザーから与えられた情報を元に、箇条書きでいいのでドライバーもしくはアテンダーの方で整理してメモしておこう。

「アイテナリーも準備できないなら、次回はドライバーは請け負えません。」と、本来ならつっぱねてもいいくらい大事な情報であり、段取りである。

■送迎ルート、混雑状況をリサーチしておく

家から空港までどのくらいかかるか?
空港からホテルまでどのくらいかかるか?
道路の混雑状況を事前にリサーチして出発時間を決めておくのは絶対必要な最低限のこと。
大まかな送迎時間はアイテナリー作成時にオーガナイザーが設定しているはずだが、道路の状況は日々、時間によっても変わるものなので、最終的にはドライバー自身でのリサーチが必要である。
そして、出発の前日、そして当日の前にも余裕を持って送迎ルートの道路状況を確認しておこう。

■空港到着時間と送迎出発時間の設定

通常、飛行機の到着後は出てくるまでに入管を通って時間がかかるが、アーティストが預け入れ荷物を持ってこない時には、30分もかからずゲートに出て来る場合もある。
しかも、フライトの到着時間が30分程度早まる場合もある。
ということで、通常の空港の待ち受け時間は、最低でもフライトの到着時間までに到着ゲートに居れるようにすべきだと思う。
もちろん、長く待たされることもあるけれど、それも仕事のうち。
遅れそうと焦って運転するより、余裕をもった送迎出発時間を設定しよう。

■到着ターミナルを事前チェック

少なくとも、出迎えの前日にはアーティストのフライトと、到着ターミナルを確認しておく。同じターミナルでも北ウィングなのか? 南ウィングなのか?というところまで把握しておくと動きがスムーズになる。

■空港駐車場の場所を確認しておく

ターミナルの確認と共に、駐車場の場所を確認しておく。
空港の車寄せでのピックアップは基本的に考えないほうがいい。
となると駐車場を利用することになるわけだが、できるだけターミナルに近い駐車場に停めた方が良い。その意味で空港内のどの駐車場に停めるべきか? ということも事前に確認しておいた方が良い。

特に、羽田空港などでは大型連休など駐車場自体が混雑して渋滞になっていて事前に予約をしておかねばいけない場合もある。羽田は駐車場の状況をライブカメラで確認できるので、予約しない場合も活用できると思う。
【羽田空港駐車場ライブカメラ】
http://www.aeif.or.jp/haneda/live_camera/

■ホテルの車寄せを確認しておく

空港駐車場だけでなく、アーティストを降ろすホテルの車寄せを事前に確認しておくとベストである。そもそもちゃんとした車寄せがあるのか? 一時的に駐車ができるような車寄せなのか? 出来なさそうなら駐車場に車を入れてしまった方がいいのか?
何度も利用していて慣れているホテルで、ただ降ろすだけならワケはないが、ホテル到着時に必要な手続きも含めて想定しておくと良い。

もし可能なら、空港へ向かう前にホテルに立ち寄っておいたら完璧。
それが出来ないなら、Googleのストリートビューで車寄せの入り口を確認しておくだけでも、心の余裕が全然違う。

送迎出発前の準備

■フライトの運行状況をGoogleで確認

送迎出発の少なくとも1時間前にはフライトの運行状況をGoogleで確認しよう。Googleは世界中の航空機の運行状況をリアルタイムで把握しているので、便名を入力するだけで、遅延などの状況が把握できる。(早着は分からない) つまり、もし出発国でのフライト自体が遅れていれば、迎えの時間も変わってくるわけだ。

仮にヨーロッパからのフライトなら12時間はかかる。
日本の早朝に到着するフライトなら、前日の夜にはフライトがオンタイムで出発したのかどうかわかり、状況を把握した上で安心して就寝できる。

■待受サインを印刷しておく (クリアファイルに挟む)

アーティストの名前を書いてプリントしておくことは一番基本的な準備の一つ。お互いの顔がわかっている場合でない限り、用意しておくべき。
クリアファイルを車の中に常備しておけば、今時コンビニですぐにプリントできる。

■車の洗車と掃除

車が汚れているなら洗車を。
外装だけでなく、車内が綺麗か?ゴミなどが落ちていないか? を確認し掃除しておく。ティッシュやウェットティッシュが車内に用意できているかも確認。

■車にガソリンを入れておく

当日でもいいのだけれど、これも前日にやっておければベスト。
満タンにしておかないと、どれだけ走ったのかが明確にできない。
ドライブメーターもゼロに設定しておこう。

■ミネラルウォーターを事前に用意しておく

ゲートを出てきた時に喉が渇いていることは多いので、ペットボトルの水を用意しておきたい。
これも直前でもいいし、空港の自販機で買っても良いが、レシートの出るお店で買っておけばドライバーが自腹で払う必要もないし、オーガナイザーも助かるからみんなハッピー。
個人的には、暑い夏でない限り水は冷えてなくても良い。と思う。

■道中でかける音楽を考えておく

基本的にカーオーディオの音量は小さめでスタートするのが良いと思う。
選曲というよりも、アーティストの疲労具合を想定してまずはジャンルや雰囲気を考えておこう。

ミュージシャンに聞かせる音楽を選曲するのは簡単ではないかもしれないが、その点ではアーティストの音楽自体を理解しておくのが一番の基本になると思う。

しかし、アーティスト本人の曲をかけると嫌がられることは多々ある。(自分の曲を車の中でまで聞きたくない?)
とはいえ最新のリリースをチェックしたり、プレイリストに準備しておくのは良いことだと思う。そして、実際に会ってその人のキャラクターと状況に応じて選曲する。

ちなみに、安全のためドライブ中にスマホを操作するのは最低限に。
なので、カーオーディオに音源を準備しておくのがベストだと思う。

選曲に自信がなかったり、迷うことが予想されるなら、早いタイミングでオーガナイザーに相談しておこう。

実際に空港で出迎える

ここまでの準備をしっかりとして、オンタイムに空港で待っていれば、実際の出迎えはバッチリ問題ないはずだ。
あとは臨機応変に、ベストを尽くしてリクエストに応えていこう。

以降は入国後の対応として、ドライバーというより、主にアテンドの心得になるがドライバーにも共通する部分が多いのでまとめていく。

アテンド基本の心得

■購入したもののレシートは絶対にもらい、無くさない。

社会人として当然のことだが、経費のレシートは絶対にもらい、無くさない。

■契約書の内容まで把握していたらベスト

自分がageHaのときにもここまでやらなかったことだけれど(汗)
アテンダーあるいはドライバーが契約書の内容まで把握していたらベストだと思う。

どのぐらい細かい指定がある契約なのか?
到着時にバックステージに何が必要か?
オーガナイザーはそれをちゃんと用意できているのか?
滞在中の支払い(特に食事等)に関して、どこまで経費で出して、どこからはアーティスト自身が支払うべきものなのか?

などなど、オーガナイザーからアテンダーに全てを伝えるのは中々大変だが、これを知っているかどうかで適切なアテンドができるかどうかが変わってくると思う。
漏洩してはいけないギャラなどの情報はカットしておけばよい。あるいはMTGで説明をしておいたらベストかもしれない。

■食事のアテンドは奥が深い

契約の内容とともに、食事の要望についてもオーガナイザーから聞いておきたい。
初めてのアテンドなら何から調べれば良いか分からないと思うので、オーガナイザーに店を決めて貰えば良いと思うが、アテンドの経験を積んでいくなら、自分でも知識と引き出しを持っておくのは重要だ。

夕食に「日本食が食べたい」というオーダーなら、余程のトップアーティストや日本通でない限り居酒屋がおすすめ。何人かをまとめて夕食に連れていく場合も、肉、魚、野菜と選択の幅があり便利だ。

お店を予約する時には英語メニューが用意されているかの確認も大事なポイント。

また、アテンドするアーティストにベジタリアンが居ないかを確認しておこう。日本ではベジとノンベジが一緒に楽しめる店の選択肢はあまり多くない。けれど、最近はデニーズ、ロイヤルホスト、ココスなどでソイミート(大豆)を使ったベジメニューがラインナップされるようになってとても便利だ。

■困ったらオーガナイザーに確認

アテンド中、困ることや判断に迷うことがあれば、すぐオーガナイザーに相談しよう。特にギグの途中や終わった後には予想もしていないことが起きることがある。

例えば、ギグの後にグルーピーのようなファンが車に紛れて乗り込んできたり、、、
複数のアーティストを同時に送迎する場合だと、それが誰だか分からず、誰かの関係者だと思っていたら誰も知らない人だった。。。みたいな。そんな怪談噺のような話が起きることもある。

事故などは絶対に避けなければいけないが、起きてしまったトラブルにどう対処するのか?というのも腕の見せどころだ。

まとめ

以上、自分なりの経験を基にまとめてみた。
「ドライバーは絶対に飲酒はしない。」など基本的すぎるルールについてはあえて触れていない。

全ての準備をやりきるのは決して容易ではないけれど、これが出来ればほぼベストな対応ができると思うし、少なくともこれを一読すれば、あなたが任された仕事において、これから何が起こりうるかという想定もできると思う。

一番良くないのは、発生した問題の対応に慌てふためくあなたを見て、アーティストが不安に思うこと。

オーガナイザーも自分の手配したドライバーに仕事を依頼するToDoリストやHow Toとして活用してもらえると思う。

そして、ベストを尽くしたアーティストケアが、海外から日本のシーンの評価を高め、ひいては日本のシーンが良くなっていく一助となれば幸いである。

更に、ドライバーとアテンドという業務の大変さや難しさと、その仕事の価値が認知され、イベントやパーティーを成立させるための大切なクルーとして、その地位が向上することを願っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?