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下町の銭湯|墨田区の御谷湯で湯船に浸かりながら東京スカイツリーを望む

週末、朝から降っていた雨も昼前には上がり青空とともに陽射しが美しい時間が訪れる。

私は早朝からの仕事を終え、そのまま電車に揺られて自宅のある千葉から東京の墨田区にある銭湯へと向かう

突然の依頼

ことの経緯はこうだ。

前日の夜、私は翌日締切の原稿を仕上げるためにキーボードとの熾烈な格闘を演じていた。時刻は22時30分を回っている。

すると私のFacebookメッセンジャーにこんなメッセージが届いた。

お久しぶりです。いきなりですが、明日急な撮影の対応をお願いしたいですが、いかがでしょうか。

ふむ、なるほど。確かにこれはいきなりすぎる。

送り主は私の十年来の友人。台湾出身で日本の某大手広告代理店で辣腕を振るう女性。美女。

明日の12時~14時の間、墨田区にある御谷湯(みこくゆ)の外観を、4Kか1080の画質で、動画として取っていただきです。

なんでも台湾向けの観光PR動画で東京の観光スポットを紹介する中で銭湯も紹介するのだが、以前撮影した画像があまり良くなかったので撮り直したいらしい。ただ、彼女はあいにく翌日から台湾出張が入ってしまい代わりに撮影できる人を探していたらしい。

なぜ私が・・・と思わなくもない。
しかし、私は「美女の頼み事を断ると死ぬ病」に冒されているためもはや断るという選択肢は残されていなかった。

引き受ける旨を伝えると、ただ一言「神。」とだけ返ってきた。。。

こうして、私は週末の貴重な時間を使って墨田区の御谷湯へと出かけて行った。


墨田区の下町ど真ん中にある御谷湯

早朝に仕事を済ませ、雨上がりのなか都営浅草線でやってきたのは本所吾妻橋。

地上に出ると目の前には東京スカイツリーが間近に迫りその雄大な姿を天下に晒して屹立している。

目的地の御谷湯へはここから南へ錦糸町方面へ進んだところにある。

御谷湯の看板

大通りから一歩路地へ入ったところに見えてくる「御谷湯」の看板。
よく見ると「天然温泉」の文字が見える。
そう、御谷湯は温泉なのだ。

入り口には「御谷湯」と筆文字で書かれた木の看板が掲げられている。
趣のある看板と裏腹に建物自体は鉄筋コンクリート5階建てのビルだ。


都心で天然温泉に浸かる

現場に到着して早速動画撮影に取り掛かる。
10数秒しか使用されない素材のため、撮影そのものは10分もかからず終了。
その場でデータをクラウドのストレージサービスに保存し、リンクを依頼主に伝える。これで無事にお役御免。

さて、そうなるといよいよ入浴だ。

エレベーターで大浴場へ

下足入れ

入り口の暖簾をくぐるとまず現れるのが下駄箱。
ここで靴を脱ぎ、下駄箱にしまって下足札を持って番台へ向かう。

ドアを抜けると入浴券の自販機と番台が現れる。

大人の入浴料は500円
しかし、私はレンタルタオルを利用するので600円を支払う。

番台で入浴券を渡し、下足札を預けると、脱衣所のロッカーの鍵をくれる。

大浴場は4階と5階。
この日は5階が男湯となっていたため、エレベーターで5階へ向かう。

男湯の入口

エレベーターを5階で降りると、目の前に暖簾。この奥が脱衣所なのだが、残念ながらここから先は写真撮影NG。


脱衣所には木の扉のロッカーが並んでいる。
漢数字が書かれたロッカーの扉と自分の持っている鍵の番号を照らし合わせ、自分が使うロッカーへ荷物を入れる。

そして、生まれたままの姿になり、いざ浴場へ参らん!

扉を開けると、ビルの5階とは思えないようなレトロな銭湯の景色が広がる。
手前には洗い場が並び、カランに腰掛けを置き、「ケロリン」の広告が印刷されたプラスチックの風呂桶にお湯を溜めて体を洗う。壁に固定されたシャワーで石鹸を洗い落とし、湯船に向かう。


御谷湯の温泉は「黒湯」

内風呂の浴槽は3つに分かれ、それぞれ温度が異なる。
高温温泉(約43~46度)、中温温泉 (約39.5~42度)、低温温泉 (約25度)と3つの温度のお湯に浸かりながらリラックスすることができる。

ここのお湯は褐色に濁ったいわゆる「黒湯」。

東京の温泉といえばこの黒湯がほとんどだが、それはここがかつて海であったことの証。火山性の温泉と異なり、黒湯は海藻や藻などが海底に沈んでたまり、泥や火山灰などに埋もれて地層となったのちに何億年もの年月をかけて分解された過程でできる「フミン酸」によるもの。

黒湯は見た目に反して意外にも美肌の湯らしい。
歳とともに潤いを失っている私の肌も再びその艶やかな姿を取り戻すかも知れない・・・

さて、ある程度体が温まったところで、格子窓に囲まれた半露天風呂に移動する。冷たい外気に火照った体が冷やされて気持ちいい。

しかし、ここの一番の良さはなんといっても半露天風呂の格子窓から見える東京スカイツリーだ。

露天風呂から見る雄大な自然もいいが、都心のど真ん中で東京スカイツリーを見ながら天然温泉に浸かるのもなかなか面白い体験だ。


休憩より先にロッカーの鍵を返そう

休憩スペース

体を充分に温めた私は、着替えを終えて1階の休憩スペースへ移動する。

ここで気をつけたいのは、休憩する前にまずロッカーの鍵を番台に返すこと。次に利用する客がすぐにロッカーを利用できるように鍵の返却は忘れずに真っ先にやろう。


この日は、地元の人と思われる常連客が15時半の開店と同時にたくさん押し寄せてすでに大勢の客で賑わっていた。店の前に停められた大量の自転車を見るからに、おそらく近隣の住民は毎日入浴に来ているのかも知れない。

ポカポカと温まった体ですっかりリラックスした私は、遠路はるばる千葉からこのためだけにやって来た価値はあったとひとり納得していた。

やはり、美女の頼み事は断らないのが正解なのかも知れない。


御谷湯の基本情報

名称:御谷湯(みこくゆ)
住所:東京都墨田区石原3-30-10
電話:03-3623-1695
公式サイト:http://mikokuyu.com



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