新興国投資について個人的な意見

私は自分の投資ポートフォリオにおける新興国の比重をとても低くしていますが、その理由を書いてみたいと思います。

私は新興国を中心に60か国以上訪問したことがあります。またニューヨークに駐在していたときは、ラテンアメリカ地域のマーケティングを担当し、各国のディーラさんとビジネスをしていました。

その際に感じたことは、国にによって人生における仕事の重みややり方がまったく異なるということです。

< ビーチから会議に参加するディーラの社長 >
あるとき、私がカリブ海の国、ジャマイカのディーラの社長さんと電話会議があったとき、時間になってもなかなか入って来ませんでした。秘書さんに連絡をとってなんとか会議を始めることが出来たのですが、どうも先方の社長さんの周りが騒がしいです。よくよく耳をすましてみると、子供の声や波の音まで聞こえます。どうもその社長さんはビーチでベンチに寝そべりながら電話をかけていたようです。

また、私のニューヨークでの同僚はほとんどがラテン人だったのですが、定時になったらすぐに帰る人が多いです。たとえ顧客のディーラさんから緊急で今日中に何かやってほしいと連絡が来た場合でも、ラテン人たちは基本的には帰ってしまいます。彼らにとっては仕事よりも、家族や友人と過ごす時間の方が大切なのです。

また、何かプロジェクトを行うとき、ラテンの国々ではスケジュール通りに行くことはまずありません。ずるずると何か月も、ときには何年も遅れます。これは末端のビジネスから、公共工事におけるまで同じです。なので世の中の進歩がとても遅いです。日本やアングロサクソンの国々とラテンの国々では時間に対する感覚が異なります。日本やアングロサクソン国では時間は一直線に流れますが、ラテンやアフリカ、中東、東南アジアでは時間はさまざまな出来事に左右されながらゆらゆらと柔軟に流れる感覚のようです。

参考)異文化理解力   エリン・メイヤー (著)

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< 低い教育レベル >
他にも、ラテンの国々の教育レベルは日本や先進国とは比較にならないほど低いです。これは大学などの高等教育でも同じです。ラテンでは大学卒業したひとでも、日本の中学レベルの数学が出来ない人がたくさんいます。そのため、新しいビジネスを始める際に、ビジネスモデルや損益シミュレーションの話をするのがとても難しかったです。また先方から出してもらう数字も間違いだらけなので、それを修正するだけで時間が取られます。
ただし、インド系は数字が得意でビジネスセンスがある人が多く、インド系の多いトリニダード・トバゴのディーラとはとてもビジネスがしやすかったです。

< 低い納税意識 >
最後に新興国の発展を阻害する大きな理由は納税意識と思います。これらの国では納税をしていないブラックマーケットが経済の大きな割合を占めます。また国民も納税意識がとても低いため、誰もがどうにかして脱税をしようとします。そうすると政府は税収が少ないため、社会インフラ投資が出来なくなります。しかし国民が税金を払いたくないのは、政府の役人が税金で私腹を肥やしたり、賄賂体質がとてもひどいからということもあり、どうにも解決策が見つからない状況です。ウルグアイでは飲食店で食事する場合、クレジットカードで払うと8%割引ということがありました。クレジットカード払いだと売上がクリアになり税金をきちんととれるので、政府がクレジットカード払いで税金を優遇しているためでした。そもそも先進国でも富裕層優位な不公平な税制となっていて、私も不満はありますが、脱税をしようとまでは思いません。

< 変わらない世界の構図 >
これらの私の経験から、新興国には先進国になれない理由があり、おそらく先進国と新興国に分かれるこの世界の構図は今後も大きく変わらないと考えるようになりました。新興国のビジネスは、人々の時間の感覚がゆっくりなので、急速に成長することはとても難しいことですし、そもそも新興国では幸せの追求における優先順位が異なると思います。これが悪いということではなく、逆に世界幸福度調査などではラテンの国々はいつも上位を独占していますので、ラテンの考え方は幸福の追求においては他の先進国よりも優れているとも言えます。私も個人的にはラテンの国の人々の生き方が大好きなのですが、投資先となると話は別です。投資した資本を最大限に活かしてくれるのは、先進国(アングロサクソン系)になります。

以上により私は自分の投資ポートフォリオにおける新興国の比重はとても低くしています。


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