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韓日ゲーム翻訳のクレジット記載と言及許可について思うこと

2023/06/06追記
クレジット記載あり、しかもSNSで言及許可ありの事例が出ました! 『のらねこものがたり2』は翻訳会社갤럭틱 엔터테인먼트(Galactic Entertainment)を通じてフリーランス韓日翻訳者のふじこさんが日本語翻訳を担当なさいました。この事例でどのようにクレジット記載が実現したのかをこの記事の最後に追記しましたので、ご参考にどうぞ。
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インディーゲームの会社との直接取引で言及許可を得られた事例として見ていただきたいので、私のポートフォリオも公開しました。クレジット記載が10タイトル、それ以外に言及許可ありが9タイトル。韓国インディーゲームだけでも合計19タイトルです。

 韓国のゲームの日本語ローカライズで、クレジット記載・言及許可ありの事例はまだ少ないのではないでしょうか。日本にあるパブリッシャーが手がけた韓国インディーゲームにいくつか例があるのみ。今後も日本のパブリッシャーが手がける韓国インディーゲームが増えれば、解決しそうですが…

 私の知る範囲では、韓国のゲーム会社の日本現地法人の社内翻訳者として働いていた方も言及許可がなく、フリーランスで韓国の翻訳会社から仕事を受けている方も言及許可がないと聞いています。

 私は翻訳会社を経由せずにゲーム会社と直接取引するという珍しいことをやっていまして(そもそも韓国語が専門ではないから韓日翻訳のトライアルは受けようがない)、韓国のパブリッシャーCFKさんから「日本語監修」という形で直接仕事を受けています。2020年に『Hotel Sowls』を有志翻訳したあと、そのNintendo Switch版を手がけたCFKさんからお声がけいただいたのが始まりです。CFKさんからは、作業をしたタイトルは(何か事情がない限りは)どれも言及していいですと言われています。

 さらに、私は2022年7月から韓国インディーゲームの日本での展開を個人でサポートする活動を始め、プレスリリース配信を中心に、必要に応じてストアページやゲーム内テキストの翻訳(または校正)などのお手伝いをしています。この場合クライアントにあたるのはゲーム開発スタジオで、しかも1~4人の小規模なチームや学生のチームと取引することが多いため、今までどのタイトルも言及許可あり。一部はクレジット記載もされています。

 「言及不可」というのは韓国の翻訳会社の慣例であって、少なくとも私と交流のある開発者さんたちやパブリッシャーさんは、言及許可とクレジット記載を当然のことのように思っているという印象です。あっさり承諾を得られます。

 この記事は、フリーランスの韓日ゲーム翻訳者さんが「言及許可のある案件を探したい」というときに参考にしていただければと思って書くことにしました。
 私の動機は純粋にインディーゲーム開発者を応援したいということで(私自身も昔はゲーム開発現場にいたプランナーでした)、よりよい形でゲームがユーザーに届くように、フリーランス翻訳者が言及許可を得て実績を公表し、「日本語翻訳を誰に依頼すればいいのか」が一目瞭然になったらいいのにと思っています。韓日ゲーム翻訳でも、ゲームファンの間で「好きな翻訳者さん」の名前が挙がるようになってほしいのです。
 「翻訳したいインディーゲームってどうやって探してるんですか?」といった質問でしたら、いつでもご相談ください。良い条件の案件が転がっているわけではありませんが、各自で開発スタジオに声をかけてみるのはやってみていいと思います(自社パブリッシングの小規模なインディーゲームは話が早いけれども、それ以外は交渉が難しい)。
 私はPRの仕事を通じて韓国に知り合いがどんどん増えていっていますので、何かの形で翻訳者さんたちのお力になれるかもしれません。

 言及許可があれば翻訳者にとってメリットがあって、仕事が来るようになったり、単価交渉がしやすくなったりするはず。一説には、英日ゲーム翻訳の単価の相場は昔より上がったらしくて、近年の動向としてインディーゲームを中心に「クレジット記載」「言及許可あり」の案件が増えて、ベテラン翻訳者さんがインディーゲームによく関わるようになったからではないかとも言われています。それと同じことが韓国インディーゲームでも可能かもしれませんね。

 ただし、韓国インディーゲームの翻訳実績を「韓国の翻訳会社」がどう評価するかは、よくわかりません。翻訳者にとってメリットと言えるほどの効果が本当にあるのかどうか? しかも、日本語翻訳の費用がまともに出せるインディーゲームはそれほど多くないように見えます。ゲームの数も、フリーランス翻訳者の数も英日ゲーム翻訳ほど多くないでしょう。

 まだ可能性を模索中の段階ですが、ゲーム会社とフリーランス翻訳者さんがうまくつながれる機会をひとつでも作れたらと思います。

2023/04/11追記
インディーゲームの英韓翻訳(EtoK)の実績が多いBADA GAMESという会社がありまして、公式サイトの「HISTORY」のページに翻訳者名が掲載されている案件が多数あります(ただし、韓日ゲーム翻訳の実績は記事執筆時点で『Critadel』のみ)。
創設者のBada Im氏本人が翻訳者でもあり、翻訳者のことをよく考えていると、Bada Im氏のご友人から聞きました。
BADA GAMESは、架け橋ゲームズが日本展開のサポートをするインディーゲームの韓国語翻訳を担当するパートナー的な存在らしいです。こういう会社が韓国にもあるというのは希望が持てますね。

2023/06/06追記
『のらねこものがたり2』の事例は、韓国インディーゲームの日本語翻訳で、言及許可ありの案件を探している方にとって参考になるかもしれませんので、ここに記載しておきます。

判明しているのは、今回ゲーム開発者が「クレジット記載したいので、翻訳者の名前を教えてください」と翻訳会社갤럭틱 엔터테인먼트(Galactic Entertainment)に問い合わせたら、教えてくれたということです。(実は、翻訳者の名前を教えてくれない会社があって、韓国ではどちらかというと、教えない会社のほうが多いようです…)

ということは、クレジット記載を実現する方法としては、
・問い合わせがあれば翻訳者の名前を教えてくれる翻訳会社に登録して案件を受ける。前例として、『のらねこものがたり2』の日本語翻訳を担当したGalactic Entertainmentと『Lost Ruins』の日本語翻訳を担当したMayflower Entertainmentの2社が確認できています。

・ソースクライアント(そのゲームの開発会社またはパブリッシャー)が「クレジット記載したいので、翻訳者の名前を教えてください」と翻訳会社に問い合わせる。これは、翻訳者がソースクライアントに直接連絡してお願いすることはできませんので、自発的に動いてくれるのを待つか、または案件を受けるときに交渉しておくということになります。

・クレジット記載されれば、同時に「履歴書に書いてもいい」という言及許可も出るでしょうけれども、「SNSでの」言及許可が出るとは限りません。想像ですが、翻訳会社としては、ソースクライアントであるゲーム会社の目を気にしているのかもしれません。翻訳者がSNSで「自分が翻訳しました」と言及したとして、その翻訳者の日頃の言動や、翻訳作品の紹介のしかたによっては、迷惑がかかってしまうこともあるでしょうから。

・クレジット記載が実現したら、SNSで言及してもいいかどうかを翻訳者から翻訳会社に問い合わせてみるといいでしょう。これでOKが出れば、ようやく自分の翻訳作品だと公言できることになります。
『のらねこものがたり2』の場合は、ふじこさんがツイートなさっていますから、どこかの段階で言及許可が出たということになります。

以上です。
補足として、Galactic Entertainmentがどのような条件でフリーランス翻訳者と契約しているかは不明です。ご興味がある方は各自で問い合わせてみてください。
1. 履歴書(職務経歴書)に書いてもいいかどうか
2. クレジット記載されるかどうか
3. SNSで言及していいかどうか

この3つそれぞれの可/否を確認しておいたほうがいいでしょう。

2と3はソースクライアントの方針次第なところがあるので、案件の打診があってからでないと翻訳会社には決められないかもしれません。ですが、案件を正式に受けるまでに2と3の可否についても翻訳会社と相談しておくのがいいと思います。開発者があっさりOKしてくれることもあるので。

私の知る範囲では、インディーならクレジット記載に協力的な開発者さんはたくさんいる印象です。実際に、翻訳者の名前を教えてほしいと問い合わせた開発会社もいくつか確認できています。今後、私は知り合いになった開発者さんにクレジット記載にご協力いただけるようお願いしてまわります。
参考までに、『のらねこものがたり2』開発チームの中心メンバーであるHACOBEさんが私のツイートにリプライをくださったのを掲載しておきます。とても理解のある方で助かります。

2023/06/15追記
ふじこさんがGalactic Entertainment経由で依頼を受けた『Lita's Dream』の日本語翻訳も開発者さんの協力でクレジット記載されてから、言及許可が出ました。




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