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#94 シェラトンビュッフェ300円!ハイパーインフレのグルメ天国@ジンバブエ・ハラレ

2001年10月15日

ビクトリアフォールズからバスで8時間かけてジンバブエ第二の都市、ブラワヨへ。更に夜行列車に乗り換えて、翌朝ジンバブエの首都ハラレに到着した。ハラレ市街の中心部には高層ビルが立ち並び、ケニアやエジプトには及ばないが、訪れてきたアフリカの国々の中でも比較的発展している印象を受けた。

この国はかつてイギリス人のケープ植民地首相、セシル・ローズにより植民地化されて、ローデシアと呼ばれていた。イギリスはアフリカの植民地支配において、マラリアの心配がなく気候の良い高地を首都に選んだ。ハラレも例外ではなく、標高1500mで空気はカラッと乾いており、夏は日差しが強いが、日陰は涼しく快適。町中にジャカランタの花の紫色が満開に咲き誇り、日本の桜の季節のようだった。

旅を始めてから、いつの間にか一年が経過していた。タンザニアから移動ばかりの生活が続いて疲れが溜まっていたので、ハラレで少し休憩をすることに決めた。滞在を決めたもう一つの大きな理由は、物価が異常に安かったことである。

1980年にアフリカで一番最後に独立したジンバブエ。黒人のムガベ政権が1990年以降、白人農場を強制接収する政策を開始。英米から経済制裁を受けて経済が滞り、インフレが激しくなっていた。ジンバブエ・ドルの価値は米ドルに対して急速に価値を失っており、逆に米ドルを闇レートで両替すると全てのものが安く買えた。

当時はまだ白人の個人経営する商店やレストランが沢山あったし、欲しいものは大抵手に入れることが出来た。安宿パーム・ロック・ヴィラには、ドル高の旨みを満喫中の日本人バックパッカーたちが長期滞在していた。

僕らもその恩恵にあやかろうと、着いて早々にシェラトン・ホテルのランチ・ビュッフェへ直行。タクシーで威風堂々とそびえ立つホテルの入口に乗り付けると、ホテルマンたちが丁寧にレストランへと案内してくれた。一応襟付きのシャツを着たものの、全体にくたびれた服装なので、5つ星ホテルに相応しくないことに変わりなかった。

静けさ漂うレストランの窓から、隣のプールで泳ぐ白人のお姉さんが目に入った。彼女たちは僕らと違って本当の金持ちなのだろう。ビュッフェは、サラダが5、6種類、パテが2種、赤ピーマンのクリームスープ、種類豊富なパン、メインが魚と鳥のフライ、そして山盛りのデザートが陳列されていた。抗えず昼間からビールを飲んで、貧乏旅ではあり得ない贅沢をしていることに背徳的な快楽を味わった。しかもこんな贅沢が、ハイパーインフレのお陰で、たったの300円!で実現できたのだった。

翌日のランチは宿仲間で連れ立って、評判のイタリアンレストラン「ギャビーズ」へ。おしゃれな内装の店内は白人や黒人の客で込み合っていた。キノコとハムのクリームソースの手打ちパスタは、コクのあるソースが麺によく絡み、日本のイタリアンの平均水準を越える絶品なのに、たったの100円!デザートに頼んだアイスクリームのクレープ包み。生クリームたっぷり、チョコレートソースがかけられて、口に含むと柔らかいアイスクリームが溶けていった。それが50円!

みんなで「ここはアフリカなんだよね?」「俺たち貧乏旅行者だよね?」と何度も確認し合ったほど、いままでの質素な食生活からはかけ離れたグルメな日々が始まった。全てはドル高のお陰であるが、このグルメ天国から当分離れられそうにない。

週末土曜日の夜、宿の日本人が街で会った海外青年協力隊員から美味しいとの評判を聞きつけて、ハラレ郊外にある中華料理店、長城飯店へタクシーで駆けつけた。週末のディナーを楽しむ白人客で賑わう中、僕らも ビールを飲んで、6人で丸テーブルを回しながら、牛肉オイスターソース、水餃子、焼き餃子、鳥やきそば、チャーハン、もやし炒め、回鍋肉、酢豚、デザートを取り分けて食べた。お腹いっぱい食べてお会計一人400円ぽっきり。今度は予約して点心を食べに来ようと決めた。

ある夜は、宿でわんこステーキ大会が開催された。昼間、郊外のショッピングモールにあるスーパーに出掛けて、牛肉をキロ買い。1キロ辺りわずか120円は、日本で同質の肉の10分の1くらいの破格である。宿のキッチンでレアステーキを焼いて、食べたいだけバクバク食べまくった。安いから、誰が食べ過ぎだ、などとひがむ人はいないのだった。

他にもギリシャレストランや別の高級ホテルのディナーコースなど選択肢も豊富だった。カイロのサファリホテルに習い、日本人同士で食生活向上委員会なる組織も発足。新たなレストラン探索に乗り出したのだった。

ハラレ郊外の小さなゲームリザーブではホース・サファリも格安で楽しむことができた。近くに高層ビルが見える不思議な光景の中、ポニーではない立派な馬に跨り、ガイドを先頭に7頭で馬小屋を出発。広がる草原にシマウマやガゼルなどの草食動物が佇み、遠くには象がいて、森に入るとキリンが2頭。僕の乗った馬は近づいてきたシマウマに脅えて暴れ出したので焦った。1時間ほど自然の中を歩き回り、馬の上から間近に動物を眺めるのは、車とは趣向が変わって楽しかった。気になるお値段、たったの150円!

(旅はつづく・・・アフリカ縦断終了まであと58日)
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