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#97 洞窟で4泊5日の原始人生活@ジンバブエ・チマニマニ国立公園

2001年11月4日

山籠もり4日目。僕ら5人とアレキサンダーは山小屋に残る二人に別れを告げて、テリーズケイヴと呼ばれる洞窟へ引っ越しすることになった。沢を南へ下った。10年前に泊まったことがあるアレキサンダーを先頭に進んだが、途中で道がいくつも枝分かれしており、正しい順路を見つけるのが難しい。3時間の予定が4時間経ち、へとへとになって、やっと目的地の洞窟に到着。

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テリーズ洞窟

直径15mはある巨大な岩の真下、10人は楽々と寝られるスペース。先客が置いてくれたのだろう、丁寧に藁まで敷き詰めてあった。アレキサンダー曰く、この洞窟は古来より神聖な場所で、ローズクォーツでできているから、ヒーリング効果が絶大。一晩寝るだけで一年分癒されるとのこと。何だか怪しい通販の宣伝文句のようである。

ローズクォーツのお陰か、体内の遺伝子が原始時代を思い出して懐かしんでいるせいなのか、アフリカの先住民がかつてここで暮らしたことがあったからなのか。理由はともかくそこにいるだけですごく落ち着き、居心地が良かった。みんなすっかりこの洞窟が気に入り、食料が尽きるまで原始生活をしように決めた。

日暮れが迫ってきたのでまず薪拾い。木がほとんど生えていないので一番苦労する作業だったが、人海戦術で一晩分の木を集めて夕食を作り始めた。今晩のメニューはご飯とパスタを混ぜてトマトソースをかけたエジプト庶民の料理コシャリ。キャンプで食べるご飯は何でも旨い。夕食後はそれぞれが思い思いに太鼓を叩いたり、お茶を飲んだりしてのんびりと過ごした。

山籠もり5日目。今日もいい天気。川の水で顔を洗い、朝食。ゆっくりと本を読んだりして一日を過ごした。夕方、天候が荒れて嵐となり、激しい雨は雹に変わった。自然に逆らえないので、雨風が吹き込むことがない安全地帯である洞窟の中でじっとして収まるのを待った。

穴の外に作ったかまどが使えなくなったので洞窟の中に新しく作ることになった。カイロ以来の旅友、西村さんはかまど作りが上手で、あっという間に石を組み上げた。夕食は久々の肉料理。コーンビーフを野菜と炒めてサザ(ジンバブエ人の主食、とうもろこしの粉を水と一緒に加熱しながら練り上げたもの)と食べた。 毎晩、月は少しずつ遅く昇ってきたが、この洞窟は山に囲まれているため更に遅かった。

山籠もり6日目。アレキサンダー、M君、しゅうすけ君と上流の滝に行って、裸になって泳ぎ、滝に打たれ、日向ぼっこして過ごした。ギリシャのミコノス島で裸族になりそこねたので、初めての裸族体験だったが、大自然の中で開放感が最高だった。

食料が少なくなってきたことに危機感を覚えた僕らは、この山で調達できるものはないかと作戦会議。雀を捕まえようと、コーンフレークを置いてその上にかごをのせ、木の棒でつっかえをつけてみた。棒を紐でひっぱるとかごが鳥の上に落ちる単純な罠である。何も知らない雀は餌をついばんだが、棒を引くとすぐに飛び去りあえなく失敗。

川に魚はおらず、小さな黒い蛙を見つけただけ。蛙も貴重な蛋白源だといって捕まえようとしたが、手掴みで頑張っても、僕らを嘲笑うかのように蛙はするりと手の間を逃げていき、一匹も捕まえることができず仕舞い。唯一自然からもらった食料はシダの若芽。灰汁を抜けば食べられることを確認済みだったが、この洞窟の回りには成長してしまった羊歯しか生えていなかった。

山籠もり7日目にして、いよいよ食料は底を尽きてきて、会議した結果、”今日が洞窟生活最後の日だ”と結論が出た。この場所、この原始人生活がすっかり気に入ってしまった僕らは、名残惜しむように一日を過ごした。

一人で川に行って裸になり体を洗った。水は冷たいが太陽が照っているので気持ちいい。 夕方、別の洞窟に泊まっていたヒッピーのニックとオーリーが遊びに来てしばし談笑。翌日の朝食に回すため、夕食はほんの少しだけ。ミロの粉を舐めて空腹を凌いだが、満腹になれないのがこんなにひもじいとは思わなかった。

山籠もり8日目。コーンビーフの缶詰を2つ贅沢に使って、腹一杯に朝食を食べた。居心地の良かった洞窟にさよならをして、すっかり軽くなったバックパックを背負い下山。3時間で公園入口に到着すると、初日の夜中に遊びに来たロバが僕らを待っていた。

アレキサンダーの車で村に戻る。山中で7泊も文明から離れて生活していたので、人を見ただけで「あっ!村人だ」と驚き、牛を見つけただけで「あっ!家畜だ」と叫んでしまった。

ヘブンロッジに戻り、風呂に直行して体の汚れを洗い流した。しかも、この宿にはサウナが付いており、みんなで汗を沢山かいてすっきり。水分が欲しくなったところで久々の冷たいビール。料理上手なシェフがこしらえた、ローズマリーのハーブ液で漬け込み調理したポークチョップは絶品だった。下山して久々の肉ということもあるが、ジンバブエの豚肉は日本より格段に美味く、脂身まで美味しく食べられた。みんな腹一杯食べる幸せを実感して、大満足の夜だった。

(旅はつづく・・・アフリカ縦断終了まであと38日)
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