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#90 ココナッツ尽くしの家庭料理に舌鼓@タンザニア・ザンジバル島・ジャンビアーニ


2001年9月30日

ザンジバルを去る南アの3人ともお別れして、また一人になった。彼らはTシャツをプレゼントしてくれただけでなく、リーズルが「もしケープタウンに来るなら、是非私の家に泊まってね」と嬉しいお誘いをしてくれた。

宿をチェックアウトして、小型トラックの後部を改造した乗り合いバス「ダラダラ」で東海岸の町、ジャンビアーニに向かった。現地の人達と荷物がギュウギュウに詰め込まれているが観光客は自分だけ。バスの天井から吊り下げられたスピーカーから、サッチモの「What a wonderful world」が流れてきた。

宿のテレビではCNNが「テロに対する戦争」と銘打ったプロパガンダで、9・11に対するアメリカの報復について連日煽っていたが、この島にはゆっくりとした人々の営みの中、歌詞と同じフレンドリーな笑顔、青い空と白い雲、緑の木々があった。体を車に揺られるに任せながら、なんて素晴らしい世界なんだと、歌の意味を噛みしめるように心で反芻した。この平和な島にぴったりで、自分が映画のワンシーンの中にいるようだった。

ジャンビアーニに到着して、閑散とした浜辺を歩いて安宿を探していると、ガイドの男の子アッバス君に出会った。彼の紹介で宿を見つけただけでなく、お昼ごはんもご馳走になることになった。

彼のお姉さんの家にお邪魔して、野外のキッチンを覗き込むと全部炭火で調理している。魚のココナッツ煮とご飯、チャパティ、ジャガイモのココナッツカレー。チャパティは出来立てでアツアツ、ボリューム満点。手作りの家庭料理は味だけでなく、心にも染みて美味しかった。お姉さんの絶品料理をすっかり気に入り、片言のスワヒリ語と英語で「夕飯は蛸のココナッツカレーが食べたいな♡」とリクエストして別れた。

ビーチは遠浅で、水平線の際、何キロも先にサンゴ礁のリーフが白波を立てていた。浜からリーフまではほとんど白い砂地なので、海は見渡す限りのターコイスブルー。人生で見た最も美しいビーチの一つだった。浅すぎて泳ぐには適していなかったが一泳ぎした後、アッバス君の案内で近くの森に住むコロバスモンキーを見に行った。

夕食はお姉さんが約束通り、蛸のココナッツカレーを準備してくれていた。家に電気がないので小さなアルコールランプの明かりの中の食事。飾り気のない食卓が、かえって家庭の温かさを感じさせてくれた。

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翌日、アッバス君と漁師ラマの舟に乗りスノーケリングと釣りに行った。広い浅瀬ではアジアに輸出される海草が養殖されており、海草の世話は女性の仕事だ。色とりどりの布を腰に巻きつけた女性たちが、かごを頭に載せて海で作業していた。

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舟は沖合に停泊しているので浅瀬をしばらく歩いて乗船。バランサーが両脇に付いた、マンゴの木をくり貫いた丸太舟は、その名も「Everything is cool 全てがクールだぜ号」。セメント袋をつなぎ合わせた帆を張ると、音も無くスイスイと沖へと進んでいき、気分が良い。手を海に突っ込んで波を立てながら、眼下を通り過ぎる透き通った海中を飽きずに眺めた。

沖に出て錨を下ろし、僕とアッバス君はスノーケリング、ラマは釣り。ダイビング天国の紅海と比べれば魚の量は少なかったが、浅いのでサンゴ礁すれすれに泳げるから魚が目の前に見える。トリガーフィッシュ(かわはぎ)の赤ちゃんたち、黄、青、白の体に渦巻きのような模様が入ったバタフライフィッシュ(チョウチョウウオ)、ピンクの長い触手のイソギンチャクにクマノミがうずくまってじっとこちらを見つめている。海ぶどうのような海草は鮮やかな緑色が綺麗だった。魚ウォッチングよりも鮑か蛸を採る気満々だったが、収穫は誰かが落としたナイフが一本のみ。夢中になって潜っていたら体が冷えてきた。

舟に戻るとラマは次々と面白いように魚を釣り上げていた。竿も無く、仕掛けをつけた釣り糸を投げ込んで、アタリにタイミングを合わせるだけ。獲物を釣り上げるたびに、彼が唯一知っている日本語で「コンバンワー」と叫ぶのが可笑しい。

あまりに簡単そうなので挑戦させてもらった。ゴカイを二つの針に付けて放り投げる。すぐにヒット。タイミングがずれてばれた。餌をつけ直して投げ込む。またすぐにヒット。ビクビクっという手ごたえが糸から伝わってきて楽しい。今度は無事に青いカラフルな15cmくらいの小魚釣り上げた。この調子でどんどん釣れると思っていたらタイミングがつかめず逃がしてばかりで、しまいには根がかり。潜って自分で岩にひっかかっていた針を外した。

釣りは諦めて岸に戻ることにした。舟の舳先に座り水の上を滑る爽快感を満喫した後、舵を取らせてもらった。本当は帆から伸びる紐も自分で調節するのだが、それはラマに任せて操縦気分を楽しんだ。

昼飯は先程釣り上げた魚を、ラマの家でご馳走になった。岸から2分ほど内地に彼の小さな家はあり、狭い庭には魚と蛸が干してあった。魚は背開きにしてあるのが日本と違って興味深い。ラマは新婚2ヶ月のホヤホヤで、痩せたラマとは対照的な太った奥さんが調理してくれた。干してあった蛸を軽く炒め、釣った魚をフライにしてもらい、ココナッツミルクで炊いたご飯とともに食べた。奥さんは調理を済ませると、ゴロリと昼寝を始めてしまった。

宿に戻ると暇なレストランの従業員の男に声をかけられて、バオと呼ばれるゲームを教わった。8×4のマスに小石が入れてあって、石を取り合うゲーム。一度始めるとなかなか終わらないのが、時間のゆっくり流れるアフリカらしい。

夕食は再びお姉さんの家で、頼んでおいたピラウと蛸の唐揚げにジャガイモのココナッツカレー、チャパティもついて大満足。今日は満月だったが、風が夜になって強く吹いたので、のんびりと月見はできなかった。

ジャンビアーニには観光客はほとんどいなかったが、地元民がかまってくれて楽しい時間を過ごせた。そして何より、獲れたてシーフードとココナッツミルクの最強コンビで、美味しい家庭料理を堪能させてもらったことが思い出深い。翌朝、2泊したジャンビアーニを去り、ダラダラでストーンタウンに戻った。

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ザンジバル最後の夕日を惜しもうと再びお気に入りのカフェ、アフリカンハウスへ。カンパリソーダをチビチビと飲み、沈む太陽を眺めながら、出会った人々との時間、楽しかった島での出来事を反芻した。

これから再びアフリカ内陸部へ向かうので、しばらくシーフードとはお別れ。ナイトマーケットで、食いだめするようにピザ、海老と貝の串焼き、チャパティ、サトウキビジュースを食べ歩き。帰りの船は正規の旅行者用大型フェリー。行きとは真逆の快適な船旅で、揺れを感じることもなく一晩でダル・エス・サラームに戻ってきた。

(旅はつづく・・・アフリカ縦断終了まであと74日)
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