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【訪問看護の人材育成】役職・階層(レイヤー)を設定する際に重要な2つのポイント

ご存知の通り、訪問看護はチームとしての連携と協力が不可欠な職場です。

その中で、役職の設定と適切なマネジメントの実施は、事業の発展とスタッフの成長に深く関わります。

しかし、その役職の設置が不十分だと、組織内に捻れが生じるリスクが高まります。

これにより、スタッフが自分の責任を果たせなくなったり、最終的には事業全体の成長が阻害されることも少なくありません。

この記事では、訪問看護事業における役職の正しい設定のポイントと、それを怠ることで生じるマネジメントの捻れの原因、そしてそれを防ぐための対策について掘り下げていきます。

訪問看護経営者(えん訪問看護ステーショングループ)である私が実践している内容になっているので、役職を設定する立場にある人、役職を目指している人はぜひ参考にしてみてください。


訪問看護における役職・組織階層(レイヤー)とは?

まず、訪問看護における役職と組織階層(レイヤー)について押さえておきましょう。

訪問看護は管理者の設置は義務付けられていますが、その他の役職は義務ではないため、各会社それぞれで設定しているかと思います。

ちなみに、弊社の役職は「スタッフ→リーダー→管理者(所長)→エリアマネージャー(役員)→代表」という階層をとっています。

各役職の主な役割は以下の通りです。

  • リーダー:契約やスケジュール調整、管理職の補佐等

  • 管理者(所長):事務所の運営全権

  • エリアマネージャー(役員):複数店舗の管理、採用戦略、事業展開戦略等


各役職、どのくらいの人数を設置するかも会社それぞれですが、周りを見てみると、1事業所10人程度で管理者1名、リーダーが看護とリハビリに各1人ずつという組織が多いように感じます。


この組織、一見綺麗な組織図のように見えますが、一方で管理者(所長)から以下のような言葉もよく聞きます。


「リーダーが育たなくて仕事を任せられない」


10人程度の組織であれば正直管理者が見れてしまうため、管理者が口出し過ぎてリーダーが育ってないという状況です。

もちろんリーダーに抜擢しているスタッフの素養もありますが、単に仕事を任せられていない場合がほとんどです。


今回は10人規模の事業所を例に出しましたが、規模関わらず、「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ(山本五十六)」という関わりや、「役割が人を育てる」という認識を持ち、役割を明確にして責任を持たすということが大事になってきます。


役職を設定する際に重要になる2つのポイント

では、訪問看護において役割を設定する際に重要になるポイントをお伝えします。

弊社が役職設定で意識しているポイントは以下の2つです。

  • 「2段階以上の階層を跨いでマネジメントしない」

  • 「役職を兼任させない(最大2階層まで)」


2段階以上の階層を跨いでマネジメントしない

まずは、「2段階以上の階層を跨いでマネジメントしない」です。

例えば弊社の場合でいうと、「スタッフ→リーダー→管理者(所長)→エリアマネージャー(役員)→代表」という階層をとっているので、エリアマネージャーがスタッフをマネジメントしてはならないということです。

これは組織論においては至極当然のことでもありますが、医療・福祉業界は何階層も跨いでマネジメント介入してしまうことが多いです。

理想を言えば1段階でやり切れたら良いのですが、拡大期であったり組織(店舗数)が急増している際は2段階でも良いと考えています。


この点、「代表の私はスタッフと話さないのか?」というご指摘があるかもしれませんが、雑談や業務に関わる多少のフォローはします。

しかし、マネジメントでの深入りは基本的にはしないというニュアンスで理解していただけたらと思います(緊急度が高い、代替手段がない場合は除く)。

また、マネジメントで介入した結果は、必ず間に立つ役職者にフィードバックをすることも重要です。

役割の意識付けにもなりますし、あくまでも実質の評価者は直属の上司であるため、必ずそこの顔は立てるようにしています。

このような過程を踏むことで、役職に対する責任感が植え付けられるとも考えています。

私の役割である代表(兼四国外以外のエリアマネージャー)としては、現場の役職者が育てば育つほど1事業所の成果が出ますし、マネジメント労力が少なくなるため、新しいエリア開発に着手ができるようになります。


役職を兼任させない(最大2階層まで)

次は「役職を兼任させない」です。

私の経験談でもありますが、役職の兼務は階層における権限が不明確になるので辞めた方が良いです。

以前に役員として経営していた訪問看護で、退職と新規出店が重なりリーダー・管理職・エリアマネージャー(役員)を一時的に兼務していたことがありますが、正直組織としては崩壊していました。

上記のような経験もあり、現在は最大でも2階層までの兼務としています(リーダー兼管理者(所長)など)。


現在35-40人程度のスタッフしかいないため(2024年1月現在)、上位職への昇級になったとしても、今管理している人数に毛が生えたようなものです。

そのため、一時期に役職を兼務して、組織が大きくなったタイミングで階層の切り離しをする予定です。

このような先を見据えての兼務だったとしたら、最大2階層まではOKと考えています。


「役割が人を育てる」


相手は人なので、上手くいくことも上手く行かないこともありますが、役職者として任せたのであれば、会社として上司としてチャレンジを暖く見守り、時には厳しく叱ることが大事になってきます。


階層(レイヤー)を飛び越えたマネジメントをした際に起こる悲惨な結末

では次に、その階層を飛び越えてマネジメントをした際に起こる悲惨な結末をお伝えします。

このようなマネジメントをしている会社は、以下のような行動・発言が日常化しています。

『社長にいつも相談』
『上に決めてもらおう』
『管理職が私が決めた訳じゃないから』


正直、このような行動・発言が日常化している組織・会社は危険です。

確かに問題が発生した際、力がある上司まで飛び越えて相談した方が解決は早いでしょう。

例えば私(社長)が、エリアマネージャー、管理者(所長)に次ぐリーダー(3階層目)の悩みを解決をするのは難しい話ではありません。

リーダーの悩みはある程度把握していますし、次の課題プロセスも作れます。

しかし、そこに手を出してしまうと、管理者(所長)やエリアマネージャーは「社長がやってくれるからこの課題は私たちのじゃないよね?」という認識になってしまいます。

また、管理職としての経験を積む機会を奪っていることにもなりますし、次のリーダーが出来た時も「それは社長の仕事だよね」という話にもなってしまいます。

文字にしてみると「確かに」と思う人も多いかと思いますが、正直10人ぐらいの会社(社長、管理職1人、残りスタッフ)だとあるあるです。


このような状態が浸透している会社の管理職は、何か問題があった時に『上が決めた』と言い出します。

この状況で『上』という表現をする人は、管理職である自分と会社を切り分け、かつ会社や組織に不平不満が多い人です。

そしてこういうマインドの人は、高確率で組織を崩壊に導くか辞めていきます。


大事なのは管理職として決めれる範囲(権限と責任)をしっかり全うすることです。

つまり『上』という言葉で片付けるのではなく、『このケースは決定権がないので、上司(社長)に相談して判断して返答するね』というのが役職を全うするということです。

本来役職(レイヤー)の『権限と責任』はセットであり、それぞれの職位に合わせて決まっています。

会社の最終決定と責任者は代表取締役です。

捻れたマネジメントをしてしまうと上記の考えが混在して管理職が機能しなくなり、組織が伸びないか崩壊しやすいです。

訪問看護事業も、今お伝えした点を意識して組織創りをしていくと、自立(自律)した組織になっていくと考えています。


訪問看護のマネジメントは『人の振り見て我が振り直せ』

今回、役職設定についてお伝えしましたが、最後に役職についた際に気をつけておくべきことを挙げておきます。

よくある気をつけるべき点は以下の通りです。

  • スタッフの時に管理職に文句言ってた人が、管理職になると同じことをしてしまう

  • 知り合いのステーションの内部状況を他人事として捉える

  • 管理職同士でも建前で過ごしてしまう


スタッフの時に管理職に文句言ってた人が、管理職になると同じことをしてしまう

スタッフの時、管理職に文句を言っていたのに、管理職になったら文句を言われるのが辛いみたいなパターンは多いです。

しかも、この手のケースはプライドが高めな人が多いため、弱音を吐けずに強がってしまい、最終的にメンタル病むという構図にもなりやすいです。

自分がやられて嫌なことはしない、因果応報を肝に銘じておきましょう。


知り合いのステーションの内部状況を他人事として捉える

管理職についたのであれば、他のステーションで起こる問題は「明日は我が身」として捉えるべきです。

このような思考を持っていれば自然と解決策を考えますし、共通することがあるため学べることは非常に多いと考えます。

訪問看護の管理職であるならば、2-3人相談先を作っておくと良いでしょう。


管理職同士でも建前で過ごしてしまう

管理職同士には、建前ではなく是非リアル(正直・本音)の話し合いをして欲しいと思っています。

「○○の場合どう考える?」や「どう対応する?」など、自社・他社問わず定期的にフィードバックし合う環境を構築できるのがベストです。

訪問看護のマネジメントは勉強出来る機会が少なく、確立されたものもないため、どうしても経験則になっていってしまいます。

事業所の人数によってはマネジメントを必要としないところも多いです。

そんな中で同じ悩みを持つ仲間の存在は超大事です。


訪問看護は『人』でしかないため、事業所で起こる問題は法人が違えど同じ内容が多いです。

だとすると、その問題を起こらないようにするためには類似の事象から学んでおくしかありません。


『人の振り見て我が振り直せ』


この言葉を常に念頭に置いて、日々の業務に向き合って欲しいと思っております。


まとめ

訪問看護における役職の付け方とマネジメントは、組織の成長に直結する重要な要素です。

適切な役職配置と、役職を飛び越えたマネジメントを避けることで、スタッフが自らの役割を果たし、責任を持って成長できる環境を作り上げることができます。

役職とマネジメントのあり方を再考し、より強い組織を築いていけるキッカケになれれば幸いです!


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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