これからリーダーになる人に知ってほしい「新しい働きかたを実現するチーム」づくり5つのポイント
こんな働きかたのチームから良い成果が生まれる気は、しませんよね。
チームを強くしたいリーダー、これからリーダーになる人には、こんなチームづくりを目指してほしいものです。
社内だけでなく、お客様や取引先ともひとつのチームのように動き、何かをつくり出すという「新しい働きかた」は、すでにあちこちで現実のものになっています。
これまで「チーム」という言葉を使うときは、暗黙の前提として、会社の中のことを指していました。けれど、実はもうとっくに、社外の取引先とパートナーシップを組んで、仕事を進めるのは当たり前になっています。
先進的な企業は、顧客すらもチームの中に取り込んでいます。
ヤッホーブルーイング(よなよなエール)の「超宴」は、ユーザー巻き込み型のイベントです。Soracomは、サービス立ち上げ直後からユーザーコミュニティを活かした製品開発をしていたそうです。ネスカフェ アンバサダーやKintoneエバンジェリストは、ユーザーや取引先など社外の方が製品・サービスを積極的に推奨する仕組みです。
これらはすべて、提供者と顧客という関係を越えて、あたかも同じチームの中に顧客や取引先も含んでいるかのように活動することで、新たな価値や強い結びつき、そしてビジネス成果を生み出している例と言えます。
冒頭で描いたように、これまで組織の枠に縛られていることで、仕事の楽しさや、働く意味を実感できない人たちが多いように見えます。
でも、「新しい働きかた」を実現したチームでは、仕事の楽しさや働く意味を実感できるのです。
新しい働きかたを実現するチームづくり5つのポイント
この記事では、そんな「新しい働きかたを実現するチームづくり」の5つのポイントを解説したいと思います。
1. チームメンバーは社内の人だけではない
社外の人まで含めて、チームとして、いかにチームワークを発揮するか。
これが、企業の競争力につながる世界は、もうすっかり現実のものになっている。こういった世界では、「チーム」に社内メンバーしか含めないという考え方はそぐわない。
発注者と請負業者という関係ではなく、同じチームメンバーとして、それぞれの強みを発揮して、なにかを作り出す。
顧客と提供者の関係ではなく、顧客とも同じチームのような一体感を持ち、いい製品を作ったり、いいサービスを提供していく。
これが「新しい働きかた」だ。
2. チームの目的はまだ見ぬモノをつくり出すこと
そもそも、これまでのチームは、なぜ社内に閉じていたのだろう?
これまでは、商品を作ったり、サービスを提供するというのは、非常にハードルの高い活動だった。生産設備に投資したり、技術力が必要だったり、大量の労働力を動員したり。
一定の品質を保ちながら、なるべく効率的に、たくさん生産・提供するのが、これまでのチーム(組織)に求められる活動だった。
つまり、これまでのチームの目的は、何かを効率的に実行することにあったと言える。
何を実行するのかと言えば、自社(チーム)から顧客(内部顧客のこともある)に製品やサービスを提供すること (deliver) であり、そのやり取りは一方通行的だった。
一方で、これからのチームは、なぜ社外の人も含むのだろう?
それは、そもそも何を作るか、どのようなサービスにするかが、もはや企業の中だけではわからなくなったからだと思う。効率的に生産・提供しようにも、そもそもどのような製品・サービスが良いのかわからない。
こういった市場環境になった瞬間、効率性を求めるチームは機能しない。効果を出しやすいチームが必要になってくる。
つまり、これからのチームの目的は、効果的に何かをつくり上げていくこと (create)の方が大事になっている。
そのチームの中にいる顧客とともに製品やサービスをつくる。そのために取引先を含むチームメンバーの強みを発揮しながら、活動していくことになるので、そのやり取りはきわめて双方向的で、反復的になる。
何をつくるかと言えば、自分たちにとって価値があるモノを、自分たちでつくっていくのだ。
顧客からのフィードバックを製品開発に反映する。もっと言えば、製品開発プロセスに、顧客を巻き込んでしまう。こういったやり方は、ソフトウェアの世界では一般的だったが、消費者向けの製造小売業においても、同様の例が増えている。例えば、#ワークマン女子 の製品開発には、アンバサダー(顧客)が関わり、さらにはファッションショーにも登壇しているほど、深く巻き込んでいる。
これを、新規事業開発や、新製品開発のような一部のチーム、特殊な業務の話とは思わないでほしい。実際に私自身が経験したことだが、請求プロセスのような地味な仕事だって、社外の人と「つくり上げる」ことができるのだ。
一見すると「新しい働きかた」とは無縁に思えるが、社外の人と腹を割って話すことで、既存のやり方とは違う、双方にとってメリットのある「新しいやり方」をつくることができた。単純に見える業務でも、「新しい働きかた」によって大きな価値が生まれることは、Layer Xインボイスが示している。
見えない誰かに製品・サービスを一方的に提供するのではなく、社外の人と新しいモノをつくり上げていく働きかたは、今後ますます増えていくのだ。
3. コミュニケーションは全員にオープンに
これまでのチームでは、役割が(事前に)明確であり、外部とのやり取りには「窓口担当(Point of Contact)」が置かれるのが常だった。
取引先とやり取りするのは小林さん、お客様との窓口になるのは斎藤さん、といった形だ。
そして、組織の階層や権限に応じて、どの相手との窓口になるのが適切かが決まっていた。こういった構造では、情報が分散しているため、各窓口担当が持つ情報を統合するために、縦のコミュニケーションが多くなる。
また、この構造では、顧客や取引先からの反応をダイレクトに受け取る人は、非常に限られる。自分の貢献がどのように役立ったのかわからないし、自分の工夫が良かったのか悪かったのかもわからない。
感謝される機会も少ないので、自分の仕事に対する手ごたえ、やりがいを感じにくい。それ以前に、そもそも組織内の大多数の人が外界に触れてすらいないのだ。冒頭で描いたシーンが思い当たる人も多いだろう。
社内だけでなく、取引先や顧客も含む「これからのチーム」では、何かをつくり上げていくプロセスを共有する。
最終形が見えない中で動くことも多いので、全員の動きが、全員に見えていることが当たり前になる。高い透明性のもと、試行錯誤しながら何かをつくり上げていくという共通体験を通じて、さらに関わり・結びつきが強くなる。そこでのコミュニケーションは、縦よりも、横の方が強く多くなる。
そして、この構造では、顧客や取引先からの反応をダイレクトに受けることになる。ときには否定や衝突もあるかもしれないが、自分の貢献が明らかになる分、やりがいもあるし、相手からの感謝もダイレクトに届く。
また、透明性高い環境なので、いま何がどのように動いているか、誰でも理解できる。仕事の全体像が見えていて、全員の動きが、全員に見えている。
こうなると、自分がどのように動けばいいか、どこをカバーすると良さそうかが理解しやすく、自分なりの「チームへの貢献」がしやすい。決められた役割にとらわれることなく、自分がどこでどのようにチームに貢献できるか、メンバー自身が考え、行動することができる。
リクルートキャリアが7年間にわたって継続調査してきた「働く喜び調査」によれば、自分の「持ち味を発揮」できていると実感するほど、働く喜びを感じ、それが自分と職場の業績につながることが明らかになっている。
また、同報告書の分析によれば、仕事に対する自分の気持ちの開示も、働く喜びと業績に大きな影響を与えているという。
気持ちが伝わると、仕事がはかどるのだ。
この分析は残念ながら、気持ちを開示する相手が同僚と上司に限られているが、そこに取引先や顧客が加われば、さらに大きな喜びを得られるだろうと、容易に想像できる。
4. コミュニティを運営するように
これまでのチームとは、効率的に実行するための組織であり、そのために必要なコミュニケーションは散らばった情報を統合・集約することが重要だった。そこで求められるマネジメントとは、明確な目標に向かって、決まったプロセスに沿って実行するために、ゴールと権限を階層にそって分解していくことだった。わかりやすい例が、KPIツリーだろう。組織の階層をうまく管理していく。言うならば「ヒエラルキーマネジメント」だ。
チームのリーダーにとって重要なことは、組織の階層にあわせて適切なゴールを設定し、その達成に必要な権限を適切に付与することだった。
これからのチームのマネジメントスタイルは、大きく異なる。
会社組織を越えたチームのマネジメントというと、プロジェクトマネジメントが思い浮かべるかもしれないが、「新しい働きかた」は、プロジェクトのように明確に目標、時間軸(締め切り)、リソースが定まっているとは限らない。
大きな方向性は合意しつつも、明確な目標が定まらない中で創発的に活動していくことになるため、プロジェクトマネジメントとも異なるスタイルが必要になる。
5. リーダーはビジョンと価値観を掲げよう
そこでは、ビジョン(見ている未来、描いている構想)と、価値観(何を大事にするのか)に共感したメンバーによって、チームができあがっていく。むしろ、ビジョンと価値観に共感したメンバーしか集められないと言った方が正確かもしれない。
スタートアップ企業において、創業期こそビジョンやミッションが大事と言われるのと同じだ。大きな課題認識は共有しつつも、どのような製品・サービスで、どのように課題を解決するのかは、やりながら見つけていくことになるし、状況に応じて変化していく。
こういった働きかたでチームリーダーに求められるのは、ビジョンと価値観を提示することだ。中途半端な帰属メリットでは、人は集まらないし、つなぎ留められない。
消費財メーカーやD2Cの世界において「ブランドパーパス」が大事にされているのも、同じ理由だ。存在意義や志、スタンスが支持されるから、購入され、共通体験によってファンが生まれる。ファン主導で、思いもよらないアウトプットが生まれる。
このような動きは、いまビジネスの世界で注目されているコミュニティのようだ。これからのチームマネジメントは「コミュニティマネジメント」の要素が入ってくるのだろう。
リーダーには、ビジョンと価値観を提示し、創発的にメンバー個々人の強みが活かせるよう、透明性高くコミュニケーションできる場を運営する力が求められる。組織力学(Organization dynamics)を理解するよりも、コミュニティの力学(Community dynamics)を理解する方が大事になるのだ。
「新しい働きかた」は、仕事の楽しさを実感できる
ギャラップ社の調査によると、仕事に主体的に取り組んでいる(Engaged)人は、日本にはわずか7%しかおらず、これは世界平均の13%に比べてとても低い。
主体的に取り組めない理由のいくつかは、ここまで見てきたような「これまでのチーム」に紐づく働きかたに起因していると考えられる。社内メンバーとのやり取りが大半で、外とのやり取りは限られた人からだけ、しかも一方通行的。否定もされないが感謝もされず、自分の貢献が見えにくい。
これでは、主体的に仕事に取り組む方が難しいだろう。
だが、希望はある。
このギャラップ社の調査がおこなわれたのは2013年であり、先のリクルートキャリアの調査によれば、2013年から一貫して下がり続けていた「働く喜び」を実感する人の割合は、2017年に底打ちし、その後上昇基調なのだ。
2017年といえば、徐々に「働き方改革」の機運がはじまった時期だ。実は、「働き方改革」は掛け声倒れなんかじゃなく、着実に成果をあげているのだ。
さらに、ここ数年で、大企業だけでなく、中堅中小企業にもコラボレーションツール(グループウェアやビジネスチャット)が普及してきたのは決して偶然ではない。もともとお客様や取引先と一体となって働くスタイルが多い彼らにとって、社外の人もチームのように仕事をするのは当然だ。そんな働きかたをしていれば、「全員が、全員に見える」ようになるITツールは、とても効果的で、仕事が進めやすくなるのだ。
仕事が本来持つ楽しさを、もっと多くの人に実感してほしい。
それを実感するために使ってほしいし、そういう世界を実現する一助でありたい。
本気でそう考える会社が提供する製品・サービスには、その思想が反映されている。
「チームワークあふれる社会を創る」を掲げるサイボウズが多様な働き方を推進しているのも、チャットワークのミッションが「働くをもっと楽しく、創造的に」なのも、Slackが仕事用のツールに絵文字を持ち込むのも、Asanaでタスクを完了するとキャラクターが飛んでいくのも、Notionでノートに絵文字が設定できるのも、LINE WORKSが仕事でスタンプを使えるようにしているのも、偶然や流行ではなく、同じような未来を見て、同じような世界をつくろうとしているからだ。
こういったツールが、これまで見てきた5つのポイントを実現したチームの働きやすさを支援するのは明らかだ。
組織の枠を越えて、チームをつくる。
本音も交えたやり取りの中から、アウトプットを定め、顧客や取引先と一緒に製品・サービスをつくり上げていく。
チームの仕事は全員に見えているので、無駄がなく、すぐにアクションにつながる。
仲間との距離が縮まり、一体感が高まり、助け合いや自発的な提案が生まれる。
自分の持ち味が発揮できるので、はたらくことに楽しさが生まれ、チームも個人も成長していく。
これからリーダーになる人には、5つのポイントを意識して、こんなチームをつくり、「新しい働きかた」を実現させてほしい。
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