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B2B SaaS のマーケターは、もっとユースケースを知ろう!

久しぶりに B2B SaaS/B2Bマーケティングな話を。
B2B SaaSマーケターの皆さんへの問題提起であり、エールであり、こういう姿を目指そうぜ!というメッセージです。


B2B SaaS のマーケティングチームって、「やることたくさん!でも人手は足りない!」という状態になりがちです。いかんせん、B2Bマーケティングの経験者が世の中に圧倒的に少ないので。

だから、どうしても施策(おもにリード獲得施策)を回すことで手いっぱいだし、さらに最近はやたらと役割が細分化される傾向が強まってるようで、顧客の実態を知る機会が減っているように感じます。ある程度の規模の SaaS企業に入社したマーケターは、下手すると、そもそも入社以来、顧客の実態を知る機会が一度もない、という人すらいるのでは?(そうでないことを祈るばかりですが)

「このままだとリードの目標数に届かない!追加の施策が必要なので、○○をやろうと思ってます!」という話ばかりでは、「マーケティング担当者」というよりも、社内で「代理店業務」をやってるようなものです。

マーケティングの出発点が顧客理解なのはだれしも合意するところですが、「では、顧客を理解するための活動をしてますか?」と問われると、「うっ…」となる人が多いのではないでしょうか?

どういうわけか、お客さんの話を聞きに行ったことがない人、聞きに行くことが年1回のスペシャルイベントになってる人、そもそも聞きに行くのは自分の仕事ではないと思ってる人が、やけに多い気がするんですよね(気のせい?)


というわけで、本記事のキーメッセージは、
B2B SaaSのマーケターは、もっとユースケースを知ろう
です。


B2B SaaSのマーケターは、もっとユースケースを知ろう

もっとシンプルには、
お客さん(既存顧客)の話を聞きに行こう!
ということです。

ユースケースを深く知り、適切に整理できれば、

顧客インサイト(顧客が製品・サービスのどこにどんな価値を感じているか)を導き出すことができます。

顧客セグメンテーションと自社のポジショニングを顧客視点で明確にすることができます。

マーケティングや営業活動で使える説得力のある訴求ポイントがつくれます。

プロダクト戦略を顧客起点にすることができます。


ユースケースを理解することで、このように各部署の活動に一貫性をもたせることができるのです。そして、それをリードすべきはマーケター、マーケティングチームだと思うのです。マーケティングは、事業を成長させるための戦略と密接につながってますから。


ユースケースとは

だれかがどこかで「ユースケース」を定義しているかもしれませんが、少なくとも私が調べたかぎりでは、ソフトウェア工学・システム工学的な定義はあっても、ビジネス文脈で確立した定義はないようです。したがって、以下は私なりの定義ですので、記事中ではこういう意味だと理解してもらえれば。


「ユースケース」とは、事例記事のことではありませんむしろ、顧客インタビューのアウトプットが事例記事だけだなんて、すごくもったいない

ユースケースそのものはアウトプットではなく、言ってみれば社内資料なので、形式は問いません。一覧性や検索性が担保できれば、ラフなメモでもいいと思ってます。
ただし(B2B SaaSでは)以下の5点がカバーされている必要があると思っています。

① どの部署のどんな役割の人たちが
② どんな仕事(業務)で
③ プロダクトのどの機能を使って
④ (プロダクトを活用して)どのように仕事をするようになり
⑤ それによって何が良くなったのか

このリストを見ても「まあ、そうだよね」という反応だと思います。それくらい当たり前な内容が並んでます。

ですが、社内でコレがちゃんと蓄積・整理されてるでしょうか?
いつでも、だれでも(どの部署の人でも)、参照できるようになっているでしょうか?

お客さんの話からは、さまざまなインサイトが導き出せます。その時点では気づけなかったことでも、あとで見返したら発見があったということもありますし、将来事業のフェーズが変わったときに見返すことがあるかもしれません。生データはいつだって貴重です。まずは、粒のそろった生データを蓄積しましょう。

これがしっかりできていれば、マーケチームに入った新メンバーが「今ひとつ、お客さんのイメージがわかない…」と言い続けるような状況は避けられるでしょう。

さらに、営業メンバーがいつも「もっとネタが欲しいんだけど…」と言ってるなんてこともなくなりますし、「お客様に○○機能を使った他社事例を聞かれるんだけど、どこかあったっけ?」と聞かれることも減るでしょう。


導き出したい顧客インサイト

上記5つのポイントはあくまでも基本セット。本当に知りたいのは「で、結局お客さんは何がうれしいの?」「ウチの製品・サービスのどこに価値を感じてるの?」という点です。

そのためには、①~④をしっかりと理解した上で、⑤の答えをグリグリと深掘りしていく必要があります。

ユースケースの必須要素(再掲)
① どの部署のどんな役割の人が
② どんな仕事(業務で)
③ プロダクトのどの機能を使って
④ (プロダクトを活用して)どのように仕事をするようになり
⑤ それによって何が良くなったのか

それ(良くなったこと)は、どういう意味があるんですか?
それって、なんで良いことなんですか?
それは、どれくらい違うんですか?
以前は、どうだったんですか?
なにがどれくらい変わったんですか?

こんな感じでグリグリと深掘りしていくのです。毎回すべてのお客さんから「コ、コレは!」というインサイトが得られるわけではありませんが、それでも「おお、なるほど!」という発見は得られます。

ちなみに、こういった会話を積み重ねていくと、お客さんも言語化できていなかった「製品・サービスから得られている価値」を記録・記憶に残せるので、リテンションという観点でもとても有効です。


SaaSならではの落とし穴

SaaSビジネスは、良くも悪くもこれまでのビジネスとは前提が異なります。なかでも、「お客さんの利用データが取れる」というのは、過去に「お客さんの実態がわからん!」と思っていた人にとっては天国のように思えます。データという観点では、お客さんの利用実態はさまざまな切り口でいっぱい取れちゃう。

でも、それが落とし穴だと思うんですよね。

ヘタにデータが取れてしまう、それもいっぱい取れてしまうがゆえに、そのデータでお客さんを理解しようとしてしまう。それは決して盲目的にデータ偏重な人が多いというわけではなく、「わざわざお客様のお時間をいただいたり、お手を煩わせずとも、データからわかることがいっぱいあるから、まずはそこから」みたいな感覚になりやすいんですよね。

これまでのビジネスでは(消費財メーカーも部品メーカーも小売業者もサービス業も)、お客さんの利用データなんて取れず、利用実態がわからないのは当たり前でした。

だから、消費財メーカーなどのB2Cビジネスでは、定量的な調査をおこなうリサーチチームがあったり、グループインタビューをしたりと、さまざまな方法で顧客インサイトを見つけようとする体制があります。

一方で、B2Bビジネスではたいてい定量的な調査はむずかしい(世の中に調査対象になる人が少なすぎる)。だから、お客さんに話を聞きに行くしかなかった。

そこで、ちゃんと話を聞きに行ってる会社は、顧客インサイトに基づいて議論し、施策を打つことができた。逆に、話を聞きに行かない会社は、コンサルタントが入ることで「営業とクレーム対応以外で顧客訪問するのは初めて」とか「こんな話、お客さんから初めて聞いた」ということが起きたりする。

SaaS企業は、データが取れる分、放っておくと後者になってしまうんじゃないか。私には、そんな危機意識があります。

だから、あえて強調したいのです。

B2B SaaSのマーケティング担当者は、ユースケースを知ろう!もっと、お客さんの話を聞きに行こう!


フィードバックという名の要求が怖い?

既存のお客さんのところへ行くと、いろんなこと言われそうですよね。自分たちで改善できることなら、まだ返答・回答しようがありますが、製品への改善要望や価格についての要求だったりすると、自分たち(マーケチーム)では判断できないし、責任もって回答することもできない。だから、ちょっと怖い。そう思うのも無理はありません。

活用しているお客様であればあるほど、必ずなんらかの要望は出ます。逆に、要望がまったくない方がイヤです。それはつまり、期待されてないということなので。

でも、むやみに怖がる必要はありません。

要望が出てきたら、やるべきことは「すべてちゃんと聞く」です。すぐに対応できないことも多いだろうけど、大事なのはちゃんと受け止めること。間違っても打ち返しちゃいけません。

理解、共感、受け止め。

そのためにも、ユースケースをちゃんと聞いて、理解するんです。

ユースケースの必須要素(再掲)
① どの部署のどんな役割の人が
② どんな仕事(業務で)
③ プロダクトのどの機能を使って
④ (プロダクトを活用して)どのように仕事をするようになり
⑤ それによって何が良くなったのか

お客さんが具体的な機能を要求してきたとしても、それを鵜呑みにしちゃいけません。どんな人が、どんな仕事で、どう仕事をしているのか。そこで(既存機能では)どんな不便が生じているのか。それをしっかり把握しましょう。

そして、リーズナブルな要求だなと思ったら(たいていそうです)、ちゃんと製品部門へ伝えるし、そのニーズ(not 具体的なリクエスト)には応えたいと思っている、とお伝えしましょう。そして、伝えたとしてもすぐには対応できるとは限らないし、リクエスト通りの形で提供することになるかはわからない。けれど、そのような要求があることはちゃんと理解したことをお伝えしましょう。

もちろん会社に戻ったら、ちゃんと製品部門へフィードバックしてくださいね。そのときに、ユースケースとともに共有することで、製品部門の理解も深まりますし、優先順位づけがやりやすくなりますから。


B2Bマーケターも事業戦略をリードしよう

マーケターがユースケースを深く知り、適切に整理できれば、本来の意味でのマーケティング(ほぼ事業戦略の立案と実行と同義)を主導できるようになります。


顧客インサイト(顧客が製品・サービスのどこにどんな価値を感じているか)を導き出す。

顧客セグメンテーションと自社のポジショニングを顧客視点で明確にする。

マーケティングや営業活動で使える説得力のある訴求ポイントをつくる。

プロダクト戦略を顧客起点にするためのフィードバックサイクルを回す。


B2Cのマーケターは、ブランドマネージャーとかカテゴリーマネージャーと呼ばれ、まさにこれらを実践しています。大きなブランドであれば、ほとんど事業責任者と呼んでも差し支えないですよね。

B2Bマーケターも、こういう役割を担わないといけないと思うんです。リード獲得施策で手いっぱいになってる場合じゃない!
いや、リード獲得も大事ですよ。でも、そればっかりになっちゃったら、一体だれが事業戦略をリードするんでしょう? 私自身の経験を振り返っても、リード獲得でヒィヒィ言ってるときは、会社の中に「そもそもコレでいいんだっけ?全体見て、判断してる人いるんだっけ?」という声が上がりがちだったように思います。


「そう、こういうのがやりたいんだ!」と思った方、ぜひお客さんの話を聞きに行きましょう!


【宣伝】お客さんの話を一緒に聞きに行ったり、ユースケース整理したりするお手伝いが必要でしたら、お気軽にご相談ください。


良かったら、こちらの記事も読んでみてください。
そもそも事業を成長させるなら Customer-led / 顧客主導・顧客起点ですよね、という話です。


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