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日米ビジネスコミュニケーションの違いから、ツールに求められることを考える

(もともとnoteで公開していましたが、一時取り下げて、LINE WORKSブログで公開していた記事を再掲しています)

ITの世界では、新しいサービスやツールは、シリコンバレーを中心とした北米地域で生まれることが多いですね。
それゆえ、サービス・ツールにも、北米の文化や働き方が色濃く反映されています。
サービスを使おうと思ったときに、そういった背景を理解していないと「なんか使いづらい」というコトになりかねません。

今回は、私がアメリカ勤務経験を通じて「働き方が違う!」と感じた点を挙げながら、それがコミュニケーションツールにどう反映されているか、ご紹介していきたいと思います。

働き方の違いから生まれる日米ビジネスコミュニケーション5つの違い

働き方が違う!その1:時間や場所で管理しない

「お前がどこにいようが、いつ帰ろうが、気にしないから、いちいち言わなくてもいいよ(笑)」

日本からの荷物が届くのか役所的な手続きだったか忘れたが、明日は仕事を途中で抜けるけどなるべくメールは見るから、みたいなことを上司に話したときのリアクションがこれ。

もちろん制度的に「半休」のようなモノはあってシステムで申請もするんだけど、それはあくまでも手続きの話。仕事は成果やアウトプットで管理するもの、だから部下がいつどこで何してようが気にしない。

ましてや、同じ「空気」を共有していることが大事、みたいな感覚はさらさらない。ちゃんと言語化されないことには、存在していない・思考していないのと同じ、というのが前提。
こういう考え方が骨の髄まで染みついている。まずはこれがベース。


働き方が違う!その2:会議が少なく、自席にいることが多い

まずそもそも絶対量として会議が少ない。

いろいろ理由はあるんだけど、基本的に仕事は「自分で考えて進めるモノ」というスタンスだから。
対して日本では、仕事は「みんなと相談して進めるモノ」「自分ひとりで勝手に進めるのは良くない」という意識が暗黙的にある(ような気がする)。

そして、アメリカのようなだだっ広いところで働く人にとって、対面でのコミュニケーションは必ずしも「前提」ではない。だってそんなことしてたら、移動ばっかりでちっとも仕事が進まないから。
だから、会議をやるとしても、電話会議、ビデオ会議、Web会議ということになるので、必然的に「自席にいる」ことが多い。もっと言うと、そもそもオフィスに行かずに(下手するとオフィスが存在せずに)自宅で働いてる人も多い。

こういう背景もあるから、その1で書いたように、 同じ「空気」を共有して共通認識を作るのではなく、言語化された意思・思考=アウトプットをベースに仕事を進めることになる。

そうすると、働く環境はどうなるかというと…

個室や広い自席
大型モニタがあるのは当然、場合によってはデュアルスクリーン(モニター2台)
PCはキーボードの打ちやすさや性能を重視
移動はクルマ、バス、飛行機が中心なので、15インチとかのでかいPCを持ち運ぶこともいとわない

そして、コミュニケーションツールに何を求めるかというと…

PCで使うのが大前提。なんならモニタ1個を占有しても構わない(全画面でツール開きっぱなし)
相手が在席しているかどうかを知りたい → プレゼンス(在席表示)大事
チャット〜電話〜ビデオ会議〜Web会議をスムーズに行き来したい
画面共有とかホワイトボード機能とかあると、さらに便利で快適

となる。

働き方が違う!その3:移動時間が違う

会議・打ち合わせは対面で!が基本の日本だと、日中(ビジネス時間帯)の移動が多い。対して、アメリカだとその2に書いた理由から、日中の移動は少ない。
どちらも通勤時間帯の移動は必須だけど、アメリカではそれがクルマになるので、ものすごく大渋滞になる。意外かもしれないけど、アメリカの渋滞はホントひどい。

そうすると、何を求めるようになるかというと…

移動時間を効率的に使いたい → 電話ならできる → 音声認識でいろいろ操作できると便利!

となる。

対して日本では、

電車中心 → 声出して話せない → チャット → 短時間で効率的に入力したい → ガラケーでの高速親指入力とかスマホでのフリック入力が発達

という流れ。

働き方が違う!その4:意見を言うのが当たり前

コレはなんとなく想像つく人も多いでしょう。
場が与えられたら(会議に出たら)、意見を言うのが当たり前という文化(そうは言っても、発言の順番・タイミング、言い回しなんかはけっこう気を遣ってる)。
だから、みんなが意見を言えるように、という気配りは不要。むしろ、場さえうまく用意できれば意見が出てくるモノと考えている。

そうすると、何を求めるかというと…

もっとみんなでいろいろ話せる場を作ろうぜ!
働いてる場所とか部門とか役職とか越えて、みんなで意見を出し合ったら、イノベーション起きるよ!
→ 社内SNSとかオープン型のコミュニケーション・コラボレーションツールを!

となる。

対して日本では、

多くの人が集まる場所で意見を言うのは畏れ多い。会議でしゃべるのはいつも偉い人だけ → 大事な話が漏れないように権限設定したい

となる。


働き方が違う!その5:実は日本企業以上に縦割りかも

外資系企業について意外と知られていない事実がある。しかも働く上ではかなり大事なコトなのに。それは・・・
「上司が絶対」になりやすい構造

一般的に日本企業では、「キャリアパスを考えるのは人事部」。だから、人事部が「この人材は優秀だから経営企画を経験させよう」といったローテーションを考える。

これに対して、外資系企業では「キャリアパスを考えるのは自分(考えないのも自分の責任)」。そして、それを支援するのが上司の役割。自分は出世したい!と言ってもいいし、出世は興味ないからこういう働き方をしたい!と言ってもいい。
ただし前者の場合は、上司や周囲に認められないかぎり実現が難しい。なぜなら、他の誰も見たり考えたりしてくれないから。

そうすると、どうなるか。
放っておくと他部門や他職種の人の意見よりも上司の意見を重視しがちになる。ま、人間なので普通はそうなる。自然な流れ。
そして、どの企業でも「それじゃマズイよね」と思うので、何が求められるかというと…

組織や役職を越えたコミュニケーションを促進しようぜ!
上司とか部下とか関係なく、みんなで意見を(以下略)
→ 社内SNSとかオープン型のコミュニケーション・コラボレーションツールを!

となる。


まとめ

以上のことをまとめると、

同じ空気を共有することは重視しておらず、PC利用が前提で、会議が少なく、移動はクルマ、意見は言うのが当たり前

こういった働き方・ワークスタイル・コミュニケーションスタイルの人たちに向けて作られた(オープン型の)ツールを、

空気や感覚の共有がなにより大事、会議が多く、移動は電車、PC開けずスマホ中心、意見を言うのは遠慮がち

こういった働き方・ワークスタイル・コミュニケーションスタイルの人が多い日本の会社に導入して、果たして効果が出るでしょうか?
・・・どう考えても、なかなか難しそうです。

じゃあ、働き方やワークスタイルを変えよう!
といって、そう簡単に変えられるでしょうか?
ある程度は変えられそうですが、完全に変えられるものでもない。
特にコミュニケーションスタイルを変えるのが大変そうです。なぜなら、それは文化だから。

とすると、日本で働く人のコミュニケーションスタイルにあったツールを入れたほうが、効果が出やすいと思うのです。

これを踏まえて、次回は、日本で働く人に向いているコミュニケーションツールの特性について考えてみます。


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萩原 雅裕|Prodotto代表
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