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パテラセッティングを再考する

今回はパテラセッティングについて書いていきます。

パテラセッティングは変形性膝関節症やACL損傷、半月板損傷などの膝疾患に対して必ず指導するトレーニングの1つだと思います↓

特徴として
等尺性収縮(関節運動を伴わない)で行うため痛みの少ない運動
難易度が低いため若年者〜高齢者まで指導することができる
があります。

このように、汎用性の高いトレーニングだからこそ、少しの工夫でより高い効果を得ることができます。

そんなパテラセッティングに関するあれこれについてまとめました。

情報量が多めなので、気になるところだけでも読んでみてください。

それではどーぞ!!


パテラセッティングの目的

前提として、パテラセッティングは大腿広筋群の筋力強化を目的としたものではなく、筋活動を維持することにあります。

そこを踏まえて

パテラセッティングの目的として
・内側広筋の萎縮防止(とくに術後)
・膝蓋骨の癒着防止
・膝伸展可動域の確保
・循環の促通
などがあります。

とくに、術後における内側広筋の萎縮防止や膝伸展可動域の確保を目的として指導している人も多いのではないでしょうか。


SLR運動との違いは?

あなたはパテラセッティングとSLR運動の違いについて説明できますか?

主なものとして
・レバーアームの長さ
・筋活動の違い
・収縮様式の違い
になります。

レバーアームの長さ


運動を考えるとイメージしやすいと思いますが
・SLR運動:レバーアームが長い
・パテラセッティング:長さが変わらない
となります。

レバーアームが長くなるとその分関節への負担や筋活動を多く必要とするため、特に術後の方に関しては痛みを伴う場合があります。

筋活動の違い


・SLR運動:大腿直筋の筋活動が高い(屈曲角度が増すにつれて股関節屈筋の活動が高くなる)
・パテラセッティング:内側広筋や外側広筋の筋活動が高い
となります。

さらに関節水腫がある場合、大腿四頭筋の筋活動を抑えるように働きます(関節原生抑制)。臨床上腫脹がある方で、パテラセッティングを指導した際になかなか収縮が入りづらいという場合は、こういう可能性もあるのかもしれません。

収縮様式の違い


収縮様式の違いについては、関節運動を伴うか伴わないかで違いがあります。
・SLR運動:等張性収縮(筋の張力を変化させない)
・パテラセッティング:等尺性収縮(筋の長さを変化させない)

以上がパテラセッティングとSLR運動の違いになります。

総合的に判断して、自分は術後早期や痛みが強い場合はとくにパテラセッティングから指導をするようにしています。


パテラセッティングの回数と収縮時間

パテラセッティングを指導すると「1日に何回やればいいですか?」と聞かれることがあるかと思います。

そんなとき何と答えてますか??

もちろん目的にもよりますが、市橋らの研究によると

自然歩行1万歩に対して、内側広筋においては
SLR(5秒保持)1200回
パテラセッティング(5秒保持)400回
で同じ筋活動になるといわれています。


どうですか??

うーん無理かも・・・。

さすがに理学療法中にこの回数を行うのは難しいと思いますし、患者さんのやる気も下がってしまうかもしれません。

そのため早期より離床できる方は離床してもらい活動量を上げることが先決になるでしょう。

ただ自主トレとして回数を設定する場合は、先ほどの回数も頭に入れながらではありますが

患者さんがなるべく続けやすい回数として
まずは10-20回×3セットで指導するようにしています。

本音をいうと・・・・・回数もだけどいかに再現性高くできるかのほうを大事にしています。


また回数と同時に収縮時間についても指導していきます。

まずは収縮機能を高める目的で最大収縮にて3-5秒間収縮を行ってもらいます。

次にセラピストや患者さんのリズムに合わせて早い収縮-弛緩(それぞれ1秒程度)を繰り返してもらいます。

目的としては、収縮後にしっかりと弛緩できるようにするためです。特に術後初期の方ってこれ意外と難しい印象があります。

そして、10秒間の持続収縮にて筋持久力を高める練習を行っていきます。

まとめると
最大収縮(3-5秒間)

早い収縮-弛緩(リズミカル)

持続収縮(10秒間)

こんな感じで行います。

収縮時間については、パテラセッティングだけでなく他のエクササイズにも応用できるとは思いますので、それぞれの方の状態に合わせて選択していきましょう。

パテラセッティングの方法

パテラセッティングの方法として、基本的に背臥位ではなく長座位で行ってもらいます。

なぜ長座位か?は後で書いてます。

パテラセッティングについては何を目的としているかでやり方が変わってきます。

①膝蓋骨の癒着を予防したい場合

セラピストが膝蓋骨を下方や外下方に引き下げ、患者さんにはそれに抗するように力を入れてもらいます。

牽引を加えることで、膝蓋下脂肪体や内側広筋をはじめとした大腿広筋群の収縮を促しやすくなります。

膝蓋骨のモビライゼーションとあわせて行っていきましょう。

②膝蓋上包の癒着を予防したい場合

セラピストが徒手的に大腿部を持ち上げ(lift off)た状態で力を入れてもらいます。

膝蓋上包についてはこちらをチェック↓

③伸展可動域制限を予防したい場合

軽度屈曲位(屈曲30°程度)から膝を伸ばしていきます。

ここでのポイントしては膝を押しつけるのではなく、膝を伸ばすように指導します。

さらに軽度屈曲位での大腿四頭筋の収縮は、膝蓋下脂肪体の前方移動を促します。

膝蓋下脂肪体についてはこちらをチェック↓

この動作で痛みがあればタオルなどを膝下に入れて押しつけてもらってもいいと思います。

④内側広筋を選択的に収縮させたい場合

結論からいうと、これといった方法はありません。

おそらく個別性があるからかもしれませんけど。。

臨床的な感覚なども踏まえると

内側広筋は大内転筋と筋連結があるため
股関節外転・外旋+下腿外旋位で行うと、大内転筋が伸張されることで内側広筋の緊張が高まり収縮しやすくなります。

ほかにも

足部をただ背屈させるよりも、踵を遠くに伸ばすように(踵で踏みつける)してもらうことで内側広筋にも収縮が入りやすくなる印象があります。


パテラセッティングの注意点

パテラセッティングを行う上での注意点について主観も踏まえて書いていきます。

①開始肢位について

基本的には長座位で行います。

ここでのポイントとしては、骨盤前傾での長座位です(写真はちょっと怪しい笑)

なぜ骨盤前傾で行うのか??

それは二関節筋である大腿直筋の影響をなくすためです。

大腿直筋は骨盤前傾をとることで短縮位となるため、筋の長さ-張力曲線により張力を発揮しにくい状態となります。

そのため大腿直筋以外の単関節筋(内側広筋や外側広筋)が働きやすくなります。

その他にも、骨盤前傾にすることで
・腸腰筋が働く
・ハムストリングスにストレッチをかけることができる
があります。

②タオルの位置について

あなたはタオルを入れる位置で気をつけていることってありますか??

タオルの位置で気をつける疾患として、ACL損傷があります。

理由として、大腿よりも下腿に入れてしまうと前方への剪断力が高まりACLへの負担が増してしまうからです。

術後はとくに気をつけていきましょう。

他にも大腿側or膝下側(大腿ー下腿の中間)それぞれで力の入りやすさが変わる方もいるので、その人にあわせてタオルの位置を変えてみるのもおすすめです。

③下腿の回旋形態について

臨床上膝関節の回旋形態を把握することは極めて重要です。

膝関節の回旋形態は、通常大腿骨に対し脛骨がわずかに外旋位にあるが、この角度は個人間によって相違がある。

通常では、膝蓋骨に対し脛骨粗面はやや外側に位置しているが、膝蓋骨の左右両端の接線内に脛骨粗面が収まっている。
しかし、膝関節の形態上過外旋にある例では、脛骨粗面がこの接線上もしくは接線を超える位置にある。

スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション
〜半月板損傷〜

イメージとしてはこんな感じ↓

このように脛骨が過外旋になっている症例については、できるだけニュートラルな肢位で力を入れる練習をしていきましょう。


まとめ

長くなってしまいましたが今回のまとめです。

パテラセッティングは
筋活動維持の要素が大きい。
・目的に合わせた環境設定やり方を変えていくことが大事。
痛みのない範囲で行う。←ここ大事!

個人的な見解もありましたが、汎用性の高いトレーニングだからこそその人に合わせて工夫していくことが大切になります。

今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


参考文献

・市橋則明、吉田正樹:大腿四頭筋の廃用性筋萎縮を防止するために必要な下肢の運動量について,体力科学42,P461-464,1993
・内山英司,他:《改訂版》スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション.運動と医学の出版社,神奈川.2013
・園部俊晴:園部俊晴の臨床 膝関節.運動と医学の出版社,神奈川.2021
・林典雄,他:改訂第2版 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション下肢.整形外科リハビリテーション学会,MEDICAL VIEW.2014

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