意外と知らない?半月板切除術と縫合術の違いについて
前回は半月板の構造と機能について書きました。
半月板損傷は膝関節疾患の中でも発生頻度が高く、日常的に多くみられる疾患のひとつです。
半月板損傷での観血療法として、半月板切除術と縫合術が選択されます。
それぞれの目的や注意点にあわせて理学療法を行うことで、患者さんの術後のスムーズな回復に寄与することができます。
今回は半月板損傷に対する手術の特徴や違いについて書いていきます。
半月板の血行について
半月板の外側1/3には血行がありますが、内側2/3には血行はありません。
外側からred-redゾーン、red-whiteゾーン、white-whiteゾーンと呼ばれています。
また、外側1/3では神経線維および神経終末が確認されています。
半月板は成長に伴い内縁の血行が乏しくなり、成人では外縁の10~30%しか血液が供給されていません。組織の治癒には血流が必要であることから、血流が乏しい内縁付近では治癒が起こらないと考えられています。
したがって、半月板縫合術は血行領域の損傷(redゾーン)にのみ適応されています。
断裂形態について
半月板損傷の断裂形態については以下のようになります。
画像:標準整形外科学 第10版 より引用
内側半月板は、縦断裂・バケツ柄状断裂が、外側半月板では円板状半月損傷(患者さんの3~4割)が多くなります。
円板状半月とは、生まれつき半月が大きく分厚い半月のことです。
円板状半月は大部分が外側に認められ、内側に認められることは非常にまれです。
特に外傷機転がなくても高頻度で変形断裂を生じやすく、発症率は正常半月板を有する場合の2倍程度と報告されています(詳細なメカニズムは明らかではない)。
切除術と縫合術
それぞれ解説していきます。
①切除術
半月板切除といっても全切除ではなく部分切除を行うのが一般的です。
なぜなら、半月板の役割として荷重伝達機能があり、切除後は関節面へのストレスが増大し、将来的な膝OAに進行する可能性があるためです。
理学療法としては、切除された場所を確認し、その部分への力学的ストレスを減らすことを考えていきます。
荷重時期は縫合術に比べ早期から可能になります。可動域に関しても縫合術に比べ、深屈曲位の許可はDrから早くでやすいです。
また円板状半月における部分切除後は、膝外側コンパートメントの適合性および関節軟骨へのストレスを考慮し、荷重位でのトレーニング開始を少し遅らせたりもします。
②縫合術
縫合術は半月板の修復を目的としているため、基本的には血流の存在する外側1/3で、かつ縦断裂であることが条件です。
また若年者や活動性が高い方に対しても、半月板機能の温存がより重要となるため、縫合術が選択されやすいです。
縫合術の適応について、可能性ではありますが、動物実験においては半月板の血行が乏しい領域においても治癒反応が認められたことが報告されており、今後は縫合術の適応が広がる可能性があります。
縫合術の適応が広がれば膝OAへの進行リスクも少なくなる可能性がありますね。
縫合術の理学療法は、損傷部分の治癒を妨げないように縫合部分へのストレスを減らして進める必要があり十分注意しながら実施していきます。
可動域へのアプローチは縫合部分へのストレスを考慮しながら、また回旋や大腿骨と脛骨の位置関係に注意しながら進めていきます。
後節部分で縫合を行った場合は深屈曲は控えていきます。
半月板縫合術の問題として術後の再断裂リスクがあり、縫合術の再手術は22.4%(部分切除は4%)と再手術のリスクが高いことが示されています。
手術方法
半月板の手術は大きく分けて
・inside-out法
・outside-in法
・all-inside法
の3つがあります。
①inside-out法
関節内から半月板と関節包を貫いて関節外に2本の針と糸を通して関節外で縫合する方法です。
主に中~後節の縫合になります。
②outside-in法
先ほどのinside法とは反対に関節外から進入し、関節内で縫合する方法です。
主に前節の縫合の場合に行います。
③all-inside法
すべて関節内で縫合する方法です。
主に後角・後節に向いています。
まとめ
今回は半月板の手術方法についてまとめていきました。
術後の理学療法の進め方については、それぞれの病院によっても違いがありますので必ずDrに相談しながら進めていってください。
切除術に関しては大きなリスクはありませんが、特に縫合術は縫合部分へのストレスを考慮して、再断裂のリスクを起こさないように進めていきましょう。
そのためにも半月板の構造と機能を知っておくことは非常に大事なことになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・引用文献
・膝半月板損傷の機能解剖学的病態把握と理学療法 理学療法 29巻2号 2012年
・膝関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く MEDICAL VIEW
・関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション下肢 改訂第2版 MEDICAL VIEW
・標準整形外科学 改訂第10版 医学書院
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