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ACL損傷の基礎知識ー解剖〜受傷メカニズムについてー

9月もあっという間に後半になり、今年も残り100日を切りました。

ここ最近は連日の猛暑から朝夕涼しくなってきて、少しずつ秋の気配を感じています。やっぱり暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったものですね。


さてさて今回は、膝関節靭帯損傷の中で大きな割合を示す前十字靭帯(以下ACL)がテーマです。

内容としては

ACLの機能解剖や受傷機転、受傷メカニズムを中心に書いています。

それではどうぞ!


ACLの解剖について

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ACL(Anterior Cruciate Ligament)は全長約35mm、横径約10mmの滑膜に覆われた靭帯です。


起始(大腿側):大腿骨外顆の内側面後方
停止(脛骨側):内側顆間結節の前方

となってます。


ACLは主に2つの線維束に分かれていて

・前内側線維束(AMB)
・後外側線維束(PLB)

があります。

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AMBはすべての可動域で緊張し、特に屈曲域で緊張を増します。PLBは伸展域で緊張を増し、屈曲域では弛緩します。

ちなみにPLBはACLの主要要素であり、AMBは最も傷害されやすいともいわれています。

このように、ACL内のコラーゲン線維同士が互いにねじれあい、螺旋状の線維束を形成しています。


ACLの役割について

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ACLの働きとして

①脛骨の前方移動を制御
②膝関節の内旋・過伸展などを制御

があります。

①に関して、ACLは前方移動制御の85%を担っています。


受傷機転について

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ACLの受傷機転としては、バスケットボールやサッカー・バレーなどのスポーツ活動でよく起こります。

損傷パターンとして、接触型・非接触型・介達型の3パターンがあります。その中でも特に多いのが、非接触型で70%を占めます。

非接触型とは、ジャンプ動作やステップ動作の切り返しなどで起こる受傷パターンになります。

ちなみに、接触型はラクビーなどの接触プレーに多い競技で多く発生します。介達型はスキーなどの際にみられる損傷メカニズムです。


当たり前ですが、実際にリハビリを担当する場合にもどのようなパターンで受傷しているか知ることが大事になります。


受傷メカニズムについて

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ACL損傷の受傷メカニズムとして有名なのが「Knee-in toe-out」の肢位があります。私も学生時代はそのように習いました。

ただ臨床をしていて思っていたのが、本当にこの肢位が原因で損傷するのか?ということです。


結論からいうと、Knee-in toe-outは損傷する危険因子ではあるが、損傷のメカニズムではありません(100%ではありませんが・・)。

それを証明したものとして、2010年にKogaらが発表した論文があります。

論文によると

「ジャンプ着地後40msまでに急激な外反+大腿骨に対し下腿内旋が生じACL損傷が起こり、その後下腿外旋が生じている」

「膝関節外反・内旋+脛骨前方偏移の3平面の負荷が生じることでACL損傷が起こりやすい」

と書かれており、Knee-in toe-outは原因の1つと考えられていたが、これは断裂後に起こっている可能性があるとしています。

図を用いて説明すると

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ジャンプ着地後
A:膝に外反力が加わる
B:MCLが緊張し外側コンパートメントに圧迫力が生じる
C:この圧迫により大腿骨外顆が後方に偏移。脛骨前方移動および下腿内旋が生じる(ACL損傷)。
D:大腿骨内顆も後方に偏位。足部が地面に固定されているのも相まって脛骨が外旋する。

となります。

着地の際に膝関節だけでなく股関節や足関節のエネルギー吸収が不十分となることで、ACL損傷の要因となっていることが考えられます。

このことから、ACL損傷の予防として膝関節だけでなく股関節へのアプローチがより大事になってくることが考えられます。


まとめ

今回はACLの解剖〜受傷メカニズムについて書いていきました。

・ACLの役割:①脛骨の前方移動を制御 ②膝関節の内旋過伸展などを制御。
・損傷パターンとして、非接触型が多い。
・Knee-in toe-outは原因の1つと考えられていたが、これは断裂後に起こっている可能性がある。

このような知識を踏まえながら、評価・アプローチに活かしていきましょう。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。


引用・参考文献

・筋骨格系のキネシオロジー
・カパンディ関節の生理学 II下肢 原著第5版
・関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 下肢 改定第2版
・Koga H,et al.Mechanisms for Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injuries Knee Joint Kinematics in 10 Injury Situations from Female Team Handball and Basketball. Am J Sports Med.2010 Nov; 38(11):2218-25.


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