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足関節の疼痛や可動域制限を起こす原因の1つ!〜Kager's Fat Padを攻略せよ〜

今回は、Kager`s Fat Pad(アキレス腱下脂肪体:以下KFP)について書いていきます。

アキレス腱断裂や足関節周辺骨折例など足関節のリハビリを行う上で必ずといっていいほど問題になってくることとして、疼痛や可動域制限があげられます。

その疼痛や可動域制限を起こす原因の1つとして、KFPの柔軟性・可動性低下があります。

脂肪体???

と思う人もいるかもしれません。

恥ずかしながら・・・自分も学生の頃は全然知りませんでした。

そもそも足関節周囲には多くの滑液包や脂肪体が存在し、組織間の摩擦を抑え関節運動を円滑にする役割をもっています。

そのため、長期固定や炎症により萎縮や線維化が生じてしまうことで、KFPの移動量が減少し疼痛や可動域制限の要因の1つとなります。

そんな足関節をみていくうえで非常に大事なKFPについて、特徴〜評価〜アプローチ方法まで書いていきます。


Kager`s Fat Padについて

KFPはアキレス腱、踵骨上縁、長母趾屈筋より構成されるKager`s triangle内に存在する足部で1番大きい脂肪組織で、関節運動や直接圧迫を加えることで形態が変化します。

これによりアキレス腱周囲の滑走性を促し、摩擦軽減に役立っています。

冒頭でも書きましたが、KFPの柔軟性・可動性低下により可動域とくに背屈制限に関係することが多い印象です。

KFPは主にアキレス腱パート・長母趾屈筋パート・滑液包ウェッジパートの3つのパートに区分されています。

それぞれの役割として

○アキレス腱パート:アキレス腱に入り込む血管の保護
○長母趾屈筋パート:底屈中の滑液包ウェッジの運動に寄与
○滑液包ウェッジパート:後踵骨滑液包の内圧調整(アキレス腱-踵骨間の)圧変化を最小限にする

となっています。

KFPの動きとしては、足関節の底背屈にあわせて背屈ー底屈へと動いていきますがとくにアキレス腱パートと長母趾屈筋パートでは反対の動きをします。

どういうことかというと
(背屈時は)
アキレス腱パート(背側)遠位へ移動
長母趾屈筋パート(腹側)近位へ移動

(底屈時は)
アキレス腱パート(背側)近位へ移動
長母趾屈筋パート(腹側)遠位へ移動

文字だけだと分かりづらいので、それぞれのエコーを使った実際の動画をみてみましょう。

こうやって動画でみることができるのでありがたい時代になりましたね。。

臨床的には、変性にともなう症状も多いため長母趾屈筋パートの動きをだしていくことが大事になってきます。


評価

評価はシンプルにKFPの左右差をみていくか、底背屈の左右差をみていきます。

触診のやり方として

①内果を触診
②すぐ後ろに長母趾屈筋がある(母趾を屈曲させると動く)
③その後ろに脛骨神経がある(強く圧迫するとしびれが出るので注意)
④その後ろにKFP(脂肪組織なので柔らかい感触)
⑤1番後ろにアキレス腱がある


アプローチ

アプローチに関してはシンプルです。

・直接脂肪組織を上下、左右に動かして柔らかくする。
・長母趾屈筋の収縮を促してKFPの滑走性を出す。
以上です。

と言いたいところですがもう少し詳しく書きますね。

1、直接脂肪組織を動かす。

  脂肪組織は全方向に動くことが大切なので、さきほどの触診を参考に徒手にて上下左右にリリースしていきます(底背屈の動きも入れるとさらにGood!)。 
このときに大事なのは指先ではなく指腹でつまみながらやって下さい。 
さらに、脂肪体は脂肪のため熱で溶けやすいという特徴があります。そのため徒手だけでなく超音波の使用もおすすめです。


2、長母趾屈筋の収縮を促してKFPの滑走性を出す


   

先ほども長母趾屈筋パートの動きを出すことが大事と書きましたがまさにこれです。   
そのため、アキレス腱断裂や足関節周囲骨折例などのギプス固定のときから足趾の運動として指導しています。   
ただし術直後は腫脹による影響もあるため低負荷での他動運動から行うようにしていきましょう。


まとめ

今回はKFPについて書いていきました。

KFPは
・疼痛や可動域制限の要因の1つになりやすい。
・アキレス腱、踵骨上縁、長母趾屈筋内に存在する脂肪組織
・アプローチは徒手や長母趾屈筋の収縮を利用する。

こういったところでしょうか。

今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


参考文献

林典雄ほか:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション 下肢,改訂第2版,P218-219,メジカルビュー社,2014

Theobald P, et al:The functional anatomy of kager's fat pad in relation to retrocalcaneal Problems and other hindfoot disorders, J Anat 208(1):91-97,2006

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