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第4回テーマ「グチ活」のススメ

拙著「グチ活」会議-社員のホンネをお金に変える技術-

今回は拙著「グチ活」会議にて論じている組織活性化の考え方である。日本の会社は縦型の組織であり、メンバーシップ型と言われる。アメリカや中国はジョブ型で仕事にスペシャリストを求める。メンバーシップ型は会社に就職するという意識が強く、どの部署に配属されるかは会社に任せる事になる。ジョブ型は能力を買う、つまり専門職を雇うのに対して、メンバーシップ型は雇った後に育てるという前提の上に成立している。

昨今、現24歳以下のZ世代の若者が社会で注目を集めている。彼らは物心ついた時にはスマートフォンを手にし、バイブルは世界で4億5千万部売れた「ONE PIECE」だ。海賊王になるという明確なビジョンの元、上下関係ではく仲間という意識で目的を達成しようとする世代。彼らはSNSの住人で目立ち過ぎないように周囲に忖度しながら「いいね!」を希求する世代。そして不安で不確かな時代を生き抜いてきた彼らは「成長」と「貢献」をモチベーションの源にしている。彼らの社会出現により、これまでの日本型の組織文化の「ほころび」が加速しているようだ。

年功序列、終身雇用、企業別労働組合という日本型組織の3種の神器はもはや遠い昔のことになってしまったが、年功序列の中にある上位下達という概念が様々な弊害を生んでいる。端的に述べるならば上司は部下よりも偉いという感覚が今の若者には受け入れられないのだ。今や給料を払っているのだから働くのは当然だ、評価をするのは上司なのだから指示に従うのは当たり前だという暗黙の了解の上に成り立っていた組織論が機能しなくなっている。少子高齢化が加速し、若手の求人倍率はどんどん上がっていくだろう。つまり、彼らにとってはいくらでも好きな会社に転職できる環境になっているということだ。

これまで日本型組織は建前の文化で成立していた。建前の文化とは総論賛成各論反対は合意とみなすという文化のことだ。コロナ禍の前までは日常の風景であったアフターファイブの居酒屋。会社や上司のグチを言い合い、適度なストレス発散の場があった。私からの提案は、これからはアフターファイブではなく、就業時間内でグチや本音を語り合おうという事だ。

人が求める本質はブラックやでもホワイトでもなく、透明性ではないかと思っている。本当のこと、真実の情報に人は安心感を覚え、そういう場に人は集まってくる。上司も部下も大人も若手も本音を語り、課題を共有して、共に乗り越え、知恵を出し合う協働関係を作れるかどうかに企業の存続がかかっている。会社で安心してグチや本音を言い合えるかどうか。

グチは本音であり、本当はこうあったらいいいなという理想の裏返し。誰でも仕事のしやすい環境でストレスなく働きたい、やり甲斐のある仕事をしたいと願っている。そのためにはこれまでの日本型組織の弊害、建前の文化を「本音」の文化に昇華できるかどうかである。それは上司が社員のグチを新たな時代の起爆剤として捉えられるかどうかにかかっている。
(日本食糧新聞掲載 令和3年7月14日)

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