見出し画像

『失恋レストラン』

僕の失恋レストランは、勝浦の海沿いのカフェバーだ。学生の頃の甘く切ない思い出。サークルの合宿の時から、ひそかに思いを寄せていた1年先輩の彼女。ロックできっぷのいい姉御肌。

些細なことで友人と喧嘩をし、気持ちが落ち込んでいたあの日。「何を暗い顔をしてるんだい、君は!」と背中をポンっと叩かれ、振り返った瞬間から僕の彼女への恋は始まった。

その後は何度か飲みに行って、はしご酒をした夜もある。ある夜、彼女は道端で大の字に寝ころび、「おい、まだまだ飲むぞ~」と叫びながら寝てしまった。しかたがないので、おぶって自分のマンションまで連れて帰り、そのまま彼女をベッドに寝かせた。すやすやと気持ちよさそうに眠る彼女の横顔を見ながら、眠れぬ夜を過ごした。

ある日、彼女が海に行こうと誘ってきたので、勝浦の海岸に行った。水着の彼女は、意外に胸が大きく、水着からあふれそうだった。太陽の下で輝く彼女の笑顔が眩しかった。僕はなかなか目を合わせることができなかった。

その日は、彼女と夕日を見ながら、海沿いのカフェバーで、ライム入りのコロナビールを飲んだ。あの時のきらきらした思い出がよみがえる。

二人でビールを2本ずつ空けた後、次に飲むものを選んだ。彼女はカンパリ―ソーダを頼み、僕はテキーラを注文した。テキーラにはレモンが添えられていた。レモンを少し噛んで、テキーラを口にした。初めて飲んだテキーラは、アルコールがきつく、少しむせた。

すると、彼女は微笑みながら、僕のテキーラを手に取り、レモンをかじって、一気に飲み干した。

しばらく、楽しい時間が過ぎて、いい感じでお酒も回ってきた時に、僕は心に決めていたセリフで、告白しようとした。その時、彼女は僕にキスをした。しばらく、彼女との幻想的な時が流れた。

僕が改めて、彼女に自分の気持ちを伝えようとしたその時、彼女から言われた。

「私、好きな人がいるんだ。」

僕は言葉に詰まった。いや、あまりの衝撃で言葉が出なかった。「それは誰ですか」と辛うじて聞き返した。「それは、言えない」と。

僕は知っていた。彼女はサークルの先輩に恋をしていた。でも、その人にも彼女がいた。そのやり切れない思いを、僕との時間で紛らしていたのだろう。とてもせつない時間が流れた。

今でも時々思い出す。彼女はあの時、誰にキスをしたのだろうか。

その夜、彼女を駅まで見送り、お別れをした。

僕は再び海辺に向かい、バドワイザーを飲みながら、潮風を浴びた。そして泣いた。海を眺めながら、ウォークマンにカセットテープを入れて、流した曲はサザンオールスターズの「Oh!クラウディア」

~恋をしていたのは、去年の夏の頃さ♪~

早く、時が過ぎ去ればいいのに。真夏の夜の切ない青春の思い出。。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?