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私がコンサルタントになった理由と今こそ企業人へ伝えたいメッセージ

noteにこめた思い


初めまして。仁科です。コンサルタント歴23年になります。これまでたくさんの人たちと出会い、様々な企業のコンサルティングを経験してきました。組織変革と業績向上を目的としていますので、どの案件もとてもスリリングで毎回緊張が走る場面があります。振り返るとすべてのクライアントの皆様に成長をさせて頂いたという思いでいっぱいです。感謝とともにその経験や学びをシェアし、コンサルタントを目指している方やノウハウを学んでみたいという方に少しでも役に立つ情報をお伝えできればと思っています。その第一弾として私の略歴、コンサルタントを仕事にした理由、失敗、挫折経験、組織変革に必要なたった一つのキーワード、そしてすべての企業人に伝えたい事をまとめました。是非、ご一読ください。


著者略歴


私は大学を卒業後、Aの素という食品会社に就職をしました。その頃偶然にもコーチングに出会い、日本初のコーチ養成機関で学びながら、コーチングの可能性と魅力に惹かれコーチとして30歳で独立。その後、コーチングをサービスの軸にした研修会社を立ち上げました。当時はまだコーチングがあまり知られておらず、理解してもらうのも一苦労でしたが、「すべての答えは相手(部下)の中にある」という考え方がとても斬新で、ワークショップを開催すると、多くの方々にお集まり頂きました。セミナー後は参加者とこの新しいマネジメント手法の可能性をワクワクしながら議論をしたのをよく覚えています。あれから20年、いまでは企業のみならず、パーソナルな分野でも広く行われるようになったコーチングですが、当時を振り返るととても感慨深いです。

コンサルタントへの転身の経緯


32歳で初めてコーチング研修を行ったのが、五反田にあった化学系の会社でした。1泊2日の研修でしたが、まだ、講師としての登壇経験も少なく、現場では試行錯誤、ドタバタ、汗だくで講座を運営したのを覚えています。受講者のほとんどが年上の方ばかりでしたが、とても温かくご受講を頂きました。当時の未熟な講座運営を思い出すと恥ずかしくてなりませんが、貴重な経験を積ませて頂いたことにもはや感謝の言葉しかありません。


その後はONEtoONEのパーソナルコーチングを取り入れながら、管理職の悩みをサポートするというというスタイルへと変化していきました。そして、アクションラーニング(問題解決のファシリテーター)による組織開発支援を経て、組織変革のプロジェクトリーダーの依頼が増え、次第に業績請負型のコンサルティングへと転換していきました。


コンサルタントとしての失敗と挫折


今ではコンサルタント会社の代表としての肩書を持ち、大手企業の経営者や役員方々からアドバイスを求められる立場になりましたが、コンサルタントに転身した当初は大きな失敗も経験しました。

忘れもしない30代後半、当時の自分には途轍もなく難易度の高い組織変革プロジェクトを請け負った時のことです。最初から最後まで、現場の方々と心が通じ合えず、信頼もされないまま、最後は担当者からも責め立てられ、契約解除を言い渡されるという大失態をしてしまいました。その時、クライアントの部長から言われた一言が今も忘れられません。


「やれる力がないなら引き受けないで頂きたかった。」


心が折れたとはこの時のことをいうのでしょう。翌日はショックと惨めさに打ちひしがれ、会社に行けず、その日は夜遅くまで赤ちょうちんを転々と飲み歩きました。能力の無さを真っ向から否定されると、さすがに力が尽きます。私はこの時初めて「人はどんなに頑張ろうと思っても、力がはいらない時がある」ということを実感しました。


それから本来の自分にもどるまで半年かかりました。本来に戻るというよりも、まったく考え方を変えて復活したという方が正しいのかもしれません。まさにどん底にたたきつけられたその半年間で学んだことは、「ビジネスは課題から逃げても必ず追ってくる」ということです。課題を解消しなければ決して前には進めないのです。その時の私の課題は「自分ひとりで抱え込んでしまうこと」でした。言葉を変えれば、解決策が見いだせないまま、無意識に問題から目を背ける癖がありました。その結果がクライアントの信頼を失墜し、契約解除という事態になったのです。問題から逃げていたことが問題だったのです。その後、いくらお酒を飲んでもいつまでもその問題が消えることはありませんでした。


自信の芽生え


このような失敗や挫折を経てきた私はある時から「逃げない、キレない、手を抜かない」事を心に決めました。それ以後は、目の前のクライアントに全力投球するというスタンスに180度変わりました。「もう、後戻りしたくない、あれほど悔しい思いは2度としたくない」という思いがバネになりました。そして、全力投球、逃げない経験を重ねるうちに次第に自分の中で問題解決のパターンが見えてきました。そこまできてようやく、コンサルタントして生きていけるという少しの自信を持つことができるようになったのです。今ではあの逆境が自分を強くしてくれた、あのことがあったから強くなれたと確信できます。そう思うと、あの逆境には感謝の言葉しかありません。

ヘーゲルの法則

余談ですが、ヘーゲルの弁証法に、「量は質に転嫁する」という法則があります。私がコンサルタントになれたのは、まさにこのパターンでした。様々な業種のコンサルティングをがむしゃらに行ってきた経験が、ある時、質に転嫁したと思っています。今では私のように能力が人並以下でも、数をこなせば、質に転嫁する時が必ずくると確信できます。そして経験の数が能力に転換する瞬間は誰にでも訪れる。そのことを体験してからは、不思議と何物にも動じない自分でいられるようになりました。

日本の生産性が低い理由


私はこれまで日本の生産性がなぜ低いのかについて疑問を抱いてきました。統計的には日本は先進国中最下位の低さだといわれています。しかし、20年のコンサルタント経験から、今では日本の生産性が低い理由がよくわかります。それは、多くの人は仕事に対するモチベーションが低いという事です。生産性とモチベーションは直結しています。例えば、やる気のない営業マンが高い業績を叩き出すことはありませんし、やりがいを見出せないスタッフが職場改善のアイデアをどんどん提案することなどもありえません。つまり、企業人が相対的に働くモチベーションが低いので、日本の生産性が低いのです。

働き方改革だけでは生産性は上がらない

一方では、働き方改革が進み、働く環境としては良き方向に向かいつつあります。残業時間を減らす、リモートワークを増やす、ダイバーシティを進める等を整備することは良いことだと思います。しかし、残念ながらそれらは不満足の解消にはなりますが、働き甲斐を高めることにはなりません。これはハーズバーグの二要因理論(動機づけ理論・衛星理論)でも明らかにされています。衛星要因、つまり不満足要因をいくら解消しても、満足要因を高める事にはならないのです。ここでいう満足要因とは、達成感、成長感、連帯感などを指します。

日本人のモチベーションが低い理由

しかし、そもそも何故、日本人は働くモチベーションが低いのでしょうか。その主な要因は大抵の人が上司からの指示待ちで仕事をしているのが要因だと考えられます。もっというと、上司からの指示命令を甘んじて受けている状態がモチベーションを下げているのです。会社は当然、理念を掲げ、その実現に向けて目標を設定し、各部署に予算を振り分け、それぞれの役割と責任を果たすことが求められます。部署の責任者はその責任を果たすために、部下に指示命令を出すわけです。それ自体が問題なのではありません。サッカーでも監督が戦略を考え、勝つためのフォーメーションを組み、指示を出します。しかし、ここでの問題はチームにいながら、指示を待っているだけの状態か、戦略を理解しながらも状況に応じて臨機応変に対応し、自律的に参画しているかどうかです。つまり、日本の生産性が低いのは、前者のタイプが多いからというのが、私が出した結論です。


会社でよく見る風景


指示をまっているだけの状態を別の現象に置き換えると、自分の意見を言わないということです。よく会社で見られるシーンに、声の大きい人に引っ張られる会議、定例の数字報告だけに終始する会議、最後は上席の一言で終了してしまう一方的な会議があります。本当はそのような場にいながら、感じていること、思っていること、言いたい事があるはずです。しかし、それを言葉にせずに唯々、時間が過ぎるのをまっているということはないでしょうか。実際、自分の意見を出し合って、会議の質を高め合いながら、新しいアイデアを創発するような価値のある会議にはめったにお目にかかれません。特に、大企業であればあるほどこの傾向は強いように思います。結果として、ぶら下がり社員が増え、帰りの居酒屋で会社や上司の愚痴や不満を言い、翌日は気乗りのしない会社に漫然と通勤するというのが、残念ながらコロナ禍前の日本の多くのサラリーマンの日常風景だったのです。


やる気を引き出すために伝えること


それではどうしたらもっとやる気がでて、働き甲斐のある会社に変われるのでしょうか。私がこれまでたくさんの現場で組織変革を支援してきました。そして一つの答えに行き着きました。それは「本音を語る」ということです。私は組織変革プロジェクトの導入では必ず冒頭に参加メンバーにお伝えすることがあります。それは、
「みなさん、本日はお互いにとって価値ある時間にしましょう。そのためには本音を語ってください。建前で話をされてもお互い時間の無駄になります。」
どの現場でも私は必ずこの冒頭から入ります。なぜなら、建前論に終始して、遅々として変革がすすまない現場をいやというほど見てきたからです。いくら建前で語られても、お互いの信頼関係は築けないのです。そして、信頼関係が築けなければ本気になれない、本気で議論をしない限り変革は進まないのです。


「本音」とは何か


ここで改めて、本音とは何かを考えてみたいと思います。居酒屋で会社や上司の愚痴や不満をいうのは良くあることです。しかし、少し考えてみて下さい。ここで話されることは建前ですか、本音ですか。このような場面では飲みながらとはいえ、みなさん本音を語っているのではないでしょうか。つまり、それが愚痴や不平、不満だとしても、そこで語られることは本音であり、本心であるということです。問題はオフタイム、社外で本音が語られていることです。不満は社外でこそこそ語っても何の価値もなく、ましてや変革につながることは決してありません。しかし、それを居酒屋でなく、社内で堂々と組織の問題として語られるのであれば、これほど価値のある議論はないのではないでしょうか。

私はここに焦点を当てたいと思います。居酒屋では語れるのになぜ、社内の会議で語ることができないのか。それは日本の社会では愚痴や不平を言うなという暗黙のルールがあるからです。愚痴や不平を言う前に、黙って仕事しろ!という暗黙の了解みたいなものがある、その前提が愚痴を悪者扱いにしてきたのです。それでは、愚痴と意見は何が違うのでしょうか。それは、陰でいうか、堂々というかの違いです。それは、居酒屋で仲間うちにしゃべるのか、建設的な意見として上司に提言するのかの違いです。それは思わず口をついてしまうのか、整理して発言するのかの違いです。つまり、本質は何も変わらないのです。それはフォーマルな場で、フォーマルな言い方でいえるかどうかの違いです。しかし、このわずかな違いが、働くモチベーションに影響し、日本の生産性を下げているというのが実態なのです。建前が前提のコミュニケーションが日本の企業文化になっているのが現実なのです。建前にいくら火をつけても着火しません。しかし、本音を掘り下げれば本心に行き着きます。本心に火をつければ本気になります。本気はモチベーション以外の何物でもありません。
いかがでしょうか。今企業に必要なのは不平、不満を堂々と語る事なのです。このコロナ禍の今だからこそ、変革のために愚痴を大いに語ることが必要なのです。企業も愚痴や不平、不満を悪者扱いせずに問題発掘のきっかけにすればいいのです。

「グチ活会議」とは


私はコンサルティングの現場で冒頭の話をした後に、「グチ活会議」と称して、愚痴、不平、不満を付箋紙に書き出すというワークを行います。ルールは1、できるだけ多く出すことと 2、守秘義務を守ること 3、言ってはいけないことは何もない、です。最後の1滴を絞り出すまで行います。このワークを行うと、その場に共感が生まれ、次第に問題の本質が浮き彫りになってきます。問題が明らかになると、その問題を解決したいという思考を働かせるようになります。そして、一人ではできないが、複数のメンバーではできるかもしれないという意識が芽生えてきます。そうです、愚痴は組織の問題をあぶりだし、解決から変革へと向かうための大切な源泉なのです。

日本人の真の底力とは


私は日本のサラリーマンの方々の能力は先進国の中でも上位を占めると思っています。世界でもこれほど、勤勉で、まじめに、そしてチームワークを重んじる民族は他にないと思います。事実、世界の評価も日本の企業人の能力に関しては高い評価をしています。しかし、能力は高いが生産性は低いというこのギャップを考えたときに、私は「本音が語られていない」ことが一番の要因であるという結論に行き着きました。そして、ひとたび本音を語りだしたチームの変革力はすさまじいものがあります。

2年で売上を15億から30億にしたIT会社、たった1年で利益が5倍になった1部上場の食品会社などの事例は余多あります。そのすべての根底にあるのは、「本音を語れる組織への転換」だったのです。しかし、現実的に、既存の体制で、いきなり不平、不満を言えるかというと、おそらく難しいでしょう。だから、私は第3者として現場に入り、本音を語れる場作りを提供しているのです。

今すべての企業人に伝えたい事


誰もが経験したことのない困難な時代を迎え、これまでのパラダイムが大きく転換しようとしています。今だからこそ、本音で語ることの意義を多くの企業人に伝えたいと思います。ひとりでも多くの方に目覚めて頂き、組織変革の糧にして頂きたいのです。そして、仕事のやりがいを高め、日本の新しい未来を切り拓いて頂きたいと思っています。近い将来、日本の生産性が先進国の中で最上位になる日がくることを願っています。そして、日本人が古来から伝承してきた「自分のためだけでなく、世のため人のために働くこと、役に立つことにこそ価値がある」という勤労思想が、世界の模範となることを願っています。

今後は具体的なノウハウや事例をNOTEに積極的に発信をしていきたいと思います。そして、ともに組織変革を行ってくれるパートナーやコンサルタントを目指す方々と共有したいと思います。

この度は、最後までお読み頂きまして有難うございました。
忌憚のないご意見やアドバイスを頂ければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。


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