歌唱のスタイル 〜Estelle Liebling氏による〜

今回は声楽教師Estelle Liebling氏の教本から、歌唱のスタイルについて紹介します。
Liebling氏は声種ごとに発声教本を出しておりかなり参考になります。

スタイルとは何か?


それは「アーティスト性と音楽解釈の規律の適応」です。あなたがスケールを歌う時ですらも美しく歌う習慣を獲得するべきです。

声のポジションとテクニックが確保できない限り、スタイルを手に入れようとするのは時期尚早です。しかし、スタイルのない良いポジションの声と良いテクニックだけでは不十分です。
また歌手の教育が個々人の才能や声、明確な能力に適応したレパートリーの構成に至らない限り、歌手は公の場に出る準備はできていません。

歌唱スタイルの全ての要素について、最も印象的なのは音色です。作曲家は音色を調性、和音によって創造します。また楽器に存在している様々な音響効果の知的な使用によってダイナミクスの変更も加えています。
歌手は書かれた音楽に従うべきです。しかし声は歌手の楽器であり、他のどの楽器よりも大きな音響効果を作ることができます。
歌手は全ての重要な言葉の意味に合う音色を声に付け加えなければなりません。
悲しみ、怒り、絶望、喜び、愛情、全ての言語の全ての名詞、全ての形容詞は部分的な描写のために正確な音色の使用のために歌手のセンシティブな感覚を奮起させます。この声の音色の注目すべき能力のために、私たちはオーケストラの指揮者が楽器奏者にフレーズを「歌って」と尋ねている場面をよく見かけます。これは楽器が声という楽器を模倣しようとしているということなのです。

・偉大な歌手となるために、以下のことが必要です。

1.完璧なブレスコントロール(呼吸法)とテクニック
2.完璧なディクション(発音)
3.絶対的なイントネーション(抑揚、調音)の正確さ
4.それぞれの感情表現にふさわしい声の音色
5.美しく滑らかで流れるメロディーライン
6.完璧なメッサ・ディ・ヴォーチェ
7.思慮あるポルタメントの使用
8.難しい装飾音(トリル、ターンなど)の完璧な処理
9.作曲意図を汲み取った上でのテキストへの理解を可能とする教育を受けていること
10.あなたが感じていることや考えていることを観客に与える才能と技術

・特殊な問題


教師はその教育的キャリアを特殊な問題に遭遇せずに追及することはできないでしょう。全ての声は均等に不運な出来事から逃げられるわけではありません。一つ言えるのは、時々運悪く高音でのポジションが正しくなくなることがあります。時々高音が完全に出なくなることもあります。
(しかしながら、生まれながらにして「短い声」を持っており、高音域を拡張できないという歌手が存在していることを覚えておくと良いでしょう。)
高音が失われると中音域が弱められ、緊張したクオリティの声になるケースがあります。さらに、トレモロやイントネーション(調音)に関する問題まで併発することもあります。

・中高音の問題


高音域の達成に問題があったり、緊張して貧弱な中音域の歌手にとってハミングは計り知れない価値がある一つの例になります。
ハミング(HM)するとき唇は「緩く」閉じます。そして明るく、簡単にしかししっかりと歌います。

・高音のための練習
半音ずつスケールを上げて音域を広げていきます。
・中音域の練習
半音ずつスケールを下げていきます。そしてある程度さげたあとは半音ずつスケールを上げていきます。しかしあくまで中音域のスケール内で。

・トレモロ


トレモロになるのはいくつかある理由の内の一つが原因です。
1.歌いすぎによる声帯疲労
2.間違った音域の曲を歌っているため(高すぎるまたは低すぎるなど)
3.呼吸法による支えのテクニックが良くないため

トレモロの理由をすぐに決めるのは難しいので、教師にとっての賢明な指導はまず生徒に何日か声帯を完全に休めることを主張することです。その後ハミングのエクササイズから始め、短いブレスを用いた発声練習を使うと良いでしょう。

・間違ったイントネーション


誤ったピッチ、ピッチの悪さは「耳の悪さ」によるものだと思われます。この場合大抵は実質的に希望のない状態です。しかしながら、精神的な理由によるものの場合、生徒は自身を自由に表現する時に潜在意識の中で部分的な恐怖があり、結果的にピッチがおかしくなります。
しかし、時折悪いイントネーションは誤った声のポジションや出来の悪いディクションを導くことになります。そのようなケースでは『とても注意深く音節を発音すること』が声のポジションを正しい位置へと導き、イントネーションも完璧にしてくれます。
また、時折ディクションが良くない時は、『音色や音調の正確な位置にかなり注意を払う』ことがディクションの改善につながります。これらは実質交互にやりとりするべきプロセスでもあります。

・解釈


若い歌手は曲を学ぶ前にテキストの意味を理解しなさいと教わっているはずです。時にそれは必要なことです、なお言葉が歌手に十分にインスピレーションを与えてくれない時は音楽の美しさが歌手を奮い立たせてくれます。これに対して、もし歌が単に音楽であり、単調な詠唱(例え音が美しかったとしても)だった時、歌手は声の才能と同様に彼らの心も使えと教わっているはずです。
学生は作曲家が書いていないカデンツァの使用、装飾音は倹約することを学んでいるはずです。なんにせよ過度な装飾は良くないものです。

ハミングでのスケール

いかがだったでしょうか。
私の解釈ですが、ハミングは誤って使用すると口をキュッと閉じすぎて逆に緊張するので正しいハミングをまずは学んだ方が良いでしょう。正しいハミングをするためにとにかく注意深く感覚を研ぎ澄ますことです。

ハミングの他にもオープンハミングも良い勉強になります。色々試してみてください。
参考になれば幸いです。それでは!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?