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【読書録102】「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」9月編

「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」(致知出版社)を毎朝読むことを日課にしているが、今回は、9月の中で特に自分のなかで気に入ったものについて取り上げる。


9月8日 相手が自分を必要とする時は 牛尾治朗

 社会にでて、25年以上経つが、自分が本当にやりたいことが未だに分からないことが多い。
 ただ、求められることに対し、応えてきて、今がある。
常に真摯に応えてきたわけではなく、仕事から逃げてきたこともある。善き家族に恵まれ、会社の中でのポジションも上がり、やりがいを感じる仕事をやらせていただいているとは思う。でもそこにどんな意義があるのか?

そんな心境の私に牛尾会長の言葉が響いた。
牛尾氏は、お父様から会社を引き継ぐ意志はうすかったが、三十三歳の時に経営者としての道を選ぶ。
 その時の心境を「父の期待に応えることこそ、私の生きる道だと確信した」という。

 サルトルを引用してこういう。

「自分は誰も必要としないけれども、相手が必要とする時は、その必要のために生きるのも一つの実存である」とサルトルは言う。
人間誰しも生きていれば思い通りにならないこともあるだろう。しかし、その時に自分の希望ばかりに固辞するのではなく、相手の必要と期待に応える。それを自らの果たすべき使命と捉えることも自分一つの実存と言えるだろう。

 自分の気持ちに素直になることは、とっても大切。
一方で、相手の必要と期待に全力で応える。そこから見えてくるものもある。

9月10日 人生の後半をどう生きるか 外山滋比古

 
 この記事は、外山先生が、86歳の時のものである。
座右の銘を持つなら、自分の人勢から導き出した信念のこもった言葉にすべきとする。
そんな中、出合った俳句として、江戸時代の俳人・滝瓢水の一句を紹介する。

 浜までは海女も蓑着る時雨かな

 先生のこの句の解釈が興味深い。

これから海に潜る海女が、雨を避けるために蓑を着て浜に向かう。どうせ海に入れば濡れてしまうのに、なぜ蓑を着る必要があるのか。浜までは濡れずに行きたい、というのが海女の気持ちなのである。つまり人間は、少しでも自分を愛おしみ、最後まで努力を重ねていかなければならないのである。

そして、この日の記事は、こう締めくくられる。

最後の最後まで前向きに、少しでも美しく立派に生きる努力を重ねていくべきなのである。

 私もこんな心意気を持ち続けたいものである。

9月14日 時は心のうちにからだのうちに積もりゆくもの 山本富士子


 9月で一番、心に残るのが、この日。女優・山本富士子が亡きご主人から贈られたという一般の方が新聞に投書した詩の引用。山本さんは、小さな紙に書いて財布に入れて持ち歩いているという。

「砂時計の詩」
一トンの砂が、時を刻む砂時計があるそうです。
その砂が、音もなく巨大な容器に積もっていくさまを見ていると
時は過ぎゆくものではなく
心のうちに からだのうちに積もりゆくもの
と、いうことを、実感させられるそうです。
時は過ぎ去るものではなく
心のうちに からだのうちに積もりゆくもの

この詩を読んでの山本さんの感想も実に印象的

だからこそこの一瞬一瞬を大切に、一日一日を大切に、いい刻を自分の心や体の中に積もらせていくことが大事で、それがやがて豊かな心やいい人生を紡いでいってくれる。

 年を重ねないと気が付かないものがある。
一日一日を大切にしたい。致知や本書をよんでいるとそのことは本当に実感する。またお茶を習い始めて、季節や自然への感謝の気持ちを持つこと、周りに感謝の気持ちを持つことを感じることが多くなった。

「時はすぎゆくものではなく重ねるもの」
本当、素敵な言葉に出逢った。

9月23日 四耐四不 平岩外四


 安岡正篤師が、平岩外四に贈ったという「四耐四不」の書。王陽明の言葉であるという。

冷に耐え、苦に耐え、煩に耐え、閑に耐え、激せず、躁がわず、競わず、随わず、もって、大事を成すべし

平岩氏は、社長の孤独さを「冷」と言い、経営は、「苦」しく、「煩」わしいことの連続だという。そして、「閑」職に追われても、さらっと生きれるようにしなきゃいけないという。

そして、つまらないことに腹立てず、調子がうまくいったといって、はしゃがず、社長・副社長で競争し合ったりへんな喧噪みたいなことをやらず、かといってなんでもいいなりになってはいけない。

こういう心得でやっていれば大事ができると締めくくる。
言葉に実感がこもった解釈だ。中庸でいないといけないという事であろうか。実に深い言葉だ。

9月24日 覚悟を決めよう 井上康生


 「覚悟」について、全日本柔道代表監督の井上氏が語る。

オリンピックほど、生きがい、やりがいを感じられる場はないが、一方でその過程は苦しいことの連続だという。だからこそ覚悟が必要だとしてこう言う。

人間そこまで強い存在ではないので、本当の意味で覚悟を持たなければ、どうしても挫折したり、諦めたりということになってきます。

その覚悟をどう決めるか、井上さんは、スピードスケートの小平さんの講演を聴く。

自分はコーチによく覚悟を決めろと言われてきたけど、覚悟は外から言われて決めるものじゃない、覚悟は自分自身で持つものなんです。

井上さんもこの講演を聞いて「覚悟を持とう」という指導をしようと思ったという。
覚悟ほど、自発的なものもないであろう。自分が何に価値を感じるか。そこから始まる。

9月25日 運を強くするには人の道を守ること 樋口武男


大和ハウスCEOの樋口さんの言葉。

人の道を守らない人間に運なんてついてこないですよ。それと、親を大切にしない人間が他人様を大事にできるわけがないですよね。親を大切にするというのは恩ある人を大切にするという事です。
運を強くするには人の道をちゃんと守ることが一番大切だと思います。要するに人として当たり前のことを当たり前にする。凡事徹底ということです。

「運のいい人と付き合え、運の悪いやつと付き合うと運を取られるぞ」とオーナーに言われたというが、人は自分をどういう環境に置くかが重要なのだと思う。尊敬できる人、信頼できる人たちと付き合っていくのが大事なのであろう。

9月29日 いまが「どん底」だと分かればそれ以上は落ちない 山下弘子


 山下弘子さんことは、全く知らなかった。19歳で癌となり、25歳で既にお亡くなりになっている。
 
 癌で「余命半年」を宣告され、その後何度も手術を繰り返した経験からこういう。

たぶん、その時その時、辛いことはいっぱいあったと思うんです。でも、あまり覚えていないことも多いんですよ。人間ってうまくできているんだなって本当に思います。

 こんな言葉を言える山下さんの強さを感じる。
でもたしかにその通りだと思う。人生でお先真っ暗だと思ったことはたくさんある。でも今は、あんまり覚えていない。

そんな山下さんでも「どん底」になることがあるという。

「どん底」になると思考が停止し、頭が真っ白になって何も考えられないし、誰の声も届かなくなります。

傍にいる人がちょっと声を掛けてくれるだけで、ハッと我に返る瞬間があります。その時に初めて人の優しさや励ましの言葉を受け入れて立ち直ることができるんです。いまが「どん底」だと分かれば、それ以上におちることはない。あとは上がるしかないわけですから。

 ふとしたことがキッカケで気持ちが変わることは、よくある。「どん底」にいる時でさえ、我に返り立ち直ることができる。
  そう考えると常日頃のちょっとしたコミュニケーションの大切さを考えさせられる。
それと「どん底」と思ってもそれが続くと思わないことだ。

9月30日 知識、見識、胆識 豊田良平

 
 今月2度目の安岡正篤師。晩年繰り返し師が強調された言葉を紹介する。、

単なる知識ではいけない、それを見識・胆識にまで高めなければいけないよ。

見識だけではだめだよ。判断力だけでもだめだよ、胆識がなければいけないよ。

豊田氏は、胆識についてこう解釈する。

胆識というのは、物事をなす場合に、抵抗、障害を乗り越えて、とにかくどうしても実行して、それを必ず達成する。それが胆識です。

実行、そしてやり切る力、それこそ胆識という事だろう。

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