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ネット物販で南の島暮らし 6

第三章 どうやって売る?

 
 あれから何度も麻由さんと色々と話をした。

 彼女の家にもお邪魔したりして、子供たちとも仲良くなった。彼女の生い立ちや、なぜシングルマザーになったのかといったこれまでの人生ストーリーも聞いた。そして、彼女が作るアクセサリー作品に対する想いや、こだわりなども聞くことができた。

 私も私自身のこれまでのやらかしてきたストーリーや、真剣に人生の再チャレンジを模索していることなどを包み隠さず語ることで、彼女も私のことを信頼してくれたようだ。

 私が彼女のアクセサリーを仕入れて販売したいこと、広告宣伝費や販売管理費なども含めて考えると、仕入れ価格の四倍以上の価格で販売する…といったことも伝えた。

 最初は「そんな高い価格で…」と心配をしていたけれど、私は彼女の作品にそれだけの価値があると思うし、その価値をしっかりとお客さんに伝えることで、お客さんも高額であっても納得して喜んで購入してもらえると信じているという事も伝えた。
 そして仕入価格は彼女の希望通りの価格で仕入れて、その後の販売に関するリスクは全て私が背負うということで、任せてくれることに納得してくれた。

 …とは言ったものの…どうやって魅力を伝えればいいのか…?って、こんな時は『プーさんに聞け』だ。(笑)

 サンセットカフェで悶々としているところに、プーさんがやってきた。短パンによれよれのTシャツにサンダル…いつものリラックススタイルだ。

「よかったぁ。プーさん、実は例のアクセサリーを販売することにしたんですけど、次はどうすればいいんですかね?」

「ん〜、どうしたらいいと思う?」

「質問に質問で返さないでくださいよぉ。」

「ハハハ、でもさ、やっぱりまずは自分であれこれ考えてみないと、面白くないでしょ?言われたことをこなしているだけだったら、雇われているのと一緒じゃない。」

「…まぁ、そうですかねぇ。」

「だって、智恵ちゃんは起業家になるんでしょ?智恵ちゃんが社長になるんだよ。智恵ちゃんがこのビジネスに関しては、全ての責任を負う事になるんだよ。だから、人任せにはできないでしょ?」

「…はい。そうですねぇ。」

「もちろん、先人の言うことに従えっていう教えもあるし、成功しているビジネスモデルをそっくり真似しろなんて考え方もあるんだけどね。でも、ビジネスには絶対的な正解ってないんだよ。僕がやってみてうまく行ったことは教えられるんだけどさ、でも僕らのような個人レベルのビジネスはさ、本当に人によって結果は違ってきちゃうんだよね。僕と同じようにやって上手くいく人もいるし、上手くいかない人もいるんだよ。だから、最終的には自分で考えて行動するしかないんだよね。」

「自分で考える…ですね。」

「そう、どうしたらいいと思う?」

「う〜ん…まず、麻由さんの作品の魅力をどんな風にしたら、多くの人に伝えられるか…ですね。」

「そうだね。今はさ、いろんな媒体があるから文章で伝えることもできるし、画像で伝えることもできるし、動画でも音声ででも伝えることが簡単にできるようになったんだよ。でも、現時点では、やっぱり文章で伝えるのが、一番効率的なんじゃないかと思うんだよね。文章化することができれば、それをベースに音声でも動画でも伝えることができるようになるからね。」

「ってことはまずは、文章…ですかね。」

「う〜ん、そうなんだけどねぇ。文章を書くのって一番大変なんだよねぇ。(苦笑)いきなりこれに挑戦しちゃうと、途中で挫けちゃうかもなんだよねぇ。まずは、商品撮影から始めようか。」

「商品撮影。」

「そう。ネットショッピングってさ、商品を手に取って見れないでしょ。だから、商品を魅力的に見せる商品の画像ってのも、文章に負けず劣らずかなり重要なんだよね。」

「そうなんですね。結構難しそうですね。」

「いやぁ、でも今はスマホのカメラの性能がすごく良くなったから、あれで充分なんだよ。」

「え?スマホでいいんですか?」

「うん。全然オッケー。そりゃあポスターにするとか、雑誌広告に載せるとかなったらプロのカメラマンとそれなりの撮影設備が必要になるかもだけど、ネットショップの画像はさ、スマホだったり、せいぜいパソコンの画面で見られる程度だからさ、そんなに画質のクォリティが高くなくても大丈夫なんだよ。
それにさ、昔だったらフィルムで撮影して現像してなんて事で、失敗するとかなりコストがかかってたけどさ、今はデジタルデータだからさ、好きなだけ撮影して、その中から良いやつだけ選び出せば良いんだから、ほとんどコストもかからないのよ。」

「でも、いろいろと撮影道具とか揃えないといけないんじゃないですか?」

「いやぁ、撮影するものにもよるけど、僕なんか普通の白のコピー用紙の上で撮った商品画像で普通に売れちゃってるよ。(笑)」

「えーーっ!そうなんですかぁ!」

「そうなの。(ズボンのポケットからスマホを取り出して)このスマホで、コピー用紙の上で撮影したものでも充分なの。(笑)」

「そうなんだぁ。」

「もちろんね、色々とテクニック的なものはあるけどね。基本は、売れていそうなサイトの真似でいいんだよ。だから、売れていそうなサイトの画像をいろいろと見て研究してみて。」

「わかりました。やってみます。」

「まぁ、基本的なテクニックの話をしておくと、

●とにかく明るく撮影する
これね、自分で撮影してみるとわかるんだけど、屋内の撮影で普通の照明の下で、デフォルトの設定のまま撮影すると、かなり暗〜く写るんだよね。
だから、撮影の時から露出を調整してなるべく明るくなるように撮影して、それでも暗かったら、後から画像編集アプリでさらに明るさを調整したりするんだよね。

●自然光は最強
 まぁ、屋内の蛍光灯の下で撮影しても全く問題ないんだけど、やっぱり自然の太陽の光で撮影すると綺麗に撮れるよね。
あとは、屋外の自然物を背景に使うなんてのも良くあるよね。切り株の上とか、大きな葉っぱの上とか、流木の上とかで撮影するなんてのも、画面に動きが出て商品が魅力的に見えたりするんだよね。

●背景の工夫
 背景は、真っ白でも良いんだけど、撮影する物の色が白とか透明なものとかキラキラ光るものとかだと、白い背景だと商品の魅力がわかりづらかったりするんだよね。
だからそういう時は、黒とか灰色とかブルーといった色の背景を使ったりするといいよ。あとは、木の板とか、陶器のタイルとか、フェイクファーとかちょっと立体的なものの上に乗せて撮影すると、浮き上がって立体的に見せたりすることもできるね。

● 逆光も効果的
 人の撮影をするときは、逆光だと顔が暗くなっちゃうとかあるけど、商品撮影の時は逆に魅力的な写真になったりするんだよね。

● 正方形で撮影する
 ネットショップに写真をサムネイルって呼ばれる小さめの画像で並べて表示するような時にね、縦長だったり横長だったりするような画像が混在すると、見た目がガタガタになったりするんだよ。だから商品画像は正方形に統一しておいた方がいいんだよ。
普通に撮影してあとでトリミングするなんてこともできるんだけど、そうすると一部どうしても切り捨てなければいけない部分が出てきちゃったりするから、最初から正方形の設定で撮影した方が、そういった不具合は無くなるよね。

●お客さんがどこを見たいと思うかを意識する
 商品に興味を持ってくれたお客さんが、どこを見たくなるか?を想像して撮影をした方が良いよね。例えば、商品の裏側を見たいと思うかもしれないし、大きさがわかるような比較対象物と一緒に撮影したり、魅力をアピールしたい部分を、思い切りアップで撮影してみたりするのも良いと思うよ。
あとは、アクセサリーとかだったら実際に人が身につけている写真なんかもあった方が良いよね。置物みたいなものなら、実際に家の中に置いてみるとこんな感じ…みたいな画像も欲しいよね。

● 下手な鉄砲も数打ちゃ当たる
 さっきも言ったように、何枚撮影してもほとんどコストがかからないのだから、一つの商品ついてだけで何十枚も撮影して、その中からベストな画像を選べば良いんだよ。
あと、ショップサイトに掲載する画像も、一枚とか二枚とかしか載せていないサイトもあったりするけど、あれも勿体無いよね。ショップサイトに画像アップするのなんてコストもかからないし、やりようによってはいくらだって画像を掲載できるんだから、商品の魅力をアピールできるなら、何枚だって画像を掲載した方が良いと思うよ。
う〜んまぁ、こんな感じかな。とりあえず、バシャバシャ撮ってみてよ。(笑)」

「ありがとうございます。やってみます。」
 
 早速部屋に戻って撮影してみた。夜は屋内で部屋の照明だけで挑戦。蛍光灯の灯りで、なるべく明るくしてスマホのカメラで撮影してみた。

 確かにプーさんの言う通り、何も設定を変更しないで撮影をしてみると、真っ白なコピー用紙が背景なのに、実際に記録された画像は若干グレーに見える。商品の色もちょっと暗い印象だ。

 スマホの写真アプリで露出を上げながら撮影してみる。確かにほぼ目一杯まで明るくして撮影をすると背景が真っ白になって商品も明るく見えるが、ややボヤけた印象になってしまった。この辺りの微妙なバランスが重要なんだなぁ。

 でも、いろいろと試してみたり、他のショップがどんな画像を載せているのかを参考にしてみたりして何枚も撮影していくと、なんとなくそれらしい商品画像が撮影できるようになってきた。

 翌日は、商品をいくつか持ってビーチで撮影。ビーチには流木があったり、緑の大きな葉っぱがあったり、貝殻や珊瑚があったりと、背景や小道具には事欠かない。石垣島サイコー!(笑)

 確かに、自然光で撮影した画像は、どれも特に何も加工などしなくても魅力的に見える。屋内で撮影した時よりも、色も鮮やかに輪郭などもハッキリと写っている感じだ。

 『そうだ、このビーチの景色や空も、どこかに使えるかもしれない』と思ってバシャバシャと写真アプリのシャッターボタンをタップしていった。

 この景色を紹介するだけでも、きっとお客さんを楽しませることができるだろう…そう思うと、本当にこの島にはたくさんの豊かさで溢れているように思えてきた。


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