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ネット物販で南の島暮らし 15

第五章 信頼関係づくり
 
 スマホの画面で、はじめて注文が入った通知が目に入った時は、少しパニックになってしまった。(汗)

『えっ!ど、ど、どうしよう!…』

 声には出さなかったが、思わず周りを見回してしまった。しかし、すぐに気を取りなおすと嬉しさが込み上げてきた。

『ヨシっ!』

 周りの人には気づかれないように、拳を握り締め小さくガッツポーズをした。
 
 乗り換えの駅でホームに降りると、まずは慌ててプーさんに電話してしまった。

「はい。もしもーし。」

「あの、プーさん。ちゅ、注文が入っちゃいました。」

「おおぉ!智恵ちゃん?おめでとう。初注文だよね。」

「はい。そうなんです。ど、ど、どうしたら良いでしょう?私今、東京なんですよ。」

「そっかぁ。商品を発送できないんだね。でも、商品は麻由さんところにあるんでしょ?」

「はい。」

「じゃあ、麻由さんに発送して貰えば良いじゃない。」

「そうですね。多分大丈夫だと思います。」

「同梱物とかって、準備はしてあるんでしょ?」

「はい。それはもう準備してあります。」
 
 ショップをオープンする際に、受注から発送、発送後のフォローまで、一連の流れはシミュレーションしておいた。その中でも、プーさんから同梱物の重要性についてアドバイスを受けていて、商品と一緒に同梱する販促物の用意はしてあった。

 プーさん曰く『商品を届けるというのは、ネットビジネスではリアルにお客さんに接触できる貴重な機会だから、そのタイミングを有効に活用すべきなんだ。だから、同梱物に何を入れるかがとっても重要なんだよ。』という事だった。

 そこで同梱物として用意したのが、
 
★    ネット上では伝えづらい親近感と、人間性を伝えるために手書きのお手紙のコピー
★    口コミになりそうな商品の魅力や製作秘話、作家の詳しいプロフィール紹介などを載せたリーフレット
★    お財布などに入れて持ち歩けるようなショップのU R Lが記載されたネームカード
 
 といったものを作っておいた。
 要は、リーフレットやネームカードなどでクチコミを広げやすくする仕掛けなのだ。ネットとリアルを融合させるマーケティング戦略…ってことらしい。
 そして、麻由さんのところから発送してもらう事もあるかと思って、あらかじめこれらの同梱物も麻由さんに預けてあった。
うん、ナイス判断だったよ、私。商品の発送は麻由さんにお願いすれば大丈夫そうだ。
 
「お客さん第一号だね。このありがたい気持ち、忘れないでね。」

「はい!めちゃくちゃ嬉しいです!ホントになんていうか…ありがとう!って感じです。」

「そのまんまやないかいっ!(笑)そういえば、宿題はやったのかな?」

「あ、はい。昨日実家に帰って、両親と話しました。前に、同じような話になった時はめちゃくちゃ反対されたんですけど、なんか今回はあまり反対されずに、なんか最後は自然と応援してくれるみたいになっちゃったんですよね。」

「そっかぁ。多分、智恵ちゃんの情熱と覚悟が伝わったんだと思うよ。しっかりと地に足がついた感じでね。」

「うん。…そうなのかもしれません。」

「…で今日、初めての注文が入ったんだ。」

「はい。実家から帰る途中の電車の中でスマホがなって…それで今、電車を降りた駅から電話しているんです。」

「そうなんだぁ(笑)…シンクロだね。」

「シンクロ?」

「そう。シンクロニシティ…意味のある偶然…って感じ。」

「意味のある偶然…」

「まぁ、ちょっとスピリチュアルな話になっちゃうけど、こういう事って結構あるんだよね。ご両親との関係が癒やされてわだかまりみたいなものがなくなると、不思議とビジネスもうまく回り始める…なんて事があるんだよ。」

「そうなんですねぇ。…なんとなく、わかるというか…実感しました。」

「うん。なんて言うか、『自分は愛されていいんだ』って、自分に許可が出せるようになるんだと思うんだよ。」

「…許可。」

「大抵の人はさ、自分が誰か他人から愛されるとか、優しくされるとかって信じられていないんだよね。いきなり知らない人から親切にされたら『怖っ!』とか思っちゃうでしょ?(笑)だから『お客さんからありがとうと言う感謝の気持ちのこもったお金なんか受け取れるはずがない』…なんてことを潜在的に信じてたりするんだよ。そうすると、その信じていることが現実として現れてくるっていうか、目に入ってくるわけ。そうすると『ほらね。やっぱりね。』って、さらにその信念を強化しちゃうんだよね。でもね、ご両親に限らず身近な人から『自分は愛されているんだ』って感じられている人は、他人からも愛されるって可能性を信じられるんだよね。つまり、『自分は愛されていいんだ』っていう許可を、自分自身に出せるようになるわけ。そうなってくると、お客さんとも良好な関係が築けるようになって『お客さんは、喜んで自分にお金を払ってくれるんだ』ってことを信頼できるようになって、ビジネスもうまく回ってきだしたりするんだよ。」

「…そうなんですね。でも、私みたいにネット通販でお客さんと直接お話しする事の無いようなビジネスでもそうなんですか?」

「そうなんだよ。不思議なことにね。僕なんかも身内の人間関係がギクシャクしているような時は、ビジネスも同じように滞るというか、実際に注文数が減ってきたりするんだよ。」

「へぇ…そんな事あるんですねぇ。」

「だからさ、ご両親とかパートナーとかとの人間関係はすっごく大事だったりするんだよ。…って、電話で長話ししちゃったね。ごめん!」

「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

「まずは、麻由さんに連絡して、発送の準備を進めてもらった方がいいよ。」

「はい!わかりました!」
 
 電話を切ると急いで麻由さんにも電話をかけた。

「もしもし、麻由さん?あの、注文が入っちゃったの!」

「えぇ、ホントに?すごーい!」

「それで、私まだ東京で発送できないんで、申し訳ないんだけど麻由さん発送お願いできる?」

「もちろん、大丈夫。」

「ありがとう!それで、前に話したみたいにリーフレットとかを同梱してもらいたいんだ。」

「了解了解!まかせておいて。」

「ありがとう〜〜」

「でも、すごいねぇ、ホントに売れちゃうんだねぇ。」

「うん。今回のお客さんは、埼玉県の人。後でメールで配送先の住所とか、発送する商品の情報とかを送るからチェックしてね。よろしくお願いします。」

「わかった。明日には発送しておくね。」

「ありがとう!」

 こうやって、喜びを分かち合える人がいるって、ありがたいなぁ。初めての注文もホントに嬉しかったけど、プーさんや麻由さんみたいに、一緒になって喜んでくれる人がいる…それがホントにありがたかった。
 
 麻由さんが翌日には商品を発送してくれて、無事に初めての注文をお届けすることができ、更にその翌々日には、私も石垣島に帰ってくることができた。

 約十日ぶりの石垣島は相変わらず、湿度の高い暖かい空気で私を包んでくれた。なぜなのかわからないが、シンプルにホッとする。
ここが私のいるべき場所なのだ…そんな風に感じる。

 更に私は、余分な荷物を処分しまくって本当に身軽になってしまった。いわゆる断捨離ができたようで、気分的にもスッキリしている。
これからの自分の未来への静かなワクワクを感じていた。

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