見出し画像

ネット物販で南の島暮らし 16

 サンセットカフェに戻ると、早速プーさんのレクチャーが始まった。

「まずは、初注文おめでとう。これが第一歩だからね。でも、売ってしまったらお終いってわけじゃないからね。ここからが、更に本格的にビジネスを深めていく段階だからね。お客さんと信頼関係を築いて、さらに何度も、さらに高額な商品を買ってもらえるような関係性を築いていくんだからね。」

「はい。さらに何度も、さらに高額ですね。」

「そう。マーケティング用語で言うとL T V=ライフタイムバリューなんて言ったりするんだけどさ、日本語にすると『生涯顧客価値』ってこと。一人のお客さんかがどれだけ自分の店で買い物をし`てくれるか?って事なんだけど、これがとっても大事なわけ。」

「L T V…ですね。」

「こう言うことを考えないで、売ってしまったら『ハイ。お終い』みたいなビジネスをやっていると、売り上げも安定しないし、続けるのが苦しくなっちゃうんだよ。僕らみたいな小規模のビジネスはさ、一度買ってもらったお客さんに、何度も何度も買ってもらえるようなビジネスを目指さないといけないんだよ。」

「はい。…で、何をしたらいいんでしょ?」

「(笑)何をしたらいいと思う?まずは、自分で考える…だよね。」

「…はい。そうでした。(汗)…以前、東京にいた時に歯医者に行ったら、丁度半年後くらいに『定期検診のお知らせ』みたいなハガキが届いてましたね。そのハガキを見て、『あぁそろそろ行かなきゃなぁ』とか思いましたね。」

「そう。それ!待っていちゃダメなの。こっちから連絡を入れるようにするんだよ。注文をもらう時には必ずメールアドレスをもらえるわけでしょ。今やなかなか手に入れることができない個人情報な訳。これを有効活用しない手はないんだよ。もちろん悪用とかはしちゃダメだよ。悪用とかしてお客さんの信頼を無くすことのほうが、一時の利益なんかより何倍もの損失だからね。でもね、お客さんとやり取りしたメールアドレスだから、基本的にお客さんにしっかりと届くメールアドレスなんだよね。だからそこに、歯医者さんのハガキみたいな、お客さんにも役にたつ情報を発信していくんだよ。」

「…メールマガジンとかですかね?」

「そう!でも、まず最初はメールが送られても不自然でないようなタイミングでメールをするわけ。例えば僕のショップでは『商品は無事に届きましたか?届いてない場合は、何かのトラブルかも知れませんから連絡下さいね。』って感じのメールを、商品を発送してから五日後くらいに送るわけ。これだったらお客さんも『ウザッ!』とか思わないでしょ?」

「そうですね。逆に親切だなぁとか思うかも知れませんね。」

「それで、さらにその一週間後くらいに『商品を使ってみていかがですか?何か問題はありませんか?問題やご質問があったら遠慮なく連絡してくださいね。もし、気に入っていただけたなら、ぜひご感想をお聞かせください。』みたいな内容のメールを送るわけ。」

「あぁ、それもなんか親切な感じしますね。」

「でしょ?こうやって、お客さんに連絡しても『セールスされている』なんて感じさせないタイミングで何度も連絡を取るわけ。そうすると前にも話したようなザイオンス効果っていうのが起きるわけ。お客さんが自然と親近感を持ってくれるようになるんだよ。
それに加えて、さりげなくレビュー投稿もアピールしているわけよ。(笑)お客さんの感想っていうのは、今後の商品開発や業務の改善にも役立つし、何よりも商品の魅力を伝える強力なセールスコピーになるんだよね。」

「お客様の声ってやつですね。」

「そう。お客様の声を集める仕組みも大事なんだよ。うちのショップなんかは、感想を送ってくれた人にプレゼントを送ったりして感想を集めているわけ。お客さんの声っていうのは、お金を払ってでも集める価値があるものなんだよ。」

「そっかぁ…わかりました!まずは、『無事届きましたかメール』送ってみます。」

「うん。まずは自分で個別に配信してみてね。でも、そのうち毎日何件も注文が入るようになったら、個別に手動で配信してると混乱してくるからね。(笑)だから、そこにも自動で配信する仕組みを作るわけよ。ステップメールって呼ばれているシステムを使ったりするんだけど、一通目のメールを送ったら、その何日後かに二通目のメールを送って、更にその数日後に三通目のメールを送る…なんてことを自動でやってくれる便利なシステムがあるわけ。こういう便利なシステムを利用することで、時間を節約することができるようになるんだよ。」

「なるほど。ステップメールですね。」

「そう。それに加えてメールマガジンを配信していくわけ。」

「…ごめんなさい。頭パンクしそうです…」

「ごめん。ごめん。一気に話し過ぎちゃったね。でもね、まずはメールの文章を書いて、それをテンプレートにしちゃうでしょ。基本的にお客さんに送るメールの文章なんてのは、ほとんどみんな一緒なんだよね。だから一回作ってしまったらそれを保存しておいて、後はそれをコピペ(コピー&ペースト)で使いまわせば、もう頭使う作業は無くなるんだよ。ステップメールも、最初は何通かメールの文章を考えなければならないけど、一度設定してしまえば、後はポチポチって何回かクリックするだけで自動で勝手に動いてくれるんだよね。」

「そっか…だんだん楽になっていく…って感じですかね。」

「そう。仕事や仕組みを組み上げていく感じ。一度やった仕事は、『もうやらなくて良いように工夫できないか?』っていつも考えておくんだよ。そうすると自然と『仕組み化しよう』って事になって、その後がどんどん楽になっていくわけ。」

「そうするとプーさんみたいにいつもフラフラしてても、お金が入ってくるようになるんですね。(笑)」

「そう!(笑)…って、もしかしてちょっとディスられてる?」

「いえいえ、褒めてます。」

「ハハハ(笑)ありがと。」

「…でも、そう言った仕組みって、結構お金が掛かるんじゃないんですか?」

「まぁ、完全に無料でっていうのはできないことはないと思うけど、結局時間や手間がかかったりするよね。でも、そう言ったメール配信システムだけだったら月額数千円で利用できるものもあるし、ネットショップのプラットフォーム自体にそのサービスが組み込まれていて、無料や少額のオプション料金を支払えば使えたりするよ。」

「月額数千円程度かぁ…」

「うん。確かにね、余計な固定費は無いに越したことは無いんだよね。あ、固定費ってのは、売り上げがあってもなくても掛かってくる費用の事ね。でもね、ビジネス初心者が自分のビジネスを広げていけない原因の一つが、『何でも無料で』ってやろうとする事だったりするんだよね。無駄な経費は抑えても、必要なところにはしっかり投資をする…っていうのも大事なんだよね。確かに自分でやってしまえばタダ(無料)だったりするんだけど、そこをちょっとお金を出してでも自分以外の人やシステムに任せることで、一馬力以上の力が出てくるんだよ。」

「必要なところにはしっかり投資する…ですね。」

「そうだねぇ。確かに今まで自分一人だけで済ませることが出来ていたことにわざわざお金を払うっていうのも、もったいないとか、本当に必要なことなのかとか、自分が楽をしちゃいけないとか、色々な理由で一歩踏み出さない人が多いんだけどさ。でも、自分がやっていたことを手放して、人やシステムに任せることで、自分一人では出来なかったことができるようになったり、見えなかった世界が見えてきたりするんだよ。」

「自分一人では見ることが出来なかった世界…」

「そう。」

「…なんだか、ワクワクしてきますね。」

「でしょ?(笑)」
 
 私は、早速注文をしてくれたお客さんをフォローするためのフォローメールの原稿を書いていった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?