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はじめに

僕は今まで世界92カ国を周遊してきました。

映画が撮りたくて撮影スタジオで働き、その経験を生かして世界各地の世界遺産や風景を撮影。それを知り合いのディレクターに販売して旅の資金にしていました。そして、今はwebクリエイターとして働いて、それなりにスマートな人生を歩んでいる気がします。

だけど、今までの人生を振り返ってみると、実に恥の多い人生でした。

滑舌が悪くて英語どころか日本語もままならず、初対面の人に自分の名前を何回も繰り返すことになるし、世界中に友達を作ろうと考えていたけど、最近は友達が少なすぎて妹を友達の一人としてカウントしていいのか悩んだり、小学校で個室のトイレに入れなかったのに大人になってからは、通勤中の電車で漏らしてノーパンで先方に「お世話になっております」と電話できるようになりました。先方もこんな奴にお世話になりたくない。

これまでの「恥」と「誉」の割合も「恥・誉・恥・恥・恥・誉・恥・恥」と「たまには誉も食べなさい」と言われたら「恥のほうがすぐ食べられるし」と恥が歯につまった状態で生きてきました。

こんな恥石の詰まった僕が旅に興味をもったのは、20歳のころにバイトをしていたうどん屋の店長がきっかけです。当時、50歳手前の店長はヒッピーカルチャーをもろに受けて大人になったような人で、30歳までは日本中をぷらぷらしていました。店長の旅話を聞いていると「はやく やすく かっこよく」なりたい僕はすぐに青春18切符を使って、1ヶ月ほど日本を一周してみました。

北海道では、電車が行かない場所はヒッチハイクをしました。やってみて気付いたのですが、ヒッチハイクって少しコツがあります。最初からドライバーに「ここに連れていってください!」とガツガツするより「ここって、遠いんですかね?そうですか。歩くと結構かかりますよね?」と歩く気もないくせに聞くと、人のいいドライバーのおっさんは「お兄ちゃん、乗っていきな!」と言い、乗る気満々のくせに「いいんですか?」と、そんなつもりじゃないみたいな顔をして乗り込みます。

北海道のあとは本州をどんどん南下して鹿児島まで。このぐらいになると、電車に乗りすぎて痔になります。鹿児島から屋久島までフェリーで行きましたが、大変そうだったので屋久杉も見ないで、バンダナを頭にまいて走りよりもダサさの暴走が目立つバイク乗りたちとお酒を飲みました。

「昔、日本をヒッチハイクだけで一周したんだ。だいたい一年ぐらいかかって、社会復帰する時は社会人の歩きかたが早くて、歩くことから始めたよ」「彼女が妊娠して、いろいろ悩んだけどおろすことにしたんだ。その後はやっぱり二人ともギクシャクして別れてしまってさ」と、いろいろな人の話を聞くけれど最終的に「ブスに人権はない」という最低な結論で終わっていました。

この頃から、日本を周るだけでもそこそこ面白いのだから、海外を周ったらもっと面白いんじゃないかと思うようになります。

実際、海外に出たら発見の連続でした。欧米の女の子は思ってる以上にキラキラしてないし、不潔だし、空気読めません。あきらかに蚊がいる場所でホットパンツをはいているから、めちゃめちゃ刺されているし、バックパックの詰め方も近くのものからバンバン詰めているので、バランスの悪いジェンガみたいになっています。百聞は一見にしかず。

『自由になりたくて、旅に出た』と息巻いて旅に出る人は多いと思いますが、実際は異国を旅すればするほど不自由になりました。

新しい街に着いたら、重たいバックパックを背負って、まずは安宿を探します。現地のタクシードライバーと値段交渉から始まり「ちゃんと目的地に着くのか?」「なんで、ガソリン代まで僕が払うんだよ」と猜疑心と嫌悪感をあらわにして、やっと宿に到着すると「今日はフル (満員) 」などと宿のオヤジが当たり前のように言ってきます。

「どうするかなー」と考えていると、現地の子どもが「チープ、ホテル。チープ、ホテル」と言っているので付いて行くと、売春宿だったりします。はっきりいって、何一つ思い通りになりません。

不自由さを知らないと何が自由なのかも分からないと思うので、僕としては『自由が知りたくて、旅に出た』と言うほうがしっくりきます。

日本の女の子は世界中の男性にもてるけど、日本の男の子は世界中の女性に見向きもされず、たまに興味をもたれても、それは財布の中身だったりします。そして財布の中身もない、英語もしゃべれない、良心のかけらもない平成のヘレン・ケラーみたいな僕は自分の心の声に従い、世界各地でくそったれと悪態をついてまわります。いや、くそったれは僕でした。

性格の悪さでは潜在能力高めの僕。下世話な奴はだいたい友達の僕。こんな僕でも世界一周できた。

※2005〜2007年の旅行記になります。現在の世界情勢と合ってない場合もありますが、ご了承ください。


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