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【LUNA SEA】セルフカヴァ―アルバム『STYLE』全曲レビュー⑥FOREVER&EVER

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◆【LUNA SEA】セルフカヴァ―アルバム『STYLE』全曲レビュー⓪『STYLE』はどのようなアルバムだったのか

◆【LUNA SEA】セルフカヴァ―アルバム『STYLE』全曲レビュー①WITH LOVE

◆【LUNA SEA】セルフカヴァ―アルバム『STYLE』全曲レビュー②G.③HURT④RA-SE-N⑤LUV U


続けて書いていきます。

◆FOREVER&EVER

耳馴染んでいる原曲と比べて立体感が増していることに圧倒される。
アレンジや音は原曲に忠実だと思う。
ただ、音、声、空気や、その圧、立体感、感触までがひとつひとつ、全て際立っていると感じる。
どれかひとつに焦点を当てて追っているだけで、その表情に涙腺が緩んでしまいそうになるくらいだ。

この胸の奥深く灯した炎は
探し続けている未来を照らす

声の甘さと優しさにハッと我に返った。
「未来」というキーワードが差し挟まれ、この曲が「未来」についての願いを歌っていることを改めて思い出す。

丁寧に重ねられる音たちは、ギターもベースもシンバルもドラムも、あまりに有機的で自然の中にいるような錯覚に陥る。

夜空につながれた星たちのように
このメロディーはきっと永遠さ

一気に開かれた場所に足を踏み入れたような瞬間の後、歌に導かれるように背景の色が澄んだ夜闇のような濃紺に変わるのを感じた。
丁寧に重ねられる優しく滲むアルペジオが、歌詞の「星たちのように」に重なって小さく光を明滅させる幻を見せる。

FOREVER&EVER きっといつか
FOREVER&EVER たどり着ける

重ねられる風の声のようなコーラスはJとINORANによるものだという。
祈りの後に、全ての音がドラム一つに収束される。
波が凪いでいくように。
響きを内包したドラミングが空気を整え終えた時に
丁寧なアルペジオと、Jによる英文の朗読が始まる。

So, remember
That body, soul, mind, blood
Tears, dreams, love, pain, and joy
‘Cause they’re all so precious
Forever and ever

聞き取りやすい綺麗な英語に重ねられる、オーロラのようなSUGIZOのギターの広がり。
鼓動のような温もりのあるベースが加わり、厚みと立体感のある音像が、英語の朗読の終わりとともに激しさを増して景色を塗り替える。

岩礁に打ち付けて砕ける波のようなドラミング。
風のように、鳥のようにギターが鳴いたのち、覚悟を決めたように前を向き、視界が開ける錯覚。

So bright 輝いて 信じ続けて
Tonight 旅立とう 光の中へ

この曲、この歌は、祝福された死への旅立ちの歌なのかもしれない。

さまよい続けてる 乾いた心は
愛されたいと願うほど 傷ついて
限りなく続く この道の先に
求めるその何か あると信じたい

祝福を授けるように重ねられる美しいストリングス。
端正にリズムを刻み続けるドラムとシンバル、アルペジオは時間の流れを象徴しているみたいだと思う。

人の魂の一番澄んだ核の部分から発せられた命の中枢の願いだ、と思う。
人が命を失う時になってやっと、思い知るのかもしれない本当の願い。
映画を見ているよりももっと実感的な。誰かの意識に重ねるように思い知る感情と願い。

FOREVER&EVER 叶うなら
FOREVER&EVER 見つけたい
Out from my chaos to grace
何処まで翔べるのか確かめたくて

「何処まで翔べるのか確かめたくて」のフレーズを何度聴き返してみても、その度に泣いてしまう。
鳥肌が立つ。
誰かの命の重みを思ったときの記憶を思い出す。
命を失うことを他人事として思っている自分にも、いつかこんな終わりの時は来るんだろうか。
その時に、これほど優しく気高く、前を見て澄んだ心で翔べるだろうか。

生きること自体が本来「どこまで翔べるのか確かめたくて」というものであることを思い知る。
人生というものは、他人の物を俯瞰すると「パッキングされたひと纏まりのもの」に思えてしまうけれど、結局全ての人にとって「それぞれに日常として毎日消費している一日ごとの積み重ね」でしかないという当然のことを思い出す。

27年前にLUNASEAは、なんという曲を作ったんだろうと思う。
当時から10分を超える大作であることは認識していたけれど、彼らがこの曲で何を描こうとしていたのかを、大人になってからやっと受け止めることができた気がする。
「大切なことを、誠実に形に残そう」という意思を強く感じる。
生半可な意志では描けない曲だと思う。当時、ちゃんと受け止められていなくてごめんなさい。大切なことを曲にして、大切に届けてくれたことへの感謝を覚える。

この曲を、この歌を、生きている人生のうちに知ることができて良かった。
人生を自覚的に生きるために、当たり前だと思うもの全てが貴重な尊いものだと思い出すことができて、この美しい曲をお守りにして生きていきたいと思う。
人生が終わるときに、この曲を思い出して、前を向けるように。

FOREVER&EVERは、このSTYLEというアルバムの核である曲だと思う。
当時のツアー名の「UNENDING STYLE」という言葉も、今回のDUAL ARENA TOURの終演後にスクリーンに映された「Have you found your STYLE」という言葉も、生きることそのものを描写した言葉なのかもしれないと思う。

1996年に彼らが「描きたいものよりも、今、描くべき大切なこと」として向き合ったSTYLEの核の部分は、「いかに生きるべきか」ということを正面から問うものだったのだと、今になって理解する。

これほどに優しさと祝福に満ちた形で。
柔らかく消えていくアウトロのアルペジオが、頬を撫でる風みたいだ。

*

続きます


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