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【LUNA SEA】セルフカヴァ―アルバム『STYLE』全曲レビュー①WITH LOVE

◆『MOTHER』全曲レビューはこちらから

◆【LUNA SEA】セルフカヴァ―アルバム『STYLE』全曲レビュー⓪『STYLE』はどのようなアルバムだったのか

◆WITH LOVE

せめて 抱き締めて 思いが届いたなら
目覚めるのさ 扉を開けて

響け いつまでも 淋しさを貫いて
胸を焦がし続けていて

旧作がリリースされた時、第一声の「せめて 抱き締めて」を初めて聴いたそれまでのLUNA SEAを期待していたファンは、少なからず驚いただろうと思う。
つぶやくように、口ずさむように近距離で歌われる錯覚を覚える声は、これまでのLUNASEAを象徴していたRYUICHIのキャラクターから強さを取り払ったような無防備な甘さを多分に滲ませていた。

この曲が『STYLE』の象徴的な1曲目に配置されたのは、偶然ではないと思う。
前作『MOTHER』で1曲目を飾り、アルバム全体のイメージを象徴する名曲『LOVELESS』の対義語(WITH LOVE)であるということは前回の記事でも触れたが、このプライベートな距離感の耳慣れない甘い歌と、これまで感じさせることのなかった(ロックバンドとしてのそれまでのLUNASEAからかけ離れた)オールディーズを思わせるセンチメンタルなアナログ感のあるサウンドは、「誰も見たことのないLUNASEA」を宣言するものだった。
そして曲末の囁き『Now, I‘ll hold you with love』も、例えばそれまでの代表曲である「ROSIER」の「愛しすぎて近付けない」という葛藤を乗り越えた先のものであることも、『STYLE』を方向付ける象徴的な宣言となった。

強く 抱き締めて この愛が
冷めてしまうまえに

今作のセルフカヴァー『STYLE』における「WITH LOVE」は、前作のギターのノイズや歪みが柔らかく収斂され、前作で緊張を含んでいたRYUICHIの声も良い意味でのリラックスを得て、力みが抜けた自然体として、まっすぐに堂々と前を見ているような歌の強さを備えたように思える。
前作で滲むようなエフェクターが掛けられていたドラムも輪郭をはっきりとさせ、全体のピントを合わせつつ、歌とその意味を中央に配置した楽曲になっていると思う。
また、エフェクターが多様に用いられていたギターソロも、鋭角の響きをひそめて、液体がこぼれて流れるようになめらかに優しくなっていると感じた。
前作と比べて聴くと一番の違いとしては、前作では、音の情報量で息が詰まるような構成で集中して聴いていると酸欠を感じる曲だったが、今作では深呼吸をする余裕を持ちながら、ゆっくりと深く曲と意味を受け止めることができるようになったという体感だ。

発表時に物議を醸したこの曲も、それから27年の時間を経る間に、初期のLUNASEAを象徴する大切な要素として長くファンに愛され、歌われてきたということを改めて思う。

その間に、LUNASEAは活動停止、解散を経て、現在のLUNASEAとして今作をリリースするに至っている。それがどれだけ尊いことなのか、それを間近で見守っていなかった私ですら思い至るのだから、当時から彼らを見続けたSLAVEの方たちにとっては、『MOTHER』『STYLE』のセルフカヴァーとDUAL ARENA TOURの実現は、本当に胸に来るものだろうと思う。

彼らが、彼らのまま、現在もLUNASEAとして、堂々とこれほど格好良い姿を見せてくれているということ。そのことに改めて感謝を覚えた。

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