演劇集団nohup#6『サイボーグ会社員美々美』感想

初日を観てきました。
関係者の皆様、お疲れ様でした。

一年以上書いてなかったnoteという媒体を使ってみようと思い、こちらに感想を書いてみます。
以下、当然のようにネタバレを含みますので、これから見られる方、気になる方はこちらでお戻りくださいませ

一番印象に残ったのは、自分の笑いのセンスとズレていてそこに惜しさを感じたところだった

軽くギャグを挟んでいるシーンが多く、そこでクスッといけるのだが、振り切れていないような勿体なさを随所に感じていた
そういうことから、あるシーンが終わった後は自分ならこうしたいな〜なんて思いながら観ることが多かった。

たとえば、一番最初は本作の主人公的な立ち位置にある、みみみの紹介シーンでそれを感じた

みみみとの会話で「てきとう」と言うと、みみみが「敵」と認識してミサイルを打つシーンがあり、音響と協力してミサイルを発射しているシーンがある
これが一度(一応、作中では井上と足に機械がついたキャラクターが逃げるシーンでも売っている)で終わってしまったのが勿体無いなと思っていた

具体的に言うと、ギャグ漫画日和のようなボケとツッコミがほしかった


これなんかは秀逸
それでいうと、
誰かが口を滑らせて「適切な対応を〜」と言ったら「敵!」「ちがーう!!」といったスピードで攻めるコント的な笑いがあったら好みだった

また、冒頭は2023年に世を賑わわせたビッグモーターに対するリスペクトを込めたネタから入っている
「除草剤」「傷をつけて保険金請求」としっかり時事ネタを入れつつ、マイルドな仕上がりになっていた

ここでも「教育教育教育教育教育教育教育教育教育死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑」ともっと狂気的に早口言葉として言わせておいた方が面白かった気がする

勝手な想像だが、作品としては笑いとシリアスの間をしっかりいったりきたりして、観ている人の感情を揺さぶりたいという狙いがあったように思う
入りは、演劇らしいユーモラスな展開から入り、終わりも演劇らしい(演劇らしいとは何かと聞かれたら回答するくらいの、自分の中で感じる演劇らしさ)
そこでサイボーグみみみが生まれることになった経緯について語られている
そして、作品を通して伝えたかったメッセージは

「自分の好きなように生きろ」ということだと思う
これもまた演劇的だと感じる
というのも、演劇を続けられている方の中には歴が長い方も多い
その中で「いつまでも演劇を続けていいんだろうか?」と悩む方もいらっしゃる
そういう葛藤を描いた演劇もあったが、そうした自分たちに対する肯定、エールという面もあったのではないかと勝手に解釈した

こう考えた背景には、浅見さん演じる家長のセリフ、そして田村がラストシーンで言うセリフがある
一言でまとめてしまえば「何をしたかったの?」「お前のやりたいことをやれ」というところ

これもまた非常に演劇的で、コテコテだなぁと思っていた
ストーリーに対しては、自分はそこまで共感できる方ではなかった
今、マーダーミステリーというゲームの評価で使われる単語を使うなら、not for me
面白いかもしれないが、自分には合っていなかった というもの

ただ、その中でも作演出は作品内の笑いと悲惨を演出することで観劇者たちの心を揺さぶろうとしていたのはたしかに思える

その一つとして、仕事を頑張っていたみなみ(だったと思う 妹の方)が、上司である北条から嫌がらせをされ、業務中に頭に粉チーズをわざと振りかけられるというシーンがある
プッタネスカを買ってきて、それに粉チーズをかける
プッタネスカとは娼婦を表す単語なのだが、似ているから間違えてしまったという形で女性らしい(女性らしいと書くと差別的だと言われてしまいそうであるが)な嫌がらせをしている

いわゆる嫌なお局上司という役割をされていた飯山さんはお上手だなと思った
しっかり嫌な感覚が伝わる

この嫌な気持ちにさせる演出があるからこそ、ギャグはもっと振り切っても良かったのではないかと思う
その意味で、現代のビルゲイツと呼称されたマキエが現れるシーンで、新卒一が産業スパイとして潜り込んでいたことがわかるシーンがある

そこで、彼は高笑いをしながらハケていくのだけれども、ここも惜しく感じた。
というのも、笑い方は明らかに笑いを誘う笑い方にしているのに、最後まで一定調子で、一押しがほしかった

笑ってハケているのに、なぜか最後は誰かにやられたような声で「ウワアアアア」と舞台裏で声が届いたらよく分からなくて面白そう
面白キャラとして入れているだろうから、そういう予想を超えたぶっ飛んだ何かが欲しいなと感じていた。

また、濱松がストレスから「ぶっ殺してやる!」とコミカルに言うシーンがあるのだが、あそこでストレスから「ママァ〜!!!」と叫び、いきなりマザコン要素を混ぜても面白そうだと思った。これは役者の方を見て、これを言わせてみたいなと思ったところにある。

綺麗に作られていたとも言える。


・シーンについて

みみみ誕生に至るまで回想シーンが思ったよりも長く感じた
何となく分かったが、そこにこれだけ時間をかける必要はあるのか?という風に思っていた
これはよく他の演劇でも思う
とはいえ、必要なんだろうと。
それは作り手と受け取り手の理解の差で、作り手は何度も何度も読み込んでいるので、伝えたい事が分かっているが、受け取り手は初見なのでそこでしっかり伝えないといけない

よって、こうした悲惨な事故があり、蘇らせるためにサイボーグ手術を受けたのだという説明にシーンを長めに割いたのだと思われた。

・演出で面白かった点

1.みみみのミサイルに打たれて井上だけが生き残る。
そう思わせるために、体に電話機を巻き付けていた濱松は死んだというのを暗示するよう、彼の子機の部分だけを井上が持っていた点

2.みみみになる着替え
スカートとブラウスの下にみみみセットを着用しておき、他のシーンをやりつつ、着替えもついでにこなしてしまう手際の良さ

3.新卒一が倒されるシーンで、横になりつつも機具を付けた手の方は暗転するまでしっかり立てているところ

細かく作られているなと感じた
そして、最後はシルエットでみみみを出して、劇が終わる
これもまたベタだなぁなんて思っていた

・キャストについて

やはり浅見さんがお上手だなと思っていた
お上手というか、「存在が自然」と表現するのが最も適当であるように思える
その場に役を持って存在しているわけだが、それを自然にこなせている
他の方に対する批判的な意味合いではなく、前の朝比奈さんの舞台でゲイバーのママをやっている時も感じた。
ヤリナゲの頃から見ていると思うと、長いなぁ
さすがの安定感

テン職エージェントの山田ざべすさんの営業用のにこやかな顔もいいなと思っていた
嫌味がない
そりゃあ営業しているのだからという建前があるのだからもちろんなのだが、自然で爽やかな口調だなと感じていた

また何かあったら追記します

改めて、関係者の皆様、初日の公演お疲れ様でした。
2月4日までとのことなので、この記事を見て気になる方がいたり、何かに繋がったりすれば幸いです。


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