見出し画像

Web業界の末端で働いてる者から見た「AI占い記事」について

あんまりネガティブな占いの話はしたくないのですが、今回の出来事は占い師にとっても、メディア業界にとっても「いつかは出てくると思っていたが、やはり出てきてしまったか」という事態であります。

そこで今回は緊急に「占いの扱い」と「ライターという業の扱い」、そして「受け手の問題」3つの側面から考えたことを書いてみました。本業で、メディアに関わる仕事を長年してきたものですから、口出しせずにはいられなかったというだけなんですけども。

占い、もしくは占い師としての問題

ただでさえ「うさんくさい」「壺を売りつけられるんじゃないか」などと言われがちな占い。未だに言われているわけですが(マジでいるのですよね今も)、さらにマイナス方向に地位を下げられたような気持ちになった人は多いのではないでしょうか。

問題となった(以下、L氏とします)人のXのプロフィールを確認しました。

L氏は西洋占星術をベースにした活動をしており、多数の媒体に文章を寄稿していたようですが、その文章は、実は5ヶ月にわたり、他媒体で書かれた文章をもとに生成AIにリライトさせていたものだったということのようです。つまり、自分でカードを引くなり、チャートを出すなどして、自分の言葉で書くという当たり前のことをしていなかったのですね。

これは、AIに文章を書かせておけば「占いライター」が成立してしまうことを証明してしまったわけです。どんなきっかけで発覚したのかは公表されていないこともあり、これ以上は推測すべきではないと考えますが、占い師の信用を地に落とすという役割を果たしてくれたと言っても過言ではないでしょう。L氏が真面目に占いと向き合っているとはいい難い行為をしたことで、他の真面目に活動する占い師の足まで引っ張られたわけです。

これは皮肉を込めたもの(だと思いたい)かもしれませんが、今回の騒動に関して
「AIで文章作って稼げるなら、俺も占い師になろうかなw」
というコメントを見かけました。世間一般の認識がここまで落とされたわけです。

L氏が5万フォロワーを持つアカウントという存在だったからこそ、大きく話題に上がり、被害も大きくなったと言えるでしょう。

ライターとしての問題

一方、出版およびWebメディア業界においてはどう扱われるのか。どんな方でも想像に苦しくないでしょう。もちろん、AIに文章をリライトさせて「自分が書きました」と提出したという過去を持つライターは、この業界で二度と仕事できません。

いくら反省したとしても、L氏に再び原稿を依頼できる強い心臓の持ち主である編集者がいたらお目にかかりたいところ(かかりたくない)。もちろん私もそんなライターとは縁を切ります。それくらいの重罪であり、取り返しはつきません。

また、メディアの世界は割と狭かったりするので、評判の悪いライターの話が聞こえてくることがあります。別の媒体で書こうとしても難しいのではないでしょうか。厳しいようですが、よほどの信頼回復の努力をしない限り、いや、努力したとしても見通しは暗いです。

受け手のリテラシー

ここでもう一つ述べたいのは「受け手」、つまり普段から占いを好んで摂取している側のリテラシーに関する問題です。

L氏のXプロフィールを確認すると、一時期は5万以上のフォロワーがいたようです。現在は6月5日を境に、一気にフォロワーが減り始めている様子です。

L氏の投稿は、自分のXのタイムラインではたまに「おすすめ」に出てきて、目に入ることはありました。そんなとき思っていたのが「狙ってるな〜」ということでした。

「狙っている」とはどういうことか。短文でコンパクトに「星座の特徴」や「ランキング形式」「キャッチコピー」といったわかりやすい「星占いコンテンツ」を提供するやり方のことです。実はX上でフォロワーを増やす施策としてはだいぶ効果的な方法だったりします。

この「わかりやすい占いコンテンツ」の投稿を続け「有益な情報を流しているアカウント」と認識してもらうことはとても大事なことであり、その点L氏は的確な方法で発信し、フォロワーを増やしていたと言えます。

プロフィールの書き方や「星読みライフデザイナー」といった肩書を作っているのも、売り方としては良いやり方です。これらの点は咎めるところではありません。

ただ、ひたすら売ることだけを「狙った」アカウントを散々見てきた者にとっては、失礼を承知で申し上げるとL氏のアカウントは総合的に「いつものよくある商売的なアカウント」にしか見えず、私が知っている、真剣に占いと向き合い、学びを続けつつ長年活動しているあまたの先生方とは違う人という認識を持っていました。

「この人は真剣に活動し、それを発信している人なのかどうか」を判断する審美眼、あるいはリテラシーは多くの人に持ってもらいたいところですが、明確な判断基準があるわけでもなく言語化が難しいです。そのため自分自身でも「経験と野生の勘」に頼った判断が、今回たまたま当たったという感覚でいます。あえて言うならば、プロフィール文やリンク先のブログ等でどんなことを発信しているかもチェックしつつ総合的に判断すべき…といったところでしょうか。

しかし、L氏は著書も持っていました。出版不況が長く続いている現在でも、大手出版社から上梓した著書は筆者の信頼度を表す一種の印籠のようなものです。これがあるからこそ、多くの人が判断できなかったと思われます。

占いアカウントの明日はどっちだ

さて、フォロワーを増やして発信力を持ちたいと考えている占いアカウントはどの道を進めばいいのでしょうか。

「わかり易い占いコンテンツを投稿するアカウント」はフォロワーが増えやすいですが、続ければ続けるほど、薄っぺらいコンテンツに見えてくるという諸刃の剣。ブログやnote、複数のSNSを駆使するなどして「薄っぺらさ」を払拭していくことが肝要です。

一方で、フォロワー数は万に及ばなくとも、日頃から研究した結果を発信していたり、複雑な関係をわかりやすく説明しようと投稿を続けているアカウントほど、バズりにくくフォロワーも増えにくい。残念ながら、それが今のXという場です。

しかし、多くの人は後者のやり方を選んでいるのではないでしょうか。

後者のような占い師こそフォローに値する、ということを多くの人にわかってもらうためには、やはり地道に投稿しつづけていくしかないのかもしれません。

わたし(テルミライト花)は、占いのほかに日常に沿ったつぶやきも投稿しているので、人によってはそんなところがノイジーに感じられるかもしれません。ちょっとゆるい運用をするくらいがちょうどいいと思っているのでこのままいくと思います。

くじけず、できるだけ楽しくなるようにいきたいものですね。

では股、ほなサイババ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?