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一人営業通信dgtl_Vol.4「ヒットの要素2/6_価格」

#2 価格

※この記事は、2018年にに営業ツールとして発行したニュースレターを加筆修正してnoteにアップしたものです。

前回は一つ目の要素である「見た目」について書きました。広告やロゴなどが、どうして重要なのかについて、元バイヤーという立場から経験を交えて書いてみました。
そして今回は要素の2つ目「価格」についてです。これは恐らく最もシビアで、最も直接的な影響が出やすい要素であり、しかし6個の中で一番単純な要素だとも思います。
今回はその価格について、元バイヤーの目線で書いてみたいと思います。

※前回同様、僕が解説するのは当たり前のようなことです。それを真面目に考えるのが、ヒントを見つけるための近道と考えますので、例によって今回も当たり前のことを書きます。その辺り予めご理解下さい。

世の中の商品には、ざっくりとした常識的な価格設定というのがあります。それはある一定の時代の中で消費者が蓄えている経験値の最大公約数的なことで、「だいたいこれくらい」という常識に基づいて世間に定着しています。
例えばここに、一台5万円の新車と一個5万円のりんごがあったとします。この両者に対面した時、一般の消費者ならまず大抵はこう思うのではないでしょうか。
「車が、しかも新車が一台5万円で買えるわけがない」そして「これは何か裏があるんだな、危ないからやめとこう・・・」といって拒絶されるでしょう。
ではりんごはどうでしょうか。こちらはもっと顕著で「りんごなんかに5万も払えるか」といって終わり。せいぜい「お歳暮でもらったら食べてみたいな」というくらいのもので、つまりはこちらも「買う」という選択肢には入りづらいものだと思います。
それでは、その林檎に5万円の価値があるのかというと、それはどうでしょうか。これは一概には言えないと思います。りんご農家が試行錯誤するドキュメントフィルムを初めから終わりまで見ていたら、5万円の価値を見いだせるかもしれません。しかし、それが見ず知らずの人が街なかでいきなりポケットから出してきものだとしたら、そこにどんなバックボーンがあったとしても、5万円は払わないでしょう。
さて、屁理屈のようなことを書き連ねましたが、結局何が言いたいのかといいますと、それは「価格」という要素に隠れている無意識についてなのです。

一度具体的に、僕の得意なコーヒーを例にとって、その無意識とやらを説明してみたいと思います。
コーヒーにも常識的な価格設定というのがあります。身近なところでいうと缶コーヒーはせいぜい100円~150円。喫茶店のコーヒーは300円~こだわりの一杯で800円くらい。コーヒー豆も100gで300円~高くても1000円くらいでしょうか。これが常識的な価格設定です。
それでは、例えばとあるイベント会場で、以下のような商品があったとします。

ブラジル タトエバ農園
生産者タト・エバー 契約栽培
SCAJ認定COE獲得
スペシャルティコーヒー
100g/2,000円

〝このコーヒーは特別契約栽培によっ
て実現した、スペシャルな商品です。オーナー自らが現地に足を運び、栽培、収穫、精選、選別までを指導。毎日焙煎したての新鮮な状態で店頭に並べています〟

先ほど書いた価格帯に照らし合わせても、常識的なコーヒーの価格からすると相当高いですが、コーヒーの好きな僕は、ここで購入を検討し迷いはじめるのです。
仮にこれを、自治体の主催するイベントの一角で屋台を構えているお店が陳列している商品としましょう。しかしお店の名前は聞いたことがなく、新しいお店?どこか別の地方から来たの?と言う疑問が残ります。販売台に並べられた品物を眺めます。全体的に商品のボリュームは少なく、表示も不案内で店のパーソナリティが不明なままです…。

この商品におけるポイントは、以下のようなことです。

①COEを獲得
②契約栽培
③表示も不案内で店のパーソナリティが不明
④全体的に商品のボリュームは少ない

①のCOEというのは、「Cup Of Exellence」の略で、ざっくり言うと「非常に状態の良い高品質な豆で、世に流通している中の数パーセントしかない希少な豆」ということです。
②は読んで字の如くでしょう。
③はマイナスポイントです。出どころのわからない店から高額な商品を買うのは冒険と感じます。
④もマイナスで、これは次回以降に解説する要素ですが、商品ボリュームの少なさは、その店のバックグラウンドを想像しづらくなります。

これが、価格に隠れた無意識です。
…と、少し乱暴な結論なのできちんとご説明しましょう。
買い物をするとき、消費者は頭の中でこんなことを考えているのではないでしょうか。
「100g2000円のコーヒーを買うためには、それを正当化できる(自分を納得させる)ための理由が必要だ」
その理由というのが、価格以外の付加価値です。
ただ付加価値というのは、それぞれのお店に対して様々あると思います。商品や業態によってもそれは千差万別でしょう。今回例に出したコーヒーショップに関していうならば、それがCOE認定であり契約栽培であるということで、これによって質の良い豆がきちんとしたルートで仕入れられて焙煎されている、という事実を知ることができます。これは非常に大きな魅力です。
しかし品揃えが悪い出どころの分らない謎の店という状況がその魅力を減退させます。

というので、それを踏まえてバイヤー的に考えたときに、価格設定に必要なのは以下のことだと思います。

「 誰に、どうやって、どれくらい売りたいのかという販売側の希望と、その商品の魅力が、消費者の趣味趣向と金銭感覚の最大公約数に、どれだけ上手くはまることができるのか 」

客層に合わせて価格帯を変える、ということは一般的に行われていることだと思います。それは例えば、百貨店の催事では少し価格帯の高い商品をそろえたり、屋外で開催されるようなフードイベントでは、ワンコインなどジャストプライスの商品をそろえたり、といったようなことです。
これは一つの方法としては手っ取り早く有効な手段だと思いますが、しかし僕はこれをお勧めはしません。確かに百貨店には高額な買い物をする客層が来ますし、屋外のイベントにはファミリー層や学生もたくさん来ます。
それも一理あるのですが、それよりももっと重要なのは、環境に合わせて価格帯を変えるのではなく、商品そのものにゆるぎない付加価値を生みだすことだと思います。
情報過多のこの時代に、百貨店やスーパーや屋外のイベントなど、客層の棲み分けは意味を失いつつあります。そして消費者は想像をはるかに超えた情報量で行動します。
つまり消費者はお店に帰属して商品を選んでいるのではなく、商品に帰属してお店を選んでいるのです。
消費者を納得させられるだけの付加価値が生み出すことができれば、それが環境に左右されない魅力になります。
思いや哲学を持ってつくられた商品には必ず付加価値は存在します。それを見つけ出して、ブレずに宣伝し続けること。それが叶えば、あとはどれだけ上手くはまることができるのかという勝負。
一度自社の商品、客観的に見つめ直してみてはいかがでしょうか。
今回はここまで。ご参考にされてみてはいかがでしょうか。

・・・つづく

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