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Dear Grower #004 フェルナンド・リマ(カンパヌラ農園/エルサルバドル)


朝7時、ワーカーたちがトラックに乗り合って集まってくる。弁当を広げ、和気あいあいとおしゃべりをしながら仕事前の腹ごしらえ。おすそ分けを求めてしっぽを振る犬とじゃれ合う若者もいる。朝礼を終えると、グループに分かれて農園に散っていった。耳を澄ませば、ときどき畑からなごやかな笑い声が響いてくる。ここカンパヌラ農園のワーカーたちは、とても明るくアットホーム。そのどこかカラッとした雰囲気は、まるで農園の空気感をそのまま写しているかのようだ。サンタ・アナ火山の急斜面に拓かれたカンパヌラ農園は、エルサルバドルで最も高地にある農園のひとつ。見上げれば、山の頂きをなでるように流れる雲。見下ろせば、空の色に塗られた湖。心地いい風に吹かれながら、ずっと景色を眺めていたい。そんな気分にさせてくれる。そして、この農園を心地よく思うのは、人間だけではない。コーヒーにとっても素晴らしい環境なのだ。

カンパヌラ農園は、もともと良質な豆をつくっていたが、オーガニック栽培に切り替えて品質をさらに高めた。そのきっかけは、2005年のサンタ・アナ火山の噴火。およそ1世紀ぶりの天災だった。農園へ登るための山道は噴石で塞がれ、小屋も破壊された。もちろんコーヒー畑も被害を受けた。しかし、この時の火山灰によって、土が自然の力を蓄えた。オーガニック栽培を始めたのは、そうしようという意思によってではなく、自然の流れでのことだったのだ。化学肥料をまけば、生産性はもっと上がるだろう。でも、その一方でコーヒーの木が疲れてしまう。木に無理をさせず、リラックスした状態でほどよい量をつくる。「肥料は100年ごとに火山がまいてくれるんだ」そう言って、農園主のフェルナンドさんは爽やかに笑った。

フェルナンドさんは、マラソンを愛好するアスリートでもある。自宅にはマラソン大会で獲得したメダルや盾がずらりと並ぶ。背が高く、スタイルも立ち居振る舞いもどこかスマート。爽やかなジェントルマンだ。そんな彼を見ていると、朝の農園での光景を思い出す。農園主の人柄が、農園の雰囲気をつくるのだろうか。カンパヌラ農園は、ひとつのファミリーのようだ。実際、3世代にわたって働いているワーカーもいるという。フェルナンドさんも、ワーカーたちも、おたがいに信頼しあっている。農園も、農園主も、ワーカーたちも、明るくリラックスしていて清々しい。さて、ではそんなカンパヌラ農園でつくられたコーヒーの味は、どんなだろう?想像をふくらませてから、実際に舌と鼻で確かめてみる。こういった味わい方ができるのも、コーヒーの楽しさだ。

フェルナンド・リマさん(上)

国名 エルサルバドル共和国
地域 アパネカ・イラマテペク地域 サンタ・アナ県 カントン・パロ・デ・カンパナ
生産者 フェルナンド・リマ
標高 1,850 –1,900 m
農園面積 75 h
コーヒー栽培面積 50 ha
品種 ブルボン、カトゥーラ
収穫時期 1月~4月
お取引開始年 2003年

引用:Beans Menu 2017.07より



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