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Dear Grower #007 テオドロ・エンヘルハート4世(グアテマラ)

ニワトリよりも早く起き出して、ファームハウスのバルコニーに出る。標高はおよそ1600m。眼下には白い絨毯のように雲海が広がっている。寒さに耐えながら、“その瞬間”をじっと待つ。少しずつ空が明るくなり、あたためられた空気が雲海を散らす。体が芯まで冷え切ったころ、薄闇の世界が色を帯び始めた。朝焼けだ。遠くに見える山脈の輪郭が輝いたかと思うと、空が何色もの層に塗り分けられ、刻々と変化するグラデーションのインスタレーションが始まった。早起きをしてこの美しい光景を待っていたのは、ここにコーヒー農園が拓かれた理由を確かめたかったからだ。

農園の始まりは半世紀ほど前のこと。現農園主であるテオさんのおじいさんが、この場所のあまりの美しさに魅せられたのがきっかけだ。当時この地域ではコーヒー栽培がまだ行われていなかったが、おじいさんは「神の恩恵を受けた場所」だと感じ、初めてのコーヒー農園を誕生させた。付けた名前は「ラ・ベイヤ」。スペイン語で「美しい」という意味だ。実際に農園を訪れると、よくぞこんな場所に農園を拓いたものだと感心する。山脈地帯の真ん中にあり、山の傾斜は急で、雨が多い独特の気候。街の中心部から車で2時間。岩や倒木を乗り越えなければたどり着けない。他人から見れば腰が引けるようなこの場所も、テオさんのおじいさんには特別な場所に映ったのだ。そして、その目に間違いがなかったことは、3代目のテオさんによってはっきりと証明された。2013年のCOE(カップ・オブ・エクセレンス:その年その国で収穫されたものの中から最高品質のコーヒー豆を決める品評会)で見事入賞を果たしたのだ。

ラ・ベイヤ農園が成功した理由は、もちろん“神の恩恵”だけではない。3代にわたる努力と工夫の積み重ねがあってのことだ。テオさんは農園を受け継ぐだけでなく、進化させるべく様々な取り組みを行ってきた。農園を見るとまるで原生林のようだが、実は細かく区画を分けられていて、どの場所でどの品種を育てるといい豆ができるかのマッチングを試している。急勾配にあり農園内の標高の高低差が大きいため、気温や土質にバラエティが生まれることを活かしているのだ。他にも、新しい品種の開発、この土地に合った生産処理方法の改良など研究に余念がない。その甲斐あって、いまではすっかりCOE入賞の常連だ。


「この農園で一番好きな場所はどこ?」
と尋ねると、テオさんはファームハウスの2階にある自身の寝室に案内してくれた。「ここだよ」と示されたのは、ひとつの窓。外を眺めると、早朝に太陽が昇ったあの壮大な風景が広がっていた。おじいさんが魅了された風景を、テオさんも大切にしている。「素晴らしい風景だ」と感嘆すると、“美しい”という名の農園の主人は「どうだい」と誇らしげに胸を張った。


国名  グアテマラ共和国
地域  エル・プログレソ県 シエラ・デ・ラスミナス サン・アグスティン・アカサグアスト
生産者 テオドロ・エンヘルハート4世
標高  1,450 - 1,630 m
農園面積 110 ha
品種  パカマラ、ブルボン、ビジャサルチ、カトゥーラ
収穫時期  12月~5月
お取引開始年  2011年

引用:Beans Menu 2017.10より

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