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【コラム】テレビ出演をチラつかせ企業トップに次々と営業かける凄腕PR代理店の話

2年くらい前に県外のPR代理店からテレビ出演のオファーがありました。内容は企業採用に関するトップ座談会だったと記憶しています。

電話をかけてきたPR代理店の担当者に経緯を聞くと、福岡県内のある会社の社長からの紹介とのこと。弊社代表に事情を説明すると、確かにその会社とは懇意にしていて、以前に紹介したい旨の連絡があったらしい。

それならば、と詳しく話を聞くと、半年先くらいにテレビ番組で予定している採用をテーマにしたトップ座談会の番組に出演して欲しいとのこと。ただし、番組内容と会社の採用方針にミスマッチが起きないために、まずは一度、事前に代表インタビューをさせて欲しい、とのことでした。

親しい会社の社長さんのご紹介であり、テレビ番組に出演できるかもしれないということで事前インタビューを承諾。後日、オンラインにより弊社代表の事前インタビューが設定され、自分も同席しました。

当日、3つの簡単な質問項目に受け答えするとインタビューはほどなく終了。すると、インタビュアーはその流れでそのPR代理店担当者は弊社代表に2つのお願いをしました。

一つは、本業がPR代理店のためPR代行サービスの提案をさせて欲しいこと。もう一つは、別のテレビ番組企画で出演をオファーしたいので、勢いのある会社の社長さんを紹介して欲しい、と。

テレビ出演できるかもしれないオファーを頂いている手前、断るわけにもいかず、というよりは断るまでもない容易なこと(テレビ出演オファーを嫌がる会社は少ない)だったこともあり、弊社代表はこの2つのお願いも承諾。同じ地域で事業をされている企業名とその社長さんの名前をお伝えしました。

この瞬間、同席していた私は思わず心の中で唸ってしまいました。やり方が上手い、と。

おそらく、このPR代理店は、これまでも紹介&紹介を重ねて弊社にたどり着いたものと思われます。テレビ出演の依頼とあれば広報担当者も経営者も基本的には歓迎。しかも、懇意にしている企業の社長さんからのご紹介であれば、ほぼ間違いなく承諾。会わない、という選択肢はない。

「テレビ出演」と「紹介」をセットにすることで、数珠つなぎに企業のトップに会って営業提案ができ、さらに、その次も紹介から別の企業のトップにアプローチができる。メディアに出たいという経営者や広報担当者の心理をうまく利用した営業手法に、思わず唸ってしまったわけです。

おそらく、弊社が紹介した後も、その先で何件も何件も企業のトップにつながっていったに違いありません。しかもトップが自信をもって紹介する有力企業に営業をかけられるため、この方法は考えた人は、素直に天才だと思いました。

ただし、この天才的な営業手法の核となっている「テレビ出演」について、実は自分は早い段階で弊社が出演できる可能性はゼロであることが分かってました。

それは事前インタビュー。

後にも先にも、あれ程までに心のこもっていない(^^;)インタビューを目の当たりにしたのは初めて。あらかじめ用意された3つの質問項目を読み上げ、弊社代表がそれに答えると、特に反応もなく次の質問へ。これだとテレビ出演の可否を決めるには情報として不十分ではないか、と直感的に思いました。

一応、新聞記者として何人もの取材・インタビューを10年以上行ってきた経験があるので、そのインタビューの良し悪しは感覚的に分かります。そして、この時の感覚の通り、その後、テレビ出演の話はぱったりと無くなりました。

後日、別の担当者から提案のあったPR代行サービスを丁重にお断りしたのもテレビ出演の話がなくなった原因かもしれないけど、もし契約が条件であるなら最初にストレートに言ってもらったほうが社内では検討しやすいのが正直なところです。

実際にそのテレビ番組が存在していたのか、それとも、そもそも存在してなかったのか。今となっては知る由もありませんが、放送されるかどうか分からないテレビ番組やコーナーはいくらでもあり、過去に取材を受けたけど実際に放送・報道されなかったことも何度も経験があるため、番組企画の存在の有無は大きな問題ではないです。

ただ、一度、この経験をしてしまうと代理店からのテレビ出演オファーは今後は身構えてしまいそうでうす。

このPR代理店からは今でも定期的にメール等でいろんな提案を受けています。この時の経験から提案に乗ることは今のところありませんが、やはり「天才的な営業手法」を一度、知ってしまうと、届くメールの提案内容はついつい一通り目を通してしまいます。

いったい次はどんな斬新な手法を考えたのだろう、と。

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