「好きなことで生きていく」ということ
私の記憶が確かであれば、この言葉は「YouTube」が流行らせたものだ。
いつか、この言葉について取り扱ってみたいと考えていたのだが、ちょうどその良い機会が生まれた。
様々なYouTubeチャンネルに広告を入れている「鰻の成瀬」が炎上した。
その問題の本質が「好きなことで生きていく」というところにある。
今回はこの辺りについて書き綴っていく。
鰻の成瀬はなぜ炎上したのか?
鰻の成瀬は、2022年から2年ほどで店舗数200ほどに急成長したフランチャイズだ。
名前の通り「鰻」を扱う。
ここでは、それ以上の説明は省く。
――― なぜ炎上したのか?
経営者のインタビュー内容が問題のようだ。
・究極の美味しさは求めていない
・調理機が鰻を焼くので素人でも問題ない
・飲食業の経験はない
・飲食への愛はない
・厨房のことは分からない
・鰻に触ったことはない
おおよそ、このようなことを語ったようだ。
ただし、オリジナルの記事を読んだわけではないので、正確ではないかもしれない。
最初に私の所見を述べておくが、この炎上は鰻の成瀬の経営者の作戦だと思う。
そもそも、鰻の成瀬は、フランチャイズ関連のYouTubeチャンネルへ広告を出しまくっている。
私は、店舗は見たことも入ったこともないが、YouTube動画の中で鰻の成瀬の名前をよく聞いた。
その作戦は、大成功なのかもしれない。
各メディアが次々と炎上話を取り上げ、さらに知名度が上がるからだ。
そこには、広告費も要らない。
炎上によって、店舗に来店する客が減るとも思えない。
既に気に入った人はリピートするだろうし、この炎上で新たに名前を知った人もいるはずだ。
損失と言えば「今回新たに名前を知ったけど、炎上したような店には一生行かない」という少数派のみ。
むしろ、FCへ加盟する人は、さらに増えるはずだ。
インタビューでは、炎上狙いと同時に、新たなFCオーナーに興味を持たせるワードが多発している。
FCオーナーの視点から考えると「簡単に再現できて、利益が出る」というポイントが重要なのだ。
炎上と嫉妬
炎上自体は、褒めたものではないと思う。
普通に考えて、わざわざ言う必要のないことを口に出して、炎上している。
しかし、ここでは「あえて炎上させた」と仮定する。
今回の炎上は「嫉妬」から来るものだ。
他の飲食店の経営者、自分の仕事が好きな経営者、利益が出ていない経営者、拡大に苦戦している経営者、またはその会社の関係者。
この辺りがパッと浮かぶ、異論者だと思う。
一方、これに異論はなく、むしろ「好意的」に思う人もいる。
分かりやすいのが、多数のFC加盟で会社を展開する経営者だ。
こういった人は「好きなことで生きていく」という考え方を持っている人は、少ない。
FCでなくとも、複数事業を展開する経営者もそうだ。
こういった人が新たなFC加盟や事業展開をする時は「世の中にニーズがあるか?」という点を重要視することが多い。
「嫉妬」を感じるほどニーズのあることであれば、自分もやれば良い。
そう考えることが経営者としては、ある意味正しいことだと言える。
経営者は「好きなこと」をするべきなのか?
良い歳の大人であれば、好きなことで生きていくことが必ずしも幸せとは言えないことを体感していると思う。
――― 好きなことを仕事にできたら、幸せだ
このくらいの感覚だろう。
それでは、経営者はどうなのか?
はっきり言うと、好きなことで上手く行く可能性は極めて少ない。
実際、私も好きなことで食っていくのはあきらめた人の中の一人だ。
長く経営を続けている人は
1.得意なことで
2.顧客の問題を解決し
3.顧客から感謝され
4.その対価として金をもらう
このような順番を重視している。
長く経営を続ければ続けるほど、この順番が大切であることを知る。
綺麗ごとでなく、経営者が頑張り続けることができる一番の理由は「感謝」だ。
顧客以外も含め、「感謝」がモチベーションとなる。
だから「感謝」を最大に受けることができる「得意なこと」を仕事にした方が「バランスの良い幸せ」が得られることを知っている。
好きなことで生きている人
一番不幸なのは、「得意だが、好きではない」というパターン。
滅多にいないが、肝心なところが一致しないのは、苦しい。
逆に、一番幸福なのは「得意で、好き」というパターン。
こういう人は幸せだと思う。
――― ただし、滅多にいない
経営者であれば、なおさら難しい。
例えば、ラーメン屋の場合。
ラーメンが心底好きで、拘りの強いラーメン店は多い。
しかし、経営が成り立たず、閉店する店が後を絶たない。
例えば、ミュージシャンの場合。
心底、仕事を楽しんでいる人が多い。
しかし、お世辞にも儲かっているとは思えない人が殆どだ。
どちらかというと、ギリギリのラインで生計を立てている人が多いように思える。
決して期待を裏切らない選択
私は仕事を選択する時は、以下の2点で決めれば良いと思っている。
・客観的に考えて、得意であること
・主観的に考えて、嫌ではないこと
「好きなことで生きていく」へ挑戦するのは良いことだと思う。
それで上手く行けば最高だ。
しかし、長く続けていると「愛情が薄れていく」という側面もある。
好きなことも仕事にした瞬間に、辛くなるという人も多い。
一方、「感謝」は期待を裏切らない。
「感謝」は「より多くの感謝」を目指すモチベーションになる。
他人から「感謝」されることを続けるのは、比較的簡単だ。
それが気持ちよく金を稼ぐことにも繋がる。
そして、何よりも
――― これなら戦略的に職を選べる
就職する時、再就職する時、起業する時。
一度、この点を考えてみて欲しい。
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