あなたはこうやってラーメン店に失敗する(2)の1

フランチャイズの難しさ

いずれのタイプの奥さんにしろ、とにもかくにもあなたは奥さんを説得できたとしましょう。次にあなたはどうやってラーメン店を開くか考えます。フランチャイズに加盟するかそれともどこかに修行に入ってチェーンに加盟せず個人単独で開業するか…。

まず、フランチャイズに加盟することとしましょう。

あなたは大手出版社が開催するフランチャイズ展に出かけます。

フランチャイズ展には約八十店ほどが出展していますが、そのうちラーメン業種は三~五店くらいです。その中で感じの良さそうなブースを訪れます。

対応する本部の人はにこやかにあなたを迎え入れるはずです。そして本部の社員は自分のチェーンがいかに加盟店を大事にしているかを説明します。あなたは同じことをほかの二~三店でも繰り返しパンフレットをたくさん抱え帰宅します。

家に帰ったあとあなたは奥さんと話し合います。

奥さんと話しているだけで気持ちが高まるはずです。そしてあなたと奥さん、両方が気に入った本部に決めます。夫婦の会話はこういった感じです。

「俺は二番目に行った本部が一番いいと思ったけど、どう?」

「私もそう思う。だってあなたの気持ちを一番理解してたじゃない」

「そうだよな」

「それに、本部の人『あなたはラーメン店に向いてる』って言ってくれたじゃない」

「よし、あそこにしよう」

あなたは後日、本部を訪れ社長に会い自分たちの選択が間違いでなかったことを確信します。後日、詳しい説明を受け契約を締結します。

研修ではあなたと同じような加盟店契約者と親しくなり気持ちは弥が上にも盛り上がります。こうして研修を終えた数週間後、あなたはラーメン店の店主になっています。

本部が探してくれた店舗ですのでオープン当初は売上げは順調です。本部のほうでもサポートは完璧にやってくれますし応援員もきます。あなたはフランチャイズにしてよかったと満足するはずです。

半年経ち、一年を過ぎた頃になるとあなたはラーメン業界についていろいろと感じるようになってきます。それは業界紙を読んだり実際に自分で経験したことによります。そしていろいろな点で疑問を持つようになってきます。例えばロイヤリティが高いのではないか。または開業の際の内装費が高かったのではないか。…などなど。ときを同じくして売上げが横這いになり今までの最低記録を更新したりします。あなたは悩みます。

あなたはたまに訪れる本部のスーパーバイザーに相談します。返ってくる返事は

「まだ一年じゃないですか。まだまだこれからですよ。それにもっと自分で考えて工夫、努力をしないと…」

スーパーバイザーが帰ったあとあなたは奥さんに愚痴ります。

「あいつなにもわかっちゃいないな」

二年後、あなたの店の近くに新しいラーメン店が開業します。あなたの店は売上げが激減します。その頃はスーパーバイザーが店を訪れることもほとんどなくなっています。あなたは本部に電話をします。担当者は不在が多く、やっと連絡がとれた末に担当者は言います。

「今、いろいろ忙しくてなかなか行けなくてすみません。商売は基本が大事ですからもう一度基本に立ち返ってください。店内は清潔にしてますか?」

三年後、あなたはとうとう赤字一歩手前まできています。家族の食事はほとんど店の残り物になり生活も苦しくなっています。ここまでくるとどんなに我慢強い奥さんであろうとも限界を超えます。…喧嘩になります。

暗い夫婦関係になりながらもなんとか営業していたある日、スーパーバイザーから安売りキャンペーンの提案があります。チラシを配布する経費に躊躇はしましたが、なにもしないわけにもいかずキャンペーンを実行します。売上げは上がりました。スーパーバイザーは言います。

「やっぱりアイディアが大切ですよね」

キャンペーンが終わったあと、あなたは収支を計算します。そして愕然とします。売上げが上がったのは間違いないのですが、利益は減っていたのです。売価を下げたのですから当然ですが、実際に数字で見るとショックを受けます。

数ヶ月後、結局、キャンペーン以外に売上げを上げる具体的な対策をスーパーバイザーから提案されることはなく売上げは下がり続けます。損益計算書を見ますとロイヤリティという経費がどうしても気になります。これがなかったらどんなに楽だろう…。あなたは本部に電話をします。

「廃業したいんですけど…」

あなたはこうやってラーメン店に失敗します。

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