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STIフードHD(東2/2932) 株主総会レポート 2022/3/25

 東証2部上場のSTIフードHDの株主総会に出席しました。当記事では、株主総会の様子についてご紹介したいと思います。なお、当記事は私の個人的な心証に基づき脚色した内容であり、業界にも全く知見はないため内容の正確性は保証出来ない点はご了承頂ければと思います。
 以下画像より私のツイッターアカウントへリンクを張っています。記事の内容についてのご指摘、ご質問、感想などがございましたら、お気軽にコンタクト頂けますと幸いです。頂いた内容は、私の学びにもなりますのでぜひお願いできればと思います。

1.はじめに

 私はSTIフードHDの株主総会に参加するのは初めてとなります。また同社については、IPO時に有報の調査をした時に一度だけ記事化したものがありますが、それ以降はnote記事としてはフォローしてこられませんでした。というわけでかなり鮮度が落ちた内容ではありますが、唯一記事化したものを再掲しておきます。

 STIフードHDの株主総会はデビュー戦ということで、わくわくしながら会場に向かいました。決算説明会の動画で十見さんのお姿は見ていましたが、一度会社が危機になり挫折もされた創業社長が、これだけの外部環境のネガティブ要素が台頭する中で、どんな事を語るのかということに関心をもっていました。
 株主総会は、年に一度経営者の方がどんな志向を持っているのかを感じて、その想いに共にあろうとする投資家としての自分に違和感がないか、むしろそこにエンゲージメントが感じられるかと確認するような機会だと考えています。ですので、対話も自ずとそれ投資行動に何か活かせるの?って内容が主軸になります。他の株主の方からすると、それ聞いてどうするの?って内容だと思いますが、それでも経営者の方の想いを限られた中でその断片を知る事はとても面白い時間なんですよね。

 会場は東京駅直結のオフィスタワーです。特にこれといった特徴はありません。案内係の方もプラカードを持って案内をされていました。会場で受け付け時には、検温と消毒の協力依頼がありましたかね。
 受付開始は9時と案内がありましたが、開場は9:30なので、ロビーで待つよう案内がありました。実際には10分くらい早く開場されたでしょうか。
 私はだいたい総会に出席する時には受付開始時間には現地に到着するようにしています。電車が遅れた場合のリスクヘッジもそうなのですが、早めについてなんとなく受付の様子などをみているとその会社の雰囲気みたいなものを感じる事が出来るからです。そして案外トイレ等で社長とご一緒したりして、アイスブレーク?になったりもするんですよね。今回もロビーで待っていたら、初対面となる十見さんが現れたので、会釈で双方存在を認識する的なイベントをこなしました。なにそれ?って思われるかもしれませんが、なんか創業者でオーラ―もある方との初対面で緊張するじゃないですか。あれ、十見さんって実際お見掛けすると結構シュッとしてて、若い印象なんだ、とか色々気が付くこともあるわけです。当然投資判断には何の要素にもなりませんが、そういう出会いも楽しみのひとつですからね。

 会場内はソーシャルディスタンスのとれれた配置で椅子のみが配置されています。全部でざっと60席位だったでしょうか。ノートパソコンやメモを取る都合上、机があると助かるんですけどね。あれだけソーシャルディスタンスを取った配置なら、むしろ机置けると思うんですけどね。

 まん防が解除されたとはいえ、東証2部上場会社。参加者は少ないのかなと勝手に思っていたのですが、想像より多くて全部で20-30人位出席されていたのではないでしょうか(あくまで印象値ですが…)。うち個人投資家と思われる方も10人程度はいらっしゃったように思います。へぇー結構関心あって足を運ぶ奇特な方もいるんですね、って思いました(ってお前が言うなって感じですが(笑))。

2.株主総会の流れ

 さて、まずは当株主総会の全体の流れについてご紹介しておきます。あくまで手元の時計でのざっくりしたものですので、大雑把な雰囲気を感じて頂ければと思います。

10:00 開会 (十見社長)
10:03 議決権個数の確認(事務局)
    1,429人/4,052人(35%) 45,784個/57,509個(80%)
10:04 監査報告 (小川常勤監査役)
10:07 報告事項 (ナレーション)
10:12 対処すべき課題 (十見社長)
10:37 議案上呈 (十見社長)
10:38 質疑応答 
11:07 議案決議
11:11 新任取締役挨拶
11:12 閉会

 開会前は会社の紹介動画がループで流れていました。BGMがちょっと独特で耳に残りましたし、生産現場での頑張りの様子とか、ミッションみたいな所が脳裏に焼き付き、洗脳気味になりました(笑)。

 役員一同がひな壇に登壇され、定刻となり十見社長が議長席で開会宣言をされ進行されます。パーティションのようなものはなかったのですが、マスクを外され運営されていました。監査報告の際にも小川さんはマスクを外されていたので、そういう対応なんでしょうね。だいたいマスクをつけたまま運営されるか、マスクを外しての運営の場合も、パーティション等があるためと前置きをして対応する事が多く、センシティブな対応を取る企業が多いのですが、そういう形式的なものはあまり考慮されないのかもしれないなーと感じました。

 報告事項はナレーション、対処すべき課題と議案説明は十見社長自らというバランスもいいと思います。対処すべき課題もナレーションで済ませたりされると、なんか危機感がそこまでないのかなとか、伝えようとしている熱意みたいなのがないのかなと個人的には感じてしまいますからね。そして後述しますが、対処すべき課題をお話される時の十見社長は、なんか急にスイッチが入ったように熱量を持ち語られていて、あ、オーナ創業者らしいなと感じたわけです。動画で見た時以上に迫力があるというか、情熱的なんだなと思います。

 議案の説明も形式的な読み上げではなく、まぁ要するに…って感じで結構わかりやすくかみ砕いて説明して下さいました。

 質疑応答は1人1問、時間に余裕があれば2問目を受け付けると先に案内がありました。まぁ時間は有限ですからしょうがないのですが、年に1度の機会、そして創業社長が熱量を高く語られた後の対話という意味でこういう制約をかけなくてはならないのはやはり残念だなと感じました。むしろ総会をシャンシャンで終わらせた後に、説明会とQAを切り出してある程度時間を取って頂くのが適当なんではないかとも思いました。特に扱う商材が生活にも比較的近いものなので、様々な意見やコメントを通して有益なコミュニケーションを取れる企画を期待したい所です。

3.報告事項

 こちらはナレーションでの説明です。
 まずわが国経済は・・・から始まります(笑)。そこから食品業界についての考察という流れですね。

 食品業界では内食・中食といった巣籠り行動により変化があった(つまりSTIフードの手掛ける総菜系にもプラスの作用があった)上で、コロナ禍の落ち着きの最中でのその需要は低減はせず、継続的にそういう変化が定着していく前提で、変化に対応していかねばならないという認識の説明です。
 一方で、サプライチェーンの混乱や原材料費の高騰などのリスクも高まっているという状況だと。まぁ一般的な説明が続きますね。
 そんな中、フードロス対応や各工場の効率化等を通して、これらのコスト増を吸収する形で運営が出来たことで、21/12期は成長持続ということになったということです。

 財務諸表の説明も続きますが、基本的に決算の内容ですし特筆すべき新たな要素はありませんでした。

4.対処すべき課題

 対処すべき課題についてのはずですが、全般、事業運営の状況の説明という趣きでした。社長自らの説明でお話を伺う事が出来ます。実は私はこの総会用に4問用意していたのですが、そのうち事業に関わることはここで概ね説明頂いたので、4問中2問は質問を取り下げる事にした次第です。こちら側が聞きたいポイントをきちんと拾ってもらえた説明だったのも好印象でした。

 冒頭、まずおさらいからはじめたいと、過去5年くらいの数値の振り返りです。要するに、この5年は右肩上がりで成長してきたよということですね。売上CAGRは14%、経常利益は途中白岡工場の譲渡後のコスト投下もあり一度しゃがんだ時期はあったが、それでもCAGRでみれば35%と高い成長を遂げてきたというお話です。過去をみると、売上はCAGR20%程度を目指す心つもりでいたのでやや足りない分もあるものの、利益面も堅調でしたと。自画自賛タイムですが、それも早々に終了です。
 今あるネガティブリスク要因を課題として列挙されます。これまでは良かったが、これからは大変な要素が沢山あるよと。なんか短信構文に近い気もしますね(笑)。足元の最大リスク要因であるウクライナ侵攻の件などですね。ただ、これは当社だけでないと。こんなリスクが台頭するなんて誰も考えてなかったところから顕在化してしまい、どの会社だって苦労をしているはずなんですと。ただ、コロナについては、現状でほぼ終息がみえてきて、ようやく直接的な大きな影響からは卒業できるのではないかという所感を述べられていました。行楽需要も高まる中で食品業界においても当社だけでなく、多くの企業で底打ちがみえてきているのではないかというご見解でした。今回初めてこのような趣旨の発言を企業側から聞いた気がします。

 ウクライナ危機は我々に大きな難題をつきつけてきたという事を仰っていました。ロシアは水産資源が豊富であり、現状は経済的影響が大きいと禁輸対象にはなっていないわけですが、とはいえ「ロシア産」を扱うとした時の間接的な影響がどうなってくるのか、消費者がどう受け止められるのか、まさに難題なのだろうと思われているようです。
 ただ、そんな中、実はSTIフードグループとしてはロシア産はこれまで全く買っていないそうです。全てアラスカ産だったりとするようです。では、影響がないかといえばそんなことはなくて、これまでロシア産で賄われていた需要がシフトしてくることで、アラスカ産も高騰するわけで、この部分は想定外といえる位の状況になっているということでした。
 そんなわけで、今回22/12期のガイダンスを従来の増収増益ペースを堅持せず、売上は横ばい、利益は減益という形での発表となったというわけですね。これまで一度も前年割れがない中で、この想定外の部分を最大限見込んでの開示とした意味を理解頂きたいということなのでしょうね。ここで四季報のコメントに敢えて言及されていました。四季報では会社計画は慎重と僅かながらの利益微増を独自予想として掲載しているわけですね。会社側に、おいおい流石に保守的過ぎるだろう、って期待を寄せられてて光栄なのだが、コミットメントとして想定外の事ばかりが続く中で、またこれまでガイダンスをショートさせたこともない中で、見立てとして現状ではこのように策定する以外に策がなかったということです。期中でこれまでも上方修正をしてきているわけで、最低限のお約束として示したものだという事のようです。「想定外の事ばかり起る現状に楽観視はしていない、でも頑張る」という心つもりで経営をしていくので、株主の皆さんにもこの想いを理解してもらい、そして少しの時間を頂きたいというご説明でした。とても丁寧な説明でしたね。センシティブな要素もあるため、なかなかうまく表現できませんが、市場から不信感を抱かれているガイダンスの存在をきちんと認識していると示し、その上で会社としての意志をきちんと表明してくれたものと感じました。

 成長戦略に話が移ります。もう少し中長期目線ということですね。以下のスライドを元に説明されていました。

 まずセブンイレブンさんとの取引の話ですね。詳細のシェアの状況等を語られながら要するに密連携して取り組んでいるし、新商品も出していく準備を進めているということでした。4月からもテストマーケでいい結果だったものを全国展開するようです(イカのハリッサ的な…)。そんなわけで、国内については、これまで通り新商品と定番をうまくミックスさせながら、開発力を高めながら対応していく事で今後もまだまだ堅調に推移していけると認識されているようです。
 海外については、台湾のセブンイレブンさんにおいて、都市部を中心に展開を始めている。現地では和食人気が高く、びっくりするくらいの価格で売れているということです(定量面は記載を自粛します)。そして米国はセブンイレブンinc.が今積極投資しており、わらべ日洋さんも拠点を出してきているが非常に好調である。当社としても可及的速やかに現地拠点を出していきたいと考えているそうです。ですが、当然前のめりで出ていってもだめで、品質面を含めて担保できる状況を作らないとならないといった中で、米国拠点で人間が手間暇かけるという日本式のやり方が通用するかは懐疑的にみている部分もあるようですね。需要が高い、周囲が積極投資に動いている、だから我が家も遅れず出ていくという前のめり感が全面に出てなくて、むしろ、品質担保が出来ないような拠点を出したら大損失を招くとまで危機感を持たれているのはとてもいいですね。この辺りは十見さんの過去の危機の経験によるところもあるのかもしれませんね。
 研究開発の部分では、誰にも作れないようなものを提供していく事の重要性を説かれていました。これまで成長してこられたが、今後も1.5倍、2倍へと成長していくためのコアな要素は「新技術」なのだと。賞味期限を延ばす加工法の開発等で購買量も変わるし支持も変わるわけですね。おにぎり具材としてのいくらの開発も固有技術。また商品開発という面では、出汁の技術をもつ調理学校のノウハウ提供を受けたり、タイアップした活動を通して具長に企画開発を行っているそうです。魅力的な商品を投入していくという上で、新技術の深耕が大切であるということです。
 生産キャパの話ですね。ここで関西工場の方針変換の件に言及していかれます。ポイントとして、近畿で元々計画していた工場新設の可否という側面だけでなく、米国への進出という事が念頭にあったようです。つまり、米国に人に依存せず安定供給できる仕組みを構築するにあたり、それをまずは国内でAI含めた活用しうるのかテストしていこうというわけです。従来は中古工場を買収して取得し、そこを機械化など進めて一気に立ち上げをして生産能力を出していくという事に重きを置いてきたわけですが、この従来方針でよいのかと悩みまくったそうです。これから米国に出ていく中での生産ラインの在り方、あるいはより商品付加価値を出すための加工に際して生じる排水処理の面を長期的な目線でコスト比較してきたときに、従来のやり方でいのかと。環境対応、コスト対応といった所で見た時に今後の在り方をこの関西の事例で学ぼうと覚悟を決められたそうです。今後関西で学びを得て、首都圏での需要増の対応のためにも同様の趣旨の工場を更に展開し、米国への進出の際にはこういったオペレーション面含めた整備が整った状態を早期に作った上で確度高く望んでいきたいという意向なのですね。なるほど、単に排水処理の問題の有無という表面的な部分だけではない判断プロセスがあったのですね。軽々に置かれている状況のみに対応して拙速に事を進めるのではなく、ひとつずつあるべき姿を積み上げていくという趣旨の発言もあり、剛腕さを感じつつも堅実な経営者だなと感じました。社内で喧々諤々議論をしたようですが、目先の売上伸長を追うのではなく、中長期目線で見ていこうという判断となったようです。この辺りのプロセスでどういうリーダーシップを発揮されたのか、あるいはどういう議論深化があったのか、他の取締役からもコメントを頂きたかったのですが、質問数に制限もありましたし、ここまで丁寧に説明して下ったこともあり、こちらも質問を取り下げる事としました。
 販路の件は、セブンイレブンさんの話は前述の通り重要としつつ、それ以外について、自社ECや健康食品業界向けなど複数のチャネルを開拓していっているというご説明です。自社ECでは、既存商品と差別化を図るために大容量規格を試行してみたりしているようです。実際にはこれは日本国内向けとしては大き過ぎる等の反応もあり試行錯誤しているようです。そして、現在持っていないチャネルとして卸売り各社などをターゲットに開拓、そのために投資もより積極的に投下していくということで、M&A含めた検討が進行中である様相だなと感じました。
 為替やコスト増など外部要因はとても厳しい。だからこそ保守的な予想を出しているわけだが、積極的な投資は継続し、頑張っていくという抱負で説明を締められていました。

5.議案上呈

 定款変更は総会資料の電子的扱いを可能とする対応ということで、従来の紙ベースも選択できるので不利益はないよ、という説明です。
 また取締役選任については、経営体制の強化と多様性の観点で2名増員ということで簡単に説明がありました。

6.質疑応答

 ここから質疑応答です。1人1問、時間に余裕があれば2問目を受け付けるということでした。なお、★印は私の質問となります。QAの内容についてここにご紹介しますが、内容については大いに私の主観により編集されています。意図せず誤認している等の箇所があるかもしれません。ご容赦下さいませ。

★Q1 取締役選任について
 今回の新任社外取締役候補のダグラスさんはグローバル視点と食品業界にお詳しい、更に奥様が日本人という事で、日本の文化や生活にも馴染みがあるお立場で大変期待が持てる人選だなと感じる。一方で、当社の取締役は全員が男性となっており執行役員まで拝見しても女性は1人であると認識している。当社の扱う食品、とりわけ健康面も意識される水産資源を扱う上では、子育て世代や食生活により近しい女性目線が今後の当社の意思決定に有用かとも思うが、人選にあたり、どのような認識をもたれているのか。私は昨今の女性活躍という文脈だけで女性参画を図るべきという形式論を申し上げているのではなく、実践的に当社の今後の商品開発や販売戦略等で多様的な目線という意味での実務的な部分の補完を期待している。
A
 製品開発の現場等、女性にも当然参画して頂いているし、料理家の方の知見を借りて鋭意努力をしている所だが、指摘の通り、ボードメンバーに女性がいないというのは課題だと認識している。多様性という観点で女性の意見も反映させたいということで、ぜひとも加えたいと考えている。一方で現状参画している女性メンバーにおいて、定期的な取締役会などへの参加に時間を割けるといった意味での人選には苦労をしているのも実情である。そういう実情を踏まえて検討をしてきたものの、今回の議案にそれが反映できなかったのは非常に残念に思っている。
 実は、女性専門の人材紹介会社のような所からの斡旋を受け、女性をある意味形式的に登用して事なきを得るという事もできなくはなかった。株主総会などでも形式はよいのだろうが、しかしそんな建付けの選任は趣旨に反するとの想いで、今回は課題として認識している。ぜひ時間を頂きたい。きちっとした適任の女性にも経営メンバーに参画してもらえるように対応をしていく。当社はジェンダー差別などは一切ないので、その点ご了承頂きたい。
■考察
 きちんと課題認識が共有出来てよかったです。執行役員まで見ても女性は1人ということですし、特に食に関わるとなるともう少し女性の意見も取り入れる社風であって欲しいとも思います。時間が欲しい、きちっと対応していくという心強いご説明でしたので、今後の対応を見ていきたいと思います。
 また、ここでも形式的な建付けでの選任も紹介会社を使う事で対応できたわけだが、そういうことはしなかったとご説明がありました。これまでもあまり形式的なものに捉われない雰囲気を感じていましたが、このお話を聞いて、やはりそういう会社なのだろうなとより強く感じました。経営者として一本芯のある方なんだろうということですね。

Q2 中長期的戦略におけるコア要素について
 中長期目線で見た時に、今後の展望について様々なご説明があったが、今後一番売上伸長に寄与する部分はどの部分なのかを教えて欲しい。コンビニ・スーパーへの販路拡大や海外進出、あるいはM&Aと様々だと思うが、現段階で具体化してない所で結構なので、この中で最も期待する部分はどこなのか。
A
 我々の想いはIPO時から変わっておらず、日本の和食である魚というもので世界に発信をしていきたいということ。これは夢であり使命である。数値が読めやすいものはセブン&アイさん(inc.含む)である。今後米国のマーケットに複数工場を新設していくことで、海外マーケットでの拡大は大いに期待できる領域だと考えている。
 しかしながら、それ以外のチャネルを拡充していくことも重要であり、中小を得意とする卸売り会社さんらと手を組み(M&A)、販路を拡大していくこともまた使命ではないかと考えている。それなりの規模を国内でM&Aをすることで、現状の数倍程度は伸びていけるものと考えている。
 それ以外の要素も伸びとしてはそれぞれ加わるが全体として現状の14%程度の売上伸長はちょっと弱いと認識しており、より成長率を高めていくために、食品メーカーとして安心安全に留意しつつ成長意欲を持っていたいと考えている。 
■考察
 国内については言及がありませんでしたが、質問が具体化していないもう少し先というニュアンスだったのでこういう回答になったのかなと思います。米国マーケットでの伸びはそもそも魚惣菜の和食がどこまで汎用的に受け入れられるのかという不確実性はあるものの、セブンのinc.が積極展開を図る上で、わらべやさんと同じようにそこにしっかりついていくという事での余地が大きいという見立てなのでしょう。
 また、M&Aについても再度言及がありました。話しぶりからみると、今期はそれなりに案件が出てくるのではないかなと感じますね。ただ、私はM&Aは一般論として失敗事例が多いと認識しているので、やはりたやすく評価するというより、数年来をみていかねばならないのだろうと感じるところです。

Q3 取締役の保有株式数について
 十見さんは保有株数はとても多いが、他の取締役の方は保有株数が少ない。この件についての認識を伺いたい。
A
 現在、取締役会の持ち株制度をやっており、積み立てを行っており徐々に多くなっている。加えて、ストックオプションを付与しており、今年度から行使可能となる見込みである。従って、来年にはしっかり保有している事をご確認頂けるものと思う。当然、取締役メンバーは株主の皆さんと共にあるという姿勢で取り組み、より高い評価をしてもらえる企業となるように務めていく。
■考察
 持株会とストップオプションの行使で今後増えていくということですが、それにしてもあまりにも少ないですよね(笑)。私も気になっていました。まぁ株主と共にあるという意識だそうなので、今後の保有株数の状況も見ながらまた突っ込んでくれるものと思います。

★Q 人材確保・育成について
 人材の確保・育成については、今後の事業の成長のために重要な課題だと認識しており、対処すべき課題にも挙げられている。人材面の各取り組みについてはどのような手応えや課題感をお持ちでおられるか。とりわけ採用面について、食品製造事業に従事されている方は前年度末比で11人増の285人となっているものの、一方で、これはIPO時の開示文書から20年7月末時点で289人となっており、1年半の期間を経て微減という水準である。また、現在、新卒採用オンシーズンとなっているかと思うが、当社の採用ページをみると、中途採用も含めて準備中のままとなっている。マイナビへのリンクも古く、2023年版のサイトを直接閲覧すると、「今年度から成長ステージにより積極採用」と記載があるものの、リクルート体制として本腰であるか一抹の不安も感じてしまう。当社の今後の大きな成長のために期待しているため、ぜひ人材面の手当てについてのご見解をお伺いしたい。
A
 まず質問に答える前に、採用ページが準備中となっていた点、ありがたい指摘と受け止める。まさかという思いで聞いていたが事実だと思うので、即急に確認して対応して参りたい。
 採用については上場前から毎年20人程度の採用をしてきたが、なかなか定着してこなかったというのがかつての状況であった。そんな中、ようやく足元で人事ローテションを図りCDPの整備を行うことでこれらの施策が機能するようになり、定着化が図れるようになってきた。各人材の資質にあった教育を施し、我々は継続企業としてもっと大きな会社になるといったとき、今の若い世代が10年後、20年後に中心的に活躍をしていく姿を体制としてきちんと整えないとならない。STIキャンパスという教育施策もあるため、今後も誤解を与えぬよう、人材投資を図っていきたい。
■考察
 まぁ人材は優先度劣後です、とお答えになる経営者は今どきおられないと思うので規定路線のご回答でしたね。十見さんの説明の中で、「新技術」がコアだというお話があった中で、その新技術を創るのは人材だという趣旨でお話をしたのですが、その部分もきちんと汲んで下さりました。採用ページの件は恐らく社長自身がまさかと思ってらっしゃったとのことなので、この件に留まらず、こういう部分でのチェック体制を社内できちんと敷いて頂ける機会になればいいなと思い、敢えて苦言を申し上げました。
 そして、マイナビのリンクが古かった部分は閉会後まもなく更新され、その日の夕方には準備中から記載がきちんとなされました。恐らくここに記載があるかないかでそこまで採用活動へ与える影響は大きくないのかもしれませんが、採用ページは人材面からみると企業の玄関のようなものです。今後キャリアプランや社員紹介等サイトも充実化を図って頂きたいですね。なにより、私のような弱小株主からの発言でも、きちんと会社側がよき方向に迅速に対応して下さるのを垣間見れると、自分も企業に寄り添う一員としての実感が伴いいいものだなと思います。
 確かに大きな株数をもっていないと影響力なんてないに等しいかもしれません。しかし、企業を応援して株式を保有している以上、そういう目線で企業と対話したりすることで、参画しているという実感が伴うことは、自分にとってはとても大事なことなのです。

Q 原材料の高騰の影響具合と値上げ対応について(Q2と同じ方)
 ウクライナの情勢などもあり、一層の原材料の高騰がみられるという説明があったが、この原材料の高騰の影響は現下どの程度影響を及ぼしているのか。またこの状況を踏まえて値上げの対応についてはどのように考えられているか。
A
 全体的にみて今期のガイダンス上で、原材料価格の影響がわからないという前提で売上と経常利益の影響額を加味して策定を行った(定量数値を具体的に仰っていましたが、ここでの記載は自粛します)。
 第一四半期の状況としては、火災が発生したため、この部分で特損が出る見込みである一方、保険による特益も計上予定であり、ここは現在精査中ということ。
 値上げ対応については、おにぎりなど値上げの調整を行っている所であるが、簡単に値上げしてよいものなのか、消費者の可処分所得が上がっていない中での対応という所で悩ましく思っている。とはいえ、我々も企業であるわけなので、消費者の方に理解してもらえるような形で付加価値を増しての対応をしていく予定である。なお、例えばサーモンでは在庫がまだ潤沢にある状況なので、足元の収益にはさほど影響はないと思われるが、今仕入れている原材料は来期以降に影響を受ける可能性があるため、やはり付加価値を段階的に増して値上げで対応していかざるえないと考えている。
■考察
 冒頭の原材料の高騰の影響は策定時の影響額を具体的にご説明頂いたのですが、ではそれが足元どうかという所には具体的な言及はありませんでした。後半でも言及がありますが、仕入価格の影響と収益への影響という部分にタイムラグがあるようなので、影響については、現時点ではこの策定した最大リスクの範疇にあるというニュアンスで捉えておけばいいのだろうと思います。
 値上げの状況については、小売各社の理解も得られている様相でしたが、消費者マインドにとても敏感である様子でしたので、慎重に付加価値を見直す等しながら対応していくことになるようですね。例えばたらこについても、少し炙るという工程を加える事で美味しさを更に足すとかそういう地道な所で価格反映をさせていくということのようですね。明日からたらこや鮭のおにぎりは食べないというわけにもいかないので、という趣旨の説明もありましたが、だからこそ、価格にも敏感であるし、そういう消費者側の立場で考えないとならないといったところが、このビジネスの難しさでもあるし、工夫のしようでもあるのかなと思いました。

Q 食糧問題の対応について(Q3と同じ方)
 世界的な食糧不足が今後益々深刻化してくるだろうと考えている。当社の扱う原材料の輸入依存度はどの程度なのか。また食糧問題の更なる深刻化のため、昆虫食などの話題もあるが、当社として水産資源に捉われない対応というのは考えられないのか。
A
 我々、石巻に工場を保有しているが、ここに建設したのは、三陸沖の豊かな漁場で取れるサバなどの水産資源を活かしやすいからである。この地で獲れる金華さばは国内資源として大変貴重である。水揚げしたものをすぐに活かせるということで対応してきた。一方、鮭は北海道等で獲れる秋鮭はあるが、やはりアラスカ産やチリ産の輸入に頼っているのが実情である。全体でみると魚の輸入比率は50%程度である。しかしアメリカやチリ等の主要輸入元には現地法人を設立し、長い年月をかけて安定的な調達(養殖)が行えるような仕組みは確立してきている。
 昆虫食などのノウハウはないため、なかなか対応は難しい。ただ、これまであまり流通してなかった小魚等を使った商品化検討などは余地があると思う。また同時にフードロスをなくすことが大事。捨てなくてはいけないものを極力減らすために、端材を別の商品化に対応していく中で資源の有効活用ということでの対応になってくると思う。
 結局、日本は小麦にしても水産資源にしても、自給率が低い国である。が故に、原材料価格の影響、為替変動の影響、戦争などの影響はどうしても受けてしまうのが致し方ない。そんな中でも企業として安定的な経営をしていく上で、どういう準備を行い対策を通して継続的に事業をなしえていくか、その中でも事業を堅調に成長させていくかという目線で経営をしていかないといけないと考えている。
■考察
 輸入が半分くらいということで、私も知りませんでした。もっと輸入比率は高いと思っていました。少なくても蛸、たらこ、鮭などはほぼ輸入でしょうからね。で、まぁ輸入が多い、だから外部要因の影響を受けやすい、実際ここまでいろいろな事象が起こるとそれを完全に回避というのは難しいという中での警戒感から株価も売られているものと思いますが、十見さんのみている目線は経営者としてとても心強いなと思いました。
 わからないことだらけ、そしておぞましい状況になるかもしれない事ばkりという中で、保守的な開示をしてミニマムラインを示した上で、そこをなんとか乗り越えていく工夫が経営に求められているという姿勢ですからね。わからないだらけの中で、株主、取引先、従業員と各ステークホルダーの付託を受けている中では相応のプレッシャーというか覚悟が必要なんだろうと思いますが、全体を通してこういう部分がとても垣間見れた気がします。
 昆虫食は流石に無理でしょうね(笑)。ですが、水産資源の部分でよく指摘されていることですが、現在の流通に中々乗れない魚も多数あると聞きます。ですので、こういう部分にきちんと付加価値をつけて商品化していくということもまた大事な取り組みな気がします。頑張って頂きたいですね。

7.さいごに

 質疑のあとは、拍手でもって議案を可決し、新任取締役の方からの挨拶もあり閉会となりました。新任取締役の方は単に名前だけの紹介だったのですが、1分程度経歴や抱負を述べて頂いた方がよりいいかなと思いました。せっかくの機会ですからね。

 株主総会全般をみると、十見さんの覚悟と感謝みたいな所が印象に残っています。説明の度に、「おかげさま」という言葉が発せられていました。そしてわからないことばかりだが、でも大丈夫ちゃんと頑張ると決意みたいなものがみえました。何より、話されている時に強いコミットしている様子が感じ取られました。いささか外食やアパレルのようなちょっとそっち系の方のようにも感じる様相なのですが、でもこういう創業社長はいいなと思いました。私の保有している投資先でいうと、丸和運輸機関の和佐見さんのような方向性ですね。大きな苦労をしてきてからのというプロセスも似ています。そういう経験が覚悟になっているのでしょうし、株主の質問にも丁寧に対応されていました。

 一方で、他の取締役の方は一切発言がありませんでした。十見さんの強力なリーダーシップがあっての会社なのだろうというのは良い部分、悪い部分あると思うのですが、もう少し所掌の取締役の方にもお話頂けるような質問力を養わないといけないなとこちら側も反省です。

 そういう意味では、1人1問という制限はやはり撤廃してもらいたいですね。株主総会としては、シャンシャンで終わらせて、閉会後に事業説明会とかで独立させて、よりフリーに社長にも語ってもらい、株主側も様々な質問、提言をぶつけられる機会として企画してもらいたいですね。今回は初参加ということもあり、まだ信頼関係も0からのスタートでしたから、来年の総会等ではこういう対話の充実なども訴えていければいいなと思っています。

 また自社製品がある会社です。総会の時には、商品の陳列とかもあっていいと思います。セブンイレブンさん向けの商材は普段目にしますが、自社ECの商品などはなかなか手に取る事もできません。案外新しい発見があるかもしれませんし、そこに社員の方がおられれば会話の中で、様々な意見交換も出来ると思います。参加者が少ないとはいえ、現地まで足を運んでくる株主ということでそれなりに熱量もある方達だと思うので、こういう機会も大切にして頂けると参加する側としてもよりエンゲージメントが高められるかなと思いました。

 それから、株価に関して半年で半額になっていることもあり、苦言の発言があるかなと思いましたが、皆さん大人なのか質問はありませんでしたね(笑)。私も敢えて言及しませんでしたが、十見さんは説明の中で株主の方にも理解を得ながらと発言されていましたが、今のマーケットは決して理解は得られていないと思うわけです。ですが、だからダメというわけではなく、こういう懸念を払しょくするような中長期的な成果に向けて頑張って頂く糧にして頂きたいなと思います。

 総会終了翌日に早速優待を頂きました。熱い十見さんのメッセージもよかったですね。

 また有報も開示されていますので、改めて精読してみたいと思います。

 今年はより難しい経営局面が続くと思いますが、日本の食を扱うメーカーとしてぜひ頑張って頂きたいですね。

 頑張れ、STIフードHD!

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