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靴の値段の意味が分かる!知っておきたい靴作りの流れ(2)

前回に引き続き靴作りの流れを解説していきます。
(拙い手書き絵を多分に含んでいますがお許しください)

5 アッパー製作

(1)裁断

アッパーとは靴におけるソールよりも上の足を覆う革でできた部分です。アッパーは型紙に沿って切った革を縫製して作られます。

作った型紙を用いて革の上に銀ペンという後で消せるペンで線を引きます。

その線に沿って革をナイフや革包丁と呼ばれる道具を用いて裁断していきます。大量生産靴の場合は包丁などを用いずに型紙をベースに作った裁断型で一気に裁断します。

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銀ペンで型紙の輪郭を革に写している様子

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革包丁で革を裁断している様子

また、靴には表から見える表革と足と直接接するが履いている時は見えない裏革があり、それぞれ別の素材で作られます。表側は比較的厚みのある丈夫な牛革を、裏側には滑らかな肌触りで薄い豚革などがよく用いられます。

表革と裏革それぞれに型紙を作り裁断します。

(2)縫製

次に裁断したアッパー用のパーツを縫い合わせていきます。パーツとパーツが重なる部分というのは厚さが2倍になってしまうため、それを避けるために漉きという加工を加え薄く削ってから縫い合わせます。漉きは革包丁もしくは漉き機という機械を用いて行います。

また、縫う前には縫い合わせる箇所に靴作り用のノリを塗り仮止めを行います。

縫製の綺麗さが見た目の印象を大きく左右するため、縫製はとても大切な工程です。

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革を漉いている様子。斜めにカットした断面が重なり合うことで元の厚みになる

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革を縫製している様子

表革と裏革がそれぞれ縫い終わったら、それらを履き口周りで縫い合わせていきます。裏革が少し余るように型紙は作られているので余った部分を後から専用の工具でトリミングしていきます。

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出来上がった表と裏のアッパー

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縫い合わさった表と裏のアッパー。はみ出た部分はトリミングして切り取ります。

これでアッパーが完成し大分靴の姿に近づいてきます。

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6 中底の作成

次に中底と呼ばれるちょうど中敷の下に当たる部分のパーツを作成していきます。量産靴では中底は人工素材がよく用いられていますが、手製靴では中底には厚めの革を用いるのが一般的です。

革には吸湿性があるため、手製靴のようにパーツのほとんどが革でできている靴は常に靴の内部の湿度環境を最適に保ち蒸れにくいという特徴があります。これにより履き心地の向上と靴の悪臭を防ぐ効果があります。

中底は木型の底面より少し大きいくらいにカットします。その後水に濡らして柔らかくしてから木型の底面に沿わせて釘で固定します。

こうすることにより平面的だった革が乾く頃には木型の形状に沿った立体的な形に変わります。

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市販されているあらかじめ大きめにカットされた中底

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木型に固定された中底 中底が側面まで木型に密着するように釘は外に倒している

時間をおいて中底が固まったら、中心部周辺の釘以外を外し、木型からはみ出た中底を包丁で切り落とします。

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はみ出た中底を切っている様子

8 つりこみ

次に出来上がったアッパーを中底が固定された木型に型付けしていきます。この工程をつり込みといいます。

つりこみではワニと呼ばれる工具と釘を用いてアッパーを引っ張りながらラストに固定して行っていきます。

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ワニ

アッパーを木型に軽く被せ、適切な位置を確認します。この時にもともと型紙を作った際に想定していた位置とずれているといけません。

そして踵だけまず釘を打ち込み木型に固定していきます。

これにより引っ張った時に踵に打った釘によりアッパーが固定されるためつりこみが可能になります。

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手製靴はこのように釘を必ず打ち込むため、踵に釘の穴の跡が残っています。あなたの靴の踵部分に穴が空いていたらそれは手作りの証です。

その後、裏革だけ先につりこみを行います。なぜかというとこの後、裏革と表革の間に形崩れを防ぐ芯材を挿入しなければならない為です。

ワニでアッパーを引っ張りながら釘で固定していきます。この時に引っ張りが弱いとアッパーが木型に密着せず綺麗なシェイプが出ません。逆に強すぎるとアッパーが予定していたラインからズレてしまって形に狂いが生じます。なので適切な強さで引っ張る必要があり、経験が必要な工程です。

木型が曲線的であるほどつりこみの難易度も上がり、手製靴のような美しい曲線を持つ靴には高いつり込みの技術が求められます。

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裏革をつりこんでいる様子

カーブのきつい先端や踵部分は釣り込むとシワができるため、餃子の皮を作るように小さく折り畳みながら釘で固定します。

こうして裏革が固定できましたら、次に芯材を爪先と踵に挿入します。芯材は革でできたものや合成素材などたくさん種類があります。芯材も水で濡らしたりシンナーに溶かしたりして柔らかくして取り付けていきます。

芯材にも接着剤を塗り、裏革の上に固定します。

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爪先に入れる芯材

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踵に入れる芯材

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裏革の上に付けられた芯材


芯材をつけましたらすかさず表革をつりこみます。

つりこんだら芯材の部分が若干ぼこぼこしているので上からハンマーで叩き形を整えます。

よく靴の踵は踏み潰さない方がいいと聞くと思いますが、これは踵に挿入した芯材が潰れてしまって革を突き破ってしまったり、踵をしっかりとホールドする機能を失ってしまうためです。

靴を長持ちさせるためには、必ず踵は踏まないようにしましょう。


つりこみが終わったら数日間革が変形して形状を記憶するのを待ちます。

これでつりこみの工程は終了です。



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つりこみ終了した靴

次回に続く



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