見出し画像

深夜のSA

深夜の高速道路には、独特の静寂と孤独が漂っている。その静寂は、昼間の喧騒や日々の喧騒とは全く異なる。遠くに見える街の明かりも、右車線から走り去る車のライトも、すべてがゆっくりと流れるような感覚を与えてくれる。何を急いでいるというのか。それなのに。

バイクに跨り、クラッチを握りアクセルをひねると、エンジンの低い振動が身体に伝わり、心地よいリズムを奏で始める。フルフェイスのヘルメットのシールドを少し上げるだけで風が、風が、頭の中をクリアにしてくれる。その瞬間、時間が止まったかのように感じる。

リアシートには誰もいない。この高速道路を走るのは自分一人だけだという実感が、深い感傷を呼び起こす。家族や友人との思い出が頭をよぎり、ふと一人になった寂しさが胸に広がる。

遠くのサービスエリアのアルゴンガスのネオンが、次第に近づいてくる。疲れた体を休めるために立ち寄るその場所には、同じように深夜の旅を続ける見知らぬ人々がいる。彼らもまた、それぞれの理由でこの道を選んだのだろうと思うと、喫煙所でアメリカンスピリッツを吸いながら奇妙な連帯感が芽生える。

再びバイクに戻り、エンジンをかける。文明の利器、ワイヤレスイヤホンの片耳で音楽を流しながら、再び夜の闇の中へと旅立つ。曲が流れる中で、昔の恋人や、遠い日の夢が思い出される。その思い出は甘くも苦くもあり、心の中で静かに反響する。

深夜の高速道路は、一人の時間を深く感じさせてくれる場所だ。日常の喧騒から離れ、自分自身と向き合うひととき。その時間は、心の中の様々な感情を引き出し、忘れていた大切なものを思い出させてくれる。

そして、再び朝が訪れる頃には、少しだけ軽くなった心で、新しい一日を迎えることができるだろう。深夜の高速道路が教えてくれるのは、孤独の中にも温かさがあり、静寂の中にも豊かな世界が広がっているということだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?