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遺言のウソから始まる家庭崩壊

"私に暴力を振るい、精神的に傷つけた。私は天国に行っても忘れることはない"

祖父が残した遺言状の数行の嘘が原因で、祖母は家から出て行き、母は姉妹と絶縁となった。
両親は弁護士を立てて祖母と叔母達への話し合いを試みたが断念となり、土地の権利は両親にないので、私達は今後いつまでこの家に住めるのかもわからない。

正直書くべきか悩みましたが、書く方が自分の中で整理がつきそうだと思いました。何よりどこかへ吐き出したい。そんな気持ちで不慣れながら書き進めていきます。

遺言状を開封した日

同居していた母方の祖父が亡くなって四十九日が過ぎた夕方、両親が険しい顔をして家へ帰ってきた。

「こんな内容、認めることはできない。ひどすぎる」
目を赤くした母が渡して来たのは1つの冊子。
表紙には"公正証書"と印字されていた。

冊子を開いてみると「遺言公正証書」の文字。すぐに財産の分配についての記載が続く。そして最後のページに"父が祖父へ暴力を振るった"との記載があった。また祖父と婿養子である父が養子縁組をしていることも"祖父が知らないところで勝手に養子縁組の手続きをされた"とも書かれていた。

前提として言うが、いずれも事実ではない。

なぜ遺言状にわざわざ嘘を記載したのか。これには目的があった。だが私達はこの日の時点ではそれに気づくことができず、悪意を持った文章だとしか受け止められなかった。

遺言状に事実ではない記載があっても、破棄しなければ公正証書として残ってしまう。
相続対象人1人でも「この内容で認める」と主張すると遺言状の破棄はできず、遺言状通りに進んでしまう。
そして、この遺言状は破棄することはできなかった。

この日、祖母と父と母は遺言状の開封を行う為出かけていた。その場には他にも叔母と公正証書の開封を担当される方がいた。
開封した際、「このような遺言状を認めることはできない」と財産の分配に対してではなく、最後に記載された事実無根の内容へ怒る父を目の当たりにしながら、叔母は「遺言状を認める。このまま進めてほしい」と主張し押印した。


オカルトなど信じていないが、この日をきっかけに私の知っていた祖母や叔母達が人間を辞めて別の生き物になったのではないかと思えた。いや、そう思いたいのかもしれない。それほどまでにお金やプライドによって人が変わる事実を初めて知った。

遺言状を読んだ時、私は祖父と父の喧嘩を思い出した。祖父が亡くなる10年前、一緒に住んでいた中で起こった、些細な出来事がきっかけの大きな"口喧嘩"だった。思えば、その口喧嘩が始まりだった。




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